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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第十七話「損亡」

第十七話 「損亡」

(主人公 イエロー1)

午前9時30分。愛犬のタロの散歩に行く時間。大学が休みの日は朱祢が散歩に連れて行く。

いつもの道をいつものペースで歩く。

いつも通りの日常。今日もそんないつも通りの日常が始まると信じて疑うことなどなかった。

しかしその日…いつもはいるはずのない何かがいた。

体長は約2メートル。何かを貪り食っている。

異常に気付いた朱祢は引き返そうとするが、その音を聞いたその者はギラりと鈍く光る大きな目で朱祢を見る。その者の口には赤く染まっており、何かの肉らしき物を噛んでいる。

それが人間の肉であることに気付いた瞬間、体の全ての力が抜けていった。涙を流し、ガタガタ震え、失禁する。立つことはおろかリードを握ることすらできない。

体の全てが死を直感していた。


人間を食う獣のような何かはゆっくりと朱祢に近づく。

唐突に終わりを告げる日常。

今までずっと他人事だと思っていた。自分には関係ないと思っていた。もし、襲われるようなことがあれば通報すればいいだけだと思っていた。誰かが、ヒーローが助けてくれると思っていた。

しかし、これが現実。頭は真っ白になり、命乞いをすることしかできない。

朱祢(もう駄目だ…ここで死ぬんだ…逃げられない…どうにもできない……助けて…!誰か…誰か助けて…!神様…お願い!お願いお願いお願い…!死にたくない…!!)

恐怖に耐えられない朱祢は目をつぶる。閉じた瞼から涙があふれ出る。


運命は残酷だ。

何の前触れもなく大切なものを容赦なく奪っていく。

朱祢は絶望的な状況に陥り、運命を受け入れ、全てを諦めようとした。

ワン!ワン!!

愛犬の鳴き声にハッと目を開く。

朱祢をかばうように前に出て威嚇をする。

自分の体の何倍も大きい獣に吠える。敵うとは思っていないだろう。少しでも主人が逃げる時間を稼げればいいと思っている。死を覚悟していても立ち向かっていた。どうしようもないほど怖いはずなのに…。

獣のような何かは鋭く伸びた爪でタロを突き刺した。爪のうち3本はタロの腹部を貫通していた。流れ出る血の匂いを嗅いだが、気に入らないのか投げ捨てた。

朱祢「タロ!!」

朱祢はタロに駆け寄る。

タロはもう呼吸さえできない状態であったが、朱祢のことだけはしっかりと見ていた。

命を懸けて護ってくれたタロ。どんなに怖くても護ってくれたタロ。死の恐怖から目覚めさせてくれたタロ。

そんなタロのことを強く想った朱祢はもう震えてなどいなかった。

朱祢「お前は…『敵』だ!!殺す!殺してやる!!」

素手で敵を殺そうと踏み込んだ瞬間、棒のような何かが敵を勢いよく貫いた。

ガ…ギャ………ドサァ…

敵は死んだ。

数秒、呆気にとられていたが愛犬のことを思い出し、すぐにタロのもとへ戻る。

朱祢「ごめん…ごめんねぇ…護ってあげられなくて……」

朱祢はタロの頭を優しく撫で、泣きながら謝り続けた。

すると、突然脳内に何かが語り掛けてくる。

(その犬を生き返らせたいか?)

朱祢(…!何…この声…)

(お前のその敵に立ち向かう覚悟…気に入った…。敵を倒し続けることを約束するならば、その犬を生き返らせてやろう…)

朱祢(生き返るなら生き返らせてよ!)

(その代償は大きいかもしれぬぞ…? 後悔しないか?)

朱祢(しない!タロが生き返るなら他に何もいらない…もう…こんな思いしたくない!)

(わかった)

朱祢の体は光に包まれた。

途方もないエネルギーが朱祢を包んでいるようだった。そしてその光、エネルギーはタロの体へも流れ込む。

すると、タロの傷口は塞がり不思議なオーラをまとった。目に光が戻り、むくりと起き上がる。

朱祢「タロ!…よかった……」

タロは尻尾をブンブンと振って朱祢に甘えた。すっかりいつもの様子を取り戻していた。

(これで契約は完了だ。お前はその力を使って敵を倒せ。もうお前は今までの日常には戻れない…)

カラン!

どこからか弓が降ってきた。

朱祢「…これは…?」

朱祢が手に取るが、すぐにタロが奪いとってしまった。

すると弓は無数の光の粒となってタロの体に吸い込まれていった。それに同調して不思議なオーラも吸い込まれるように消えて行った。

目を疑うような光景ばかりだったが今は、いつもと変わらぬ愛犬が目の前に座っているだけ。

朱祢「とりあえず帰ろうか」

朱祢は帰宅し着替えると、強烈な睡魔に襲われた。気を失ったようにベッドに倒れこみ、次の朝まで眠り続けた…。

この先に辛く険しい茨の道が広がっているとも知らずに…。


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