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第二十話「どの異世界でも俺が最強な件」(ピンク2)

第二十話「どの異世界でも俺が最強な件」

(主人公 ピンク2)


紫雲「…っ…!……ここは……」


眩い光。

石造りの高い天井。

色彩豊かなステンドグラス。

足元には、淡く光を残す巨大な魔法陣


「おお!本当に来てくださった!」

「勇者様だ…!」


周囲がざわつく。


??「異国からの勇者殿、どうか我々の願いを聞いていただけないだろうか?」


兵士の後ろから、豪奢な衣を纏った男が進み出る。


国王「私はこの国の国王だ。一月ほど前、魔王の封印が解かれこの国は魔物に襲われた。この国で選りすぐりの兵士たちを向かわせたが、ほとんどがやられてしまった。そこで、古くから伝わる魔術儀式により、世界に平穏をもたらすと伝説の勇者殿を召喚させていただいたという状況だ。」

紫雲「………………」

国王「そこで、頼みがある。我々の代わりにどうか魔王を討ってはくれぬか」


女王も静かに頭を下げる。

紫雲は、少しの間考える。


紫雲「……魔王を倒す、か……………魔王軍の規模はどれくらいなんだ?」

国王「少なく見積もっても数千…。幹部級も複数。すでに三つの村が壊滅してしまった。」

紫雲「村が襲われているのか?」

国王「そうだ。しかし、魔物は一体倒すのに最低でも五人の兵士がいる。魔物に群れをなされてしまってはどうしようもないのだ…」

紫雲「…分かった。いいだろう、魔王の居場所を教えろ。すぐに殺しに行ってやる!!」


玉座の間が、静まり返る。

その言葉に、迷いはなかった。




紫雲「そこからは三人のメンバーを案内役として紹介され、魔王討伐へ向かいました。」

ことみ「えっ、そんなにスムーズに進むの?」

紫雲「……まぁ、本当に強いのかと疑われて、それを証明したり。

案内役のツク、サヤ、シーナと街を見て回ったりと、色々ありましたが……」

ことみ「そこが“異世界”で一番盛り上がるところなんじゃないの?圧倒的な力を見せつけて、気持ちよくなるのが醍醐味でしょ?」

紫雲「そうかもしれませんね。ですが……僕にとっては、あまり意味のある出来事ではなかったので。」

ことみ「意味のある……?」

紫雲「えぇ。僕の成長には、繋がりませんでしたから。」

ことみ「……そっか。」

紫雲「……そして、僕たち勇者一行は順調に魔物を倒し――ついに、魔王城の前まで辿り着きました。」




ツク「この先が魔王城です。……ここから生きて帰った者は、ひとりもおりません。」

サヤ「どうする? さすがのあんたでも、無策で突っ込むのは無謀だろ?」

シーナ「勇者殿……」

紫雲「……魔王は、それほど強いのか?」

ツク「詳細は分かりません。戻った者がいないのです。ですが……これまでの魔物とは、比べ物にならないかと。」


わずかな沈黙が落ちる。


紫雲「……分かった。お前たちは、ここで待て。」

サヤ「はぁ!? なんでだよ! 俺たち、ここまで一緒に戦ってきた仲間だろ!」

シーナ「そうです! どうか我々を信じてください!」


紫雲は三人を見た。


紫雲「……俺は前の『世界』で一度、大切な人を失った…」

「「!!」」

紫雲「……もう二度と……あんな悲劇は繰り返したくない……」

ツク「勇者様……」

紫雲「…お前たちは安全な所に隠れていてくれ。魔王は俺が必ず倒してみせる。」

サヤ「……ちっ…分かったよ……ま、お前ならどんな敵が相手でも大丈夫だろうしな!」

シーナ「…ご武運を、勇者殿」

紫雲「あぁ……行ってくる…!」


バチィッ!!

雷光が弾け、紫雲の姿が掻き消える。

次の瞬間、彼はすでに魔王城の上空にいた。

空が裂ける。

雲が吹き飛び、奔流のような雷が城へと降り注ぐ。

大地が震え、世界が白く染まる。


サヤ「すげぇ…あいつ…こんな力を隠してやがったのか…!?」

ツク「まるで神の裁きのよう……」

紫雲「終わりだ…!」


紫雲の身体は巨大な雷そのものと化し、魔王城を貫いた。

轟音。

崩壊。

眩い閃光がゆっくりと収まる。

しかし、そこに生きていたのは紫雲だけではなかった。


紫雲「何っ!?」

魔物「凄まじい力を感じ、幾重にもバリアを張ったが…まさかこれほどの威力とは…」

紫雲「…流石の防御力だな。魔王の名は伊達じゃないな。」

魔物「ふっ…。魔王様がこの程度なものか…。我も魔王軍では随一の防御力を誇っていたのだがな。しかし、貴様でも魔王様には勝てん…!」

紫雲「魔王はどこにいる!!」

魔物「今頃、貴様らの国を蹂躙している頃だろう…」

紫雲「何…!?」

魔物「はっそんなことにも気づかずにここまで来たとは…憐れだな…。やはり魔…」


パァンッ!!

紫雲は微かに残ったバリアごと魔物を踏み砕いた。


紫雲「……くそっ!」


雷光が弾け、一瞬で三人の元へ戻る。



紫雲「王国が大変だ!すぐに戻らないと!!」

ツク「ど、どういうことです!?」

紫雲「魔王は城に居なかった!俺たちが国を離れるのを待っていたんだ!」

シーナ「なんですと!?」

紫雲「俺は先に戻る!皆も後で来てくれ!」

サヤ「あぁ、分かったぜ!」


バチィッ!!

高速で移動し、森を抜ける紫雲


紫雲(嫌な予感がする……たのむ…!外れててくれ…!誰も死なないでくれ…!)


バッ!

視界が開ける。


紫雲「そん…な…」


街は――地獄だった。


空を埋め尽くす魔物。

崩れた家屋。

血に染まった石畳。

兵士と市民の亡骸が無造作に転がっている。


バチィッ!


紫雲「この数……一瞬では……捌けない……どうすれば……!」


視線を巡らせる。

どこから手を付ければいい。

その時……


兵士「あぁ!勇者様だ!!助けてくれぇっ!!」


怯えきった兵士数名が、武器を捨てて駆け寄ってくる。


紫雲「!! お前たち…何してんだ!?」

兵士「お願いです!助けてください!!」

紫雲「…街の人々を護るのがお前たちの仕事だろ!!」


遠くで、悲鳴が上がる。

振り向いた先で、市民が魔物に引き裂かれた。


紫雲「くっ…!!お前ら!早く戦えよ!!」

兵士「む、無茶言わないでくださいよぉ…」

兵士「そうですよ!僕たちまともに訓練だってしてないんですから…!」

紫雲「なんだと……」


この国は、平和に甘えていたのか。

魔物が現れるまで、敵を知らなかったのか。

その時。


??“来たか…異国の勇者よ…”

紫雲「!!」


脳内に声が響く。

視線を感じ、顔を上げると――砕けた王城の奥から、異様な気配が溢れ出していた。


紫雲「お前が魔王か…!」


紫雲は、城の奥に鎮座する魔王を睨みつけた。

バチィッ!

雷光が弾け次の瞬間、城内へと瞬間移動する。


魔王「……動くな。」


低い声。


魔王の片手には――女王の首が握られていた。


魔王「少しでも動けば、この首は折れるぞ?」

王女「勇者様! わたくしに構わず、魔王を――!」

紫雲「くっ……!」


身構える。しかし動けない。


魔王「保険は一つではない。」


指を鳴らす。

魔物が鏡を運んでくると、そこに映し出されたのは――

ツク、サヤ、シーナ。

そして彼らを取り囲む、無数の魔物。


魔王「異国の勇者が召喚されたと聞いてな。備えておいて正解だった。

まさか城を一撃で消し飛ばすとは思わなかったが……さすがは伝承の勇者だ。」


薄く笑う。


魔王「選べ。両腕か、両脚か。差し出せば、こいつらの命だけは救ってやろう。」


斧を持った魔物が紫雲ににじり寄る。


王女「いけません!勇者様!今、魔王に立ち向かえるのは勇者様だけなのです!魔王に屈してはなりません!」

紫雲(魔王は強い……あいつらに攻撃の指示をされる前に魔王を倒すとなると、余波で街は吹き飛ぶ……力を抑えれば……奴らが殺される。どうすればいい……)

魔王「五秒だ。」


紫雲の鼓動が響く。


魔王「四、三――」

紫雲(全てを救うことは、もう――)

魔王「時間だ。やれ。」


魔物が跳ぶ。

――バチィッ!!

紫雲は瞬時に放電し、斧の魔物を消し炭にした。


魔王「殺せ。」

紫雲は瞬時に放電し、斧の魔物を消し炭にした。

鏡の向こうへ命令が飛ぶ。

紫雲は雷を纏い、魔王へ跳び蹴りを放つ。


魔王「クハハハ! 人間より戦いを選ぶか!」


女王が放り投げられ、蹴りは片手で受け止められた


紫雲「貴様に構っている暇はない!」


掴まれていない足から、至近距離で雷撃。

ドォン!!


鎧が砕け、城壁が崩れる。

スタッ…


紫雲「……っ………」


放り投げられた女王は潰れ、血が噴き出して絶命していた


魔王「…まさかこの鎧を砕くとはな…」

紫雲「…っ!?まだ生きてんのか…。」


魔王の体から、ドス黒い瘴気が溢れ出す。


魔王「これは眷属すら蝕む力。抑えていたが……今は構わん。」


闇が広がり、視界が奪われる…


魔王「見えぬであろう? やはり殺し“合い”にはならぬな。」

紫雲(もう……間に合わないかもしれない…)

魔王「終わりだ。」

紫雲(…俺は………どうすればよかった…………)


闇の中、攻撃が走る。

直撃するその刹那――

バチ、バチバチッ!!

雷光が闇を裂く。


魔王「なっ……!?」


ドッ!!!!!!!!!

閃光の中、紫雲の蹴りが直撃する。


紫雲「ぶっ飛べ!!」


バァンッ!!!!!!!!

魔王は空へ吹き飛ぶ。

シュビィン…!!!

その上空へ、紫雲が先回りする。

ダァンッ!!!!!!!

高速回転からの踵落とし。

魔王は地へ叩き落とされる。


その瞬間。


紫雲は落雷と化し、地上から突き上げる渾身の前蹴りが魔王を貫いた

天を裂く巨大な雷柱。

魔王の存在は、光の中で消滅した。




紫雲「…魔王を倒し、魔物を殲滅したあと三人のもとへ向かいましたが…既に手遅れでした……」

ことみ「そんな……」

紫雲「…また……失ったんです………」




紫雲「うわあああああああああああ!!!あぁぁあああああああ……………うっ…うう…」


崩れ落ちる紫雲。

血と炎で赤く染まった世界を見下ろしながら…


神「これがお前の“答え”か?」

紫雲「っ!?お前…!ふざけんな!!こんな『世界』が…答えなわけないだろ!!………俺は………俺は………」

神「…お前は確かに強い。お前が死ぬようなことは絶対にない。…だが、他の者は違う。鍛えなければ強くならない、備えなければ戦えない。守られるだけでは、生き残れない。」

紫雲「……俺は……こんなにも無力だったのかよ…………」

神「そうだ。お前は所詮人間だ。どれほどの力を持っていようとやれることに限度がある。お前はうぬぼれ、その限度を見誤った。」

紫雲「くっ!!じゃあどうしろっつーんだよ!!…俺は…考えた…!どうすれば皆を護れるのか!カインの時みたいにならないように頑張った!!なのに駄目だった!!これ以上何をどうしろって言うんだよ!!俺一人にこれ以上何かできたのかよ!!」

神「…私はお前に「神になれ」と言っているわけではない。絶対の力を持ってしても、全てを救うことなどできはしない。」

紫雲「なら…こんな力になんの意味があるんだよ…!」


涙が混じる


紫雲「…俺が……俺が…チート能力を欲しがったのは何でも思い通りになると思ったからなんだよ…なのに…なんだよこれ…全然意味ねーじゃねーかよぉ!………」

神「…お前の言う、思い通りの『世界』とはなんだ?」

紫雲「…あ?そりゃ…女の子にモテて…ちやほやされて、誰にも負けなくて………」


言葉が止まる。


………そうだ……俺は最初、力を自慢したかった。最強になって女の子にモテて…楽に生きていければなんて考えてた……でも…カインと出会ってからどうでもよくなった。力なんてなくてもあんな風に生きていれば楽しかった……ツク、サヤ、シーナみたいな友達がいればそれだけで…………


紫雲「…俺の言う、望んだ『世界』。それは…『平和な世界』だ……」

神「…ほう?お前はその力を手にして、『平和な世界』を望むのか?」

紫雲「………いつの間にか俺のことなんてどうでもよくなってた……俺は…平和

ってのがどれほど尊いものだったのか知らなかった………俺はただ……皆を護りたかった…こんな景色…もう見たくない………」

神「……………………」


ブォン――

時空に裂け目ができる


神「お前は、まだ進むか?」

紫雲「…!」


紫雲は膝をついたまま、裂け目を睨み続けた


紫雲「…………なぁ………」

神「……なんだ」

紫雲「……教えてくれ………平和な『世界』で生きるために…俺はどうしたらいい…?」

神「……お前がその気になれば、平和なんてものはすぐに手に入る」

紫雲「本当か!?」

神「あぁ…お前の手の届く範囲内ならな。」

紫雲「………………」

神「お前は元の『世界』のような平和を求めているのだろう? 自分の住む国だけ平和ならいい。自分さえ飢えなければいい。……それが平和だというのなら、簡単に手に入るだろう。」

紫雲「……………………」


紫雲は目を伏せる。


神「以前と同じように、己のためだけに生きればいい。違うか?」

紫雲「……………………」

神「…それともお前は…その力に、使命を感じているのか?」

紫雲「………どうかな……こんだけすげぇ力があるんなら何かを成し遂げたい………この気持ちは…俺がまだガキだからなのか………。あんなことになっておいて…まだ名声を求めているのかな……俺は…………」

神「さぁな……確かめたいのなら進めばいい。…言っただろう?チャンスはいくらでもあると……」

紫雲「……………っ!」


紫雲は立ち上がり、裂け目の中へと踏み出した…




次の『異世界』は――貧しかった。

国そのものが痩せ細り、だがその中で貧富の差は激しく、

路地には奴隷商が並び、子どもすら鎖で繋がれていた。


俺は憐れに思った奴隷の女の子を買って、面倒を見ようとした。

だが…一晩で持ち金全てを盗まれて逃げられた。

物語のようにはいかないんだと『世界』の厳しさをまた思い知らされた。


金に困った俺は王城に売り込みに行き、警護役として雇われることとなった。

…はずだったが、力を見せすぎた俺は危険とみなされ、何度も命を狙われた。

毒、刺客、裏切り。


紫雲(…俺がこの国で生きるにはもう……………)


…俺は初めて………人を殺した。自分の命を守るために…。


『世界』を変えるため、犠牲は必要なのだと……受け入れなければならなかった………



やがて紫雲は武力で王を排し、国を握った。

だが――

人は変わらなかった。

恐怖で縛られた秩序は、恐怖が薄れれば崩れる。

貧困は消えず、犯罪は増え、忠誠は打算でしかなかった。


そして国は、内側から崩壊した。



紫雲「……俺は……どこから間違えたんだろう…………」

神「…お前は知らなかった…」

紫雲「…何を…?」

神「…人間の醜さだ。」

紫雲「…………あぁ……そうかもな…………俺はある程度秩序のある国でしか生きたことなかったからな…………人間はここまで…醜く……残酷になれるんだな…………」

神「人間も所詮は穢れた魂を宿す動物だ。自分の命よりも道義を優先するような誇りある者など、この『世界』にも数えるほどしかいない…」

紫雲「……そうだよな…………そんな人だけの『世界』があれば…俺の理想だったんだがな………」


乾いた笑いが零れる


神「聖人だけの『世界』か……お前は『この世界』の人間が聖人に変わると思っていたのか?」

紫雲「…今はもう思ってねぇよ……」

神「そうか……」


ブォン…


神「…まだ進むか?」

紫雲「……もう疲れた………」

神「……ならここで終わるか?」

紫雲「……いや…終われない………」

神「……なぜだ………」

紫雲「…俺はまだ…答えを知らないから………俺はどうしたら、あの国を救えたのか………」

神「…人は役割を与えられると、それを演じる……。王の役を降りたお前が、本心でそれを望むのか?」

紫雲「……分かんねぇ……でも俺は………人を……殺した……!!…直接も……間接であっても…………何人も何人も……俺のせいで死んでいった………」

神「………………」

紫雲「…ここで立ち止まったら……俺は………………」


視線を上げ、神を見つめる


神「…お前が進むのをやめれば、記憶は消され『元の世界』へと戻る。背負っているものなど全て無くなる。…それでも――」

紫雲「それでもだ!!」

神「!」

紫雲「そんなのは関係ない。…このまま立ち止まってしまったら…俺の人生はちっぽけなままだ…。平凡で退屈で…何の取り柄も無い………。俺は…何かを成し遂げる人間になりたい…!この力は借り物だが!俺の力で誰かを……『世界』を救ってみたいんだ!!」

神「………ならば進め。」


ブォン…!と時空が裂ける


神「…私の試練を、越えてみせろ…」

紫雲「……あぁ……やってやるさ…!!」


今度は迷いなく。

強く、大きく、一歩を踏み出した





紫雲「…そこからも『異世界』転生を続けました。魔法使いを“魔族”と呼び、迫害している『世界』……正義を掲げながら人を殺す、戦争の絶えない世界……正義を語る余裕すらなく、食糧難で人がゴミのように死んでいく世界。……他にも沢山……。」

ことみ「…………………」

桃華「…………………」

紫雲「…どんな世界に行っても平和なんてものはありませんでした。…この『世界』もそうです。駆除対象との戦いだけじゃない。人間同士の争いもなくならない。差別、いじめ、食糧問題、環境問題、エネルギー問題……。問題は多すぎる。しかも、一つ一つが大きすぎる。

僕は以前、この世界は平和だと思っていました。でも、それは自分の見える範囲だけだった。実際は……問題だらけだった。 だから僕は、その問題に向き合うために今の地位を手に入れました。そして今も、そのために動いています。」

ことみ「そうだったのね………話してくれてありがとう。紫雲くんのことがよく分かったわ」

桃華「はい。問題解決に懸ける想いが伝わりました。」

紫雲「それなら、話した意味がありましたね。

……当面の目標は三つです。

まず一つ、僕の力を使ってエネルギー問題を解決すること。それが環境保護にもつながる。

次に二つ、新しい技術で食糧問題を改善すること。食べ物が足りれば、人は余裕を持てる。

そして三つ、争いを無くす。食料問題が解決し、多少でも国が豊かになれば、争いは減るはずです。もちろん、それでも争いはゼロにならないでしょうが…そのときはまた考えます。 …けれど、無理やり力でねじ伏せるつもりはありません。人の考えは、時間をかけてしか変わらないと『異世界』で学びましたから。」

ことみ「……壮大ね。でも、あなたの経験を聞いたら納得だわ。」

紫雲「…ただ…この目標を達成するためには当然、僕一人の力では絶対に無理です。多くの人の協力が必要になる。そして…圧倒的な“手数”がね……」


桃華へ視線を向ける


紫雲「つまり、桃華ちゃんの存在が必要不可欠だと言ったのは、人の手で生み出せる労働力が大量に手に入る君の技術が必要だということなんだよ。」

桃華「…そういうことでしたか……」

紫雲「自律して判断できるロボットが増えれば、ロボットがロボットを生産できる。

労働力は指数関数的に増えていく…。

それは、新しい“種族”の誕生です。それも人間の為の――」

ことみ「ちょっと待って!」

紫雲「なんでしょう」

ことみ「…それって…桃華ちゃんを奴隷みたいに扱うってこと?」


ことみは桃華を守るように腕を肩に回す


紫雲「いえ、桃華ちゃんは新しい生命体です。人権が保障されるべきだと、僕は本気で思います。ただ……現実として、問題を解決するには手が足りない。君の技術は、その不足を埋められる。だからこそ、人間社会のために力を貸してほしい。

……ここまでの経緯を語ったうえで、改めてお願いをしたい…。…桃華ちゃん。僕に協力して一緒に『世界』を変えてくれないか?」

桃華「……整理します。ワタシの協力を得て知能を持つロボットを量産し、社会問題の解決に充てる。その認識でよろしいですね?」

紫雲「あぁ。だが、それだけじゃない。……桃華ちゃん。僕は君と――いや、ロボットと人間が共に生きる未来を夢見ている…」

桃華「人との共存…ですか?」

紫雲「これから先、機械の力は不可欠だ。環境問題も、食糧問題も、エネルギー問題も。自動化なしでは支えきれない。だからこそ、君とは協力関係を築きたい。

……ただ、正直に言う。こんな話をすれば、君を“道具”として見ていると受け取られても仕方がない。企業のトップとして考えれば、これは合理的で当然の結論だ。でも――」


一拍、間を置く。


紫雲「でも、これだけは信じてほしい……。僕はそれ以上に、君という存在が、どこまで可能性を広げられるのかを見たいんだ。これは紫雲社会長としての言葉じゃない……同じ『ヒーロー』の仲間として、

友としての言葉だ。」


紫雲は真っすぐに桃華を見つめる。


桃華「………では一つ。紫雲様に質問をしてもよろしいでしょうか?」

紫雲「なんだい?」

桃華「紫雲様が掲げている目標、夢……それは紫雲様が『自由』に選択した結果なのですか?」

紫雲「…!」


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