第二十一話「光を束ねるヒーロー」
第二十一話 「光を束ねるヒーロー」
(主人公 ブラウン3)
俺にとって2回目の『あの日』が来た。正直どうしていいのか全く分からなかった。だから思い出した。あの時の皆の言葉を。
銀河「みんな…これでいいのか!?俺たちは正義のために戦ってきた!そうだろ!?俺たちの正義ってなんだよ!こいつの考えに賛同するのがお前らの正義なのかよ!!」
そう、俺が言った時――
*
ブラウン「オレの正義は悪を許さないことだ。だが、オレには人類を救おうとしたそいつを悪だとは思えない。それだけだ。」
虎羽「絶対の力を持ったからにはそれ相応の考え方をしなければならない。ならボクはそれに従うだけだ。必要な犠牲は爆発に巻き込まれた者だけだろう?ならボクは救助活動に行かせてもらう。」
紫雲「…俺は多くの人を救うためにヒーローになった。だから…仕方がなかったと…思う…!」
藍「わたくしも、未来のためなら仕方がないと思いますわ。生き残るために、犠牲を払わなければならないのは世の理です。」
と言って部屋を出た。
ブラウン、虎羽、紫雲、藍さんの4人はバディの考えに賛成している。だが――
朱祢「…私にはこのやり方を認められない…。誰かを見殺しにしていい理由なんてないと信じたいから…」
雪「わ、わたしもそう思います。とても難しいですけど…でも、誰かが死んじゃっていいわけありません!」
金一「僕も同じだよ。…どうにかできるわけじゃないけど。」
朱祢、雪、金一さんは俺と同じ考えだった。そして――
みどり「あたしはどっちでもいいかな~。世界がどうなったところであたしが変わるわけじゃないし。仕方ないって思うしかないし。」
黄慈「ぼくにはどちらがいいのかわからないや…。もし…あの人がいたら……。いや。」
桃華「……ことみさま…。ワタシはどうするべきでしょうか…?ワタシにはあの考えが正しいということが分かります。しかし…それを実行するべきなのでしょうか…。」
みどりちゃん、黄慈さん、桃華はどちらの考えでもないような気がした。
(俺と同じ考えは俺を含めて4人、バディと同じ考えも4人。残りの3人をなんとか説得できれば…いや、それでどうなる!? 全員の意見が一つにならなきゃダメだ!バラバラになっちまったらダメなんだ!)
俺は全員を説得する方法を選んだ。一週間前に俺は全てを話した。これから起こることを。そして、皆で協力してそれを防ごうと。
*
ことみ「全員に話したいことがあるってこのことだったのね…。本当に…本当なの…?」
バディ「こいつの言っていることは事実だ。奴らは君たちヒーローの力を脅威だと思っている。そのため調査を打ち切り、撤退と同時に地球に損失を与えるためにあれを爆破させるのだ。」
朱祢「……辻褄は…合っているように思えるわね…」
藍「あれが爆発するというのは信じるとして…大勢の人を犠牲にすることが未来の繁栄につながるという証拠はありますの?」
バディ「証拠ならある」
ピピピピ……
桃華「がっ…!!あ……う……」
藍「ちょっとあなた!桃華に何をしましたの!?」
バディ「爆発を起こさなかった場合の人類史の予測結果を与えただけだ。どうだ?それだけの可能性を見ても我々が間違っていると思うか?」
桃華「…皆様。この方のおっしゃっていることは正しいです。確かに、より多くの人類を救うためには多くの犠牲が必要です。」
銀河「そんなのただの計算だ!まだ事実じゃねぇ!!それに…気になっていたんだ。それはバディのいた世界でのシミュレーションだろ?俺たちの世界には俺たちがいる!バディの世界にはなかった力がここにはある!そうだろ!みんな!!」
一同「……………………」
ブラウン「どうするつもりなんだ?多くの人を救い、未来も変えるためにどうするつもりなんだ?」
銀河「とりあえずあれはぶっ壊す!」
虎羽「一度触ってみたことがありますが、あれは簡単には壊せないと思いますよ。」
紫雲「ああ。素材も未知の物で出来ていた。強度も相当なもので、おそらく核ミサイルを使っても傷がつくかどうかだ…。」
銀河「でも、俺たちならやれるだろ?」
朱祢「…できたとしても周りに被害を出さないのは無理だと思う……」
銀河「全員で力を合わせれば出来るだろ!?被害も最小限にしながらあれをぶっ壊すことが!」
藍「誰も死なずにあれを破壊したら未来はどうなるのかしら…?」
銀河「それは…」
バディ「危機感が失われ、科学技術の発展が遅れる。地球外からの出来事に対しても鈍くなり、人類としての発展が止まることにつながる。絶滅することはおそらくないが、生き残るのはごく少数の人間だけだ。それでは我々の世界と同じだ。」
藍「それなら…やっぱり、わたくしはどうしてもあなたの意見には賛同できませんわ。」
銀河「あっ、おい!待ってくれよ!」
桃華「ワタシも、バディさまの考えが正しいと思います。人類のために、ワタシは未来を選びます!」
紫雲「…俺も…!俺は…世界を護りたい…たとえ…一時の間、世界が闇に包まれたとしても…俺は、人間の乗り越える力を信じる!よりよい世界を護る!」
虎羽「僕もバディさんが正しいと思います。」
銀河「桃華まで……なん…で…」
藍、桃華、紫雲、虎羽の4人は部屋を出た。
銀河「ブラウン!お前はどうなんだ!?」
ブラウン「……オレにはどちらが正しいかはわからない……世界を護ろうとする虎羽たちも、多くの人々を救おうとする銀河さんたちも、悪だとは思えない。…オレはこの件には関わらないことにする……オレはいつも通り、自分のすべきことをする…」
部屋を出るブラウン。
銀河「みどりちゃん!黄慈さん!協力してください!二人ならわかってくれるはずだ!頼む!俺は…俺はもう…あんな世界見たくないんだ…光を失い…絶望に満ちた世界を変えたいんだ…!!」
みどり「……あたしは世界を変えるなんてこと、したくないな。」
銀河「えっ!?」
みどり「なんか…ズルじゃん!ほんとならあれは爆発してたんでしょ?それを勝手に変えるなんてズルみたいでやだな!どんなに辛いことでも、受け入れていくのが生きていくことだと思う。だから…あたしは何もしない!勝手にやって!」
部屋を出るみどり。
黄慈「ぼくは……」
銀河「黄慈さん!お願いします!協力してください!黄慈さんの力が必要なんです!!」
黄慈「………………ごめん。少し考えさせてくれないか…?」
部屋を出る黄慈。
部屋に残っているのはことみを除いて、銀河、朱祢、金一、雪の4人だ。
(結局変わらないのかよ…!いや!まだだ!)
俺達は話し合い、あの飛行物体を破壊することにした。だが、それぞれの前に立ちふさがる者がいた…
*
朱祢「…どうしてあなたがここにいるのかしら?」
虎羽「…それがボクの正義だからだ!」
朱祢は被害を抑えて破壊に成功するが、虎羽の手により、爆発と同じ結果になった。
*
雪「どうして……」
紫雲「ごめん雪ちゃん…でも…それでも俺は未来を護る!」
雪の能力は爆破。雪は被害を最小限に抑えながら破壊しなくてはいけないのに対し、紫雲は雪の爆破を誘発させてもいいし、周囲にお構いなしで攻撃ができる。元々護る戦いが苦手だったこともあり、雪に勝ち目はなかった。
*
金一「…できれば戦いたくないんだけど…」
藍「なら、去りなさい。わたくしはそれでも構いませんわよ。」
仲間思いの金一は藍への攻撃をためらっているのに対し、藍は覚悟が決まっていた。藍は成功、正義、繁栄のために犠牲が必要だということは心得ていた。そして、たとえ親友や仲間であっても犠牲として切り捨てる覚悟も持っていた。
熱量を奪って動きを止めようとする金一。空気圧を変化させ熱量を生み出すことで金一の能力に対抗しつつ、圧力によって金一の動きを封じていた。長時間、互いに一歩も動かない戦いが続き、藍が飛行物体の死守に成功し、爆破は完遂されてしまった…。思いの差が勝負を分けた。
*
銀河「俺は本気だぞ?」
桃華「申し訳ありません。ワタシにとってシミュレーションとは現実と同じなのです…どれだけ思考を繰り返してもワタシには…0を1にすることはできないのです…」
俺は槍を出した。
銀河「俺の速さの前では勝負にすらならないぞ…」
桃華「理解しております。しかし、ワタシに退く気はありません。あの飛行物体の破壊をお望みなら、ワタシを倒してからにしてください。」
銀河「……俺は君を倒したいわけじゃ…」
桃華「もし、ワタシを倒さないのであれば、ワタシは爆発と同様の被害を出すまで破壊行為を続けます。銀河さま…迷いは捨ててください。ワタシは裏切りものです。皆さまと道をたがえたと理解していながら、あの計算結果に逆らえずにいます……どうか…ご決断を…」
銀河「……………わかった。」
俺は槍に光を灯した。白の輝きを放つ槍から繰り出される最高速度の攻撃。
銀河「ライトニングストライク!!!」
カッッッッツ!!!!!
その一撃は目を閉じた桃華の遥か後方を貫いた。
(歪んだ…!!)
銀河「……!!!黄慈さん!?」
黄慈「銀河くん…ぼくは、やっぱりどちらが正しいのかなんてわからない。でも、仲間同士で戦うのが良いことだとは思えない…。」
銀河「黄慈さん……」
俺は膝から崩れ落ちた。唯一、俺の攻撃を防げるのが黄慈さんの能力だった。黄慈さんと敵対してしまえばもう俺に成す術はない。それに、もうこうなってしまっては俺の望んだ世界ではない…。
世界は絶望に包まれた。あの時と同じように…。
*
どうしてうまくいかないんだ…
どうして多くの人間を見殺しにできる…!!
ブラウン(……オレにはどちらが正しいかはわからない……世界を護ろうとする虎羽たちも、多くの人々を救おうとする銀河さんたちも、悪だとは思えない。)
くっ…!!確かにな……
藍さんも虎羽も桃華も紫雲も多くの人を殺した。でも…俺は……俺は、あいつらを嫌いになれない…!
俺はバラレンジャーが好きだ…
バラレンジャーの皆が好きだ!!
皆違う正義を持っている。考え方だって全然違う。
でも、俺は皆が好きだ。
皆違う方向を見ている。
それは当然なのか…?
沢山の人間がいる中で、違うものを目指し、見ているものが違うなんてことは当たり前のことなのかもしれない。
でも……でも…!!
俺たちはヒーローだ。
俺たちはバラレンジャーだ。
俺たちは仲間だ。
俺の勝手な願いかもしれないが俺は…
俺は皆で同じ光を見ていたい!
皆となら…同じ方を向けると思うんだ。
個性も、武器も、能力も、戦い方も、考え方も、正義の色も…何もかもがバラバラだけど…
必ず一つになれる…そう信じたい!
銀河「っは!こんなのただの俺の勝手な願いか…でも俺は…そんな世界を望んでいる。変えてやる。俺が一つに、してみせる!!はぁあああああああああああああ!!!!!フォトンアクセル!!オーバードライブ!!!!!」
*
銀河「はっ……………また……ここからだな……」
事務所に貼られた求人ポスターを眺めている。
ことみ「あの…もしかして…」
俺はことみに頭を下げる。
銀河「ここで働かせてください!」
ことみ「わ!ヒーロー志望者ですかぁ!?」
銀河「はい!俺は…『ヒーロー』になりたいんです!」
ことみ「大歓迎ですよ!あっ、よろしければ中でお話を伺ってもいいですか?」
俺は絶対諦めない!俺たちなら、必ず一つになれると信じているから!!
俺が…世界を変えてやる…世界変える光に…俺はなる!!




