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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第十九話「運命」

第十九話 「運命」

(主人公 イエロー3)


あれから数日が経った。

朱祢は敵に襲われて以来行っていなかった大学へ久しぶりに登校した。

友人が無事を喜んでくれたことで、少し笑顔になれた朱祢。

友人の話によると朱祢の他にも何人か登校しない人がいたとのことだった。もしかしたら襲われたのかもしれないという噂が広まり、校内ではその話で持ち切りのようだ。

確かに、他の生徒の会話を聞いてみると「~~怖いねー。」「嫌だなぁ…」「襲われたらどうしよ~」「~~消えてくんないかな?」「死ねばいいのにね~」と、ネガティブな発言が多い。


朱祢はしばらくその話を聞いていた。もちろん自分に向けられた言葉ではない。友人もいつものように接してくれている。だが、朱祢にはそうは思えなかった。

ネガティブな言葉は全て人間ではなくなった自分に向けられているように感じた。笑顔で接してくれる友人も、もう以前のように見ることが出来なくなっていた。

笑顔で話す友人も、きっと私の正体がばれたら軽蔑するのだろう…。

私は本性を隠したまま、のうのうと話していていいのだろうか…。

自分への負い目、不安、悩みが精神を追い込んでゆく。全く関係のない言葉であっても自分のものだと勘違いしてしまうほどに。


朱祢は強烈な不快感に襲われ、教室を飛び出した。

外のベンチに行き、一人で静かにうつむいていた。


「あ~かねっ!」

「っ……!!…!?」

同じサークルの仲間で、大学1年生の時から付き合っている彼氏が話しかけてきた。


「今日は学校に来てるって聞いて、探したよ~」

「………ごめん……今は…一人にさせて…」

「つれないこと言うなよ~どうしたの?悩み?」

「……………………」

「ん~じゃあ、今日は学校サボってどっか行かない?あかねとデートしたいなぁ~そうすれば気分も晴れるかもよ?」

「………そうね。じゃあ…どこか行こっか」


朱祢は彼氏と出かけることにした。彼氏の車で大型ショッピングモールへと向かった。

大きな道路を真っすぐと進んでいると突然渋滞にはまってしまった。

ガシャガシャという音と、車を降りて反対方向へと走っていく人々。

只ならぬ気配を感じ取った二人は車を降り、目を凝らして渋滞の先を見た。

数百メートル先には車を破壊している巨大なゴリラのようなものが暴れていた。そのゴリラはトラックからも顔を覗かせるほど大きかった。

常人の視力では大きな何かが暴れている程度のことしかわからないが、朱祢の眼には潰れた車から滴り落ちる赤い液体まではっきりと見えていた。

彼氏は半泣きになりながらも、朱祢の腕を力いっぱいつかんで逃げようと言った。

しかし、朱祢動かない。

朱祢はその場からビクともせず、ただ見つめていた。人間ごと車を破壊する『敵』のことを。


朱祢「逃げて…。」

彼氏「…はぁ!?一緒に逃げようよ!」

朱祢「………私にはやることがあるから…」

彼氏「何言ってんだよ!?」

朱祢「私がっ!倒さなきゃいけないのっ!!!!」


いつもは穏やかで大人しい朱祢が大きな声を出したことに驚く彼氏。腕をつかむ力も緩み、手が離れた。


彼氏「倒せるわけないじゃん、あんな化け物…バカなこと言ってないで早く逃げよう!あいつがこっちに来たら…」

グァアアアア!! バキンッ!ブォン!!

車のドアを破壊し、こちらに向かって投げてきた。

ドアは朱祢たちを優に超えた。このままでは走っている人に当たってしまう。


バシュンッッッッ!!!!!

力を解放させ、弓矢を出現させる朱祢。壊れたドアが朱祢の頭を超えてから1秒経たないうちに弓をつがえ、矢を放っていた。

パシュン……ドォオオン!!!

音を置き去りにした矢は飛んでいたドアを消し飛ばした。矢が放たれたあとの衝撃波により近くにいた彼氏は大きく後ろにのけぞり、尻もちをついた。


彼氏「あ…あかね……これは…?」


彼氏の問に答えることなく、車の上にピョンとのぼり、弓を構える朱祢。

シュゥゥゥウウウウウ……

朱祢の周りにオーラが漂う。そのオーラが吸い込まれるように矢に集まり。

バンッ!!!!!!!バァァァアアアアアアアアアン!!!!!!!!!

と放たれた。空気を貫き、一直線に敵へと向かっていく一矢。朱祢の手を離れた瞬間から敵を貫いてからも、その直線上にあるものは消し炭となった。

矢は凄まじい速度により、眼を刺すほどの光と、何もかもを溶かしてしまうほどの熱と、周りのガラスを全て割るほどの衝撃波を伴った。


『敵』は消えた。だが、安堵の喝采をあげる者はだれ一人としていなかった。


「それ以上の化け物がいる」


この事実だけが残ることとなってしまう。

形容しがたいほどの威力の武器を持つ人間のような何かがいる。


朱祢は車の影で尻もちをついたまま怯える彼氏へ手を差し伸べた。

朱祢「…大丈夫?立てる?」

周りの空気には気づいていた。奇異な目で見られ、恐れられている。だが、人々を護ることができた。

(私はそれでも誰かを護ったんだ…だから誇ろう…一人だけでも受け入れてくれるのなら、それ以外にどう見られてもいい)

その一人とは彼氏のことだったが。


彼氏「寄るな!!」

差し伸べた手をはじかれ、拒まれる。

朱祢「えっ……?」

彼氏「近寄るなよ……なんなんだよお前……気持ち悪いよ……ほんとに…」


そこからの記憶はほとんどなかった。その後どうやって家に帰ったのか。家に帰ってからしばらくの間何をしていたのか……。


*


朱祢「……………………………………………あれ?…ここ…どこだろう………山……………星……夜景がきれいなとこだ…………」



朱祢は山道を歩いていた。ちょうど視界が開けた場所で夜景が目に入り、ようやく意識が戻ってきた。

その場所からは街が一望できた。

朱祢はしばらくの間、その景色を眺めていた。何も考えず。何も、考えていなはずなのに。

朱祢「…う…うっ……涙が…出てくる…なんて……ふっ…くっ…うう……」


涙を拭ったまなこに映るのは敵の姿、襲われる人間の姿だった。


朱祢「…!?っく!!」

数キロ離れた敵に狙いを定め、弓を構える朱祢。だが、人間の顔を見るたびに強烈に蘇る数々の言葉。

「ふざけるな!早く出ていけ!!」「早くその化け物をなんとかしてよ!!」「化け物!」「消えろ!」「死ね!」「怖いよー!!」「怖いねー。」「嫌だなぁ…」「消えてくんないかな?」「死ねばいいのにね~」「気持ち悪いよ…ほんとに」


朱祢(護る価値があるのか?)


朱祢「いやああああああああああああ!!!!!!!!!」

頭を抱えてしゃがみ込む。

涙がどんどん溢れてくる。

認められないことが悲しいのか…人間ではなくなってしまったことが辛いのか…あの選択をしてしまったことを後悔しているのか…護る価値なんてないと思ってしまう自分に嫌悪感を抱いたのか…。

もう全てが嫌になってしまった。

泣き崩れた顔で視線を街へと戻す。

そこには残酷な景色が広がっていた。

どれほど遠くにあろうと、鮮明に見えてしまうその眼で、能力で、見てしまう。


朱祢「ああああああああ!!!!!!ああああああああああ!!!あああああああああああああああーーーーーーー!!!!!!!」


がむしゃらに弓矢を放つ朱祢。矢は弧を描きながら、様々な角度で建物を抜けて命中する。

天から降り注ぐ、不思議なオーラをまとった矢は流れ星のようだった。

食い荒らされ、血みどろに汚れた街とは対照的でとても美しい光だった。



敵を殲滅し、街へと降り立つ朱祢。

そこには体液をまき散らして死んでいる敵と人があった。

朱祢「ああ……あぁー!!…………」

弓を持ったまま膝から崩れ、泣き出す朱祢。

朱祢(あの一瞬の迷いがなければ助けられたかもしれない…あの時すぐに助けていたら…死なずに済んだかもしれない…私が……私のせいだ……私の……)


体液で赤く染まり、音もなく静まり返った世界の中で朱祢は声をあげて泣いた。


??「あのっ!大丈夫ですか!?」

声の方を見ると若い女性が立っていた。


朱祢は涙を拭き、立ち上がる。

朱祢「……大丈夫です……」


立ち去ろうとする朱祢を引き留めるように「待って!」とその若い女性が話しかける。

??「もしかして、これをやったのってあなたですか!?」


朱祢は視線を落とし、弓を見ると観念したかのように「そうです」と認めた。

また嫌われるのかと思い、すぐにでも立ち去ろうとした朱祢だったが驚きの言葉をかけられる。


??「あの、私あなたに助けられたの二回目なんです!一回目は公園の近くで…その時すごい綺麗な光だったから…さっきも光を見てもしかしたらあの時の人かもって思って…。それで…近くにいるかもって思って探して…そしたらあなたがいて…それで、私お礼を言いたくって!!」

朱祢「……お礼??」


始めて感謝され面食らう朱祢。

女性は朱祢の手を両手でぎゅっと握り、満面の笑みで「ありがとうっ!!」と言った。

化け物に変わったこの手を笑顔で握り、感謝してくれる。これは朱祢にとって何よりも嬉しいことであった。

力を得てから初めて嬉しいことを経験した。今までの絶望が和らいだ気がした朱祢はまた、泣き崩れてしまうのであった。


*


朱祢はしばらくの間、その女性に慰められた。

自己紹介を済ませ、ことみという女性に今までのことを話した。

ことみはヒーロー組織を作ろうとしており、ヒーローを探しているとのことだった。

そして、朱祢はことみに「ヒーローにならない?」と誘われた。



朱祢「…でも…私は…………」

ことみ「……やりたくないならやらなくていいのよ?…でも、今のあなたはとても苦しそう。自分の力とどう向き合っていくのかは考えなければいけないと思う。そのために、ヒーロー活動が役に立つかもしれないわよ?」

朱祢「…………私!……私…さっき…助けるかどうか迷ってしまった…。助けても怖がられるだけなんじゃないかって…嫌われるだけなんじゃないかって…それに…人間じゃない自分の姿を見るのが嫌で、それで………」

ことみ「あなたは悪くないわ。」

ことみは朱祢の手をそっと握り、優しく語り掛ける。


ことみ「あなたは化け物なんかじゃない。立派な人間よ。そしてとても優しい。 人間だから悩んでいるの。優しいから悩んじゃうのよ、きっと。」

朱祢はことみから視線を外し、「でも…」とでも言いたそうな顔で黙っている。


ことみ「…さっき、助けられなかった人がいたとしてもそれは朱祢ちゃんのせいじゃないわ。どんな事情があったとしてもあなたは悪くない。…でももし、それが嫌で後悔してしまうのなら、次は後悔しない道を選べばいいじゃない。」

朱祢「…後悔しない道……」

ことみ「そう。あなたにとってその力は何?どう使えば後悔しないと思うの?」

朱祢「………………」

ことみ「っていきなり聞いても難しいわよね。もし、私にできることがあったら連絡して!これ、名刺!」


この日はこれで解散した。それから朱祢は「後悔しない道」について考えた。

あれから数日後。


*


朱祢「ことみさん。私、あれから考えてみました。私はもう後悔したくありません。力を使うことで嫌われ、恐れられたとしても…誰かを護りたいです。せめて、自分の視界に映る人だけでも、護っていきたいです。」

ことみ「そう…。それが後悔しない道なのね?」

朱祢「はい。それで…あの……」

ことみ「! ヒーロー、やってみる気になった?」

朱祢「はい…」

ことみ「歓迎するわ!一緒に頑張っていきましょうね!」


*


そこから、朱祢はことみの下でヒーローをすることになった。朱祢は大学を辞め、2月から働き始めた。

4月にはメンバーも集まり、「バラレンジャー」として正式に活動するようになった。

ヒーローを志してから朱祢はタロの力と弓は使わないようになった。タロも弓矢も攻撃の際に強いオーラが出てしまうこと、そのオーラを纏うと攻撃力が高くなりすぎてしまうことから使用を制限した。代わりにスリングショットを使って攻撃するようになった。


*


朱祢は今日も敵を撃つ。でもそれは護りたいから撃つのではないのかもしれない。見殺しにするのが嫌だから撃っている。

朱祢は今日も逃げている。他人の目から、事実から、そして自分の気持ちから。

でもそれは悪いことなの?

悪いのは私?それとも運命?


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