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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第十六話「正義ってなんだ…」

第十六話 「正義ってなんだ…」

(主人公 シルバー3)


あれは、一日中雨が降っていた日のことだった…


 ブラウンさんの能力なら雨に濡れることなく移動ができるため、買い物を頼まれていた。しかし、どれだけ待っても一向に帰って来る気配がなかった。もしかしたら道中で何かあったかもしれないと、ボクが迎えに行くことになった。

 風は吹いていなかったが、大粒の雨が傘を叩きつける音はとても激しかった。20分ほど、ぐるぐると歩き回っていたが、こんな大雨の中外にいる人間はそういないだろうと思いつく。そこで、周辺の人間の体温を感じ取り、外に出ている人間をしらみつぶしに確認することにした。

(………いた!…5人いる…一人は体温の高さから女か子どもだな……)


 すぐに駆け足でその場所へと向かった。そこは人気のない橋の下だった。高い堤防の向こう側にあるためすぐに視認することはできず、川の音で音も聞こえにくいことから不良が良く使う場所となっている。不良が集まっているだけなら放っておこうかと思ったが、増水している川の近くにいるのは危険なため様子だけでも見ようと思った。

 そこには「ゴールドローズ」がいた。だが、それだけではなかった。もうやめてと懇願する女、苦しそうに呼吸している男、指が切り落とされて泣いている男、胸ぐらをつかまれて宙に浮いている男。そして…体温を感じない男の体がそこにはあった。

 どんな理由があるのかわからないため、ゴールドに合わせて変身してから声をかけた。


シルバー「…何をしているんです…?」

ゴールド「…………探しにきたのか?」

シルバー「質問に答えてください。この人たちは何なんですか!?どんな事情があってこんなことを!?」

ゴールド「こいつらはこの女をいじめていた……。そこにあるやつが主犯だ。もう更生はできない。だから殺した。残っているやつらに最後のチャンスを与えているところだ。」

シルバー「あんたが殺したのか…!?」

ゴールド「…………………」


 ゴールドは男を放り投げ、隅にあった買い物袋をボクに差し出した。


ゴールド「ここはオレの世界だ。お前は入って来るな。これを持って帰れ。」


 ボクは無理矢理押し付けられた袋を隅に投げ返して言った。


シルバー「帰るわけにはいかない。お前は罪人だ。ボクが裁く…!」

ゴールド「……オレと戦うつもりか?」

シルバー「大人しくしていれば戦うつもりはない。警察へと連行するだけだ。」

ゴールド「ふっ…警察か……」

シルバー「何がおかしい?」

ゴールド「お前はオレが悪いと思うのか?」

シルバー「は!?そんなの当たり前だろ!殺人が肯定されるわけがない!」

ゴールド「悪を排除するのは正義だ。たまたまお前が今見ているのが悪人だっただけだ。」

シルバー「悪を取り締まるのが正義だ。お前がしていることは犯罪だ。決して正義などではない!」

ゴールド「……取り締まるやつらに何ができる?そんなのはただの綺麗ごとだ。遅すぎる上に無力だ。お前みたいに本物の邪悪に触れたことのないやつに何が分かる。何ができる?」

 語気こそ荒げなかったが、低く力のこもった声で語っていた。

ゴールド「お前に弱者の気持ちが分かるのか?苦労を知らず、力を持ったお前に。」

シルバー「………確かにボクにはわからないかもしれない。だが、強者だからこそ弱者を護る義務があると考えている!強い力には責任が伴う。強ければ強いほど正しく使わなければならない!お前は正義ではない!」

ゴールド「オレは正しい…お前の正しさでは護れないものを護った。」

シルバー「何が!人を殺して『護った』だ!!」

ゴールド「善人だ!オレが護ったのは善人だ!見ろ!この人を!!」

 そう言って怯える女性を指さす。

ゴールド「この人はストーカー被害にあっていた。実害がないと言われ警察には対処してもらえなかった。だが、この人は怯え楽しく生きることが出来ずにいた。何も悪いことをしていない善人が怯えて生きなければならない理由がどこにある!? お前の正義でこの人が救えたか?お前ならこの人を救えたのか!?」

 ゴールドの怒気に圧倒され、何も言えなかった。

ゴールド「それだけじゃない。この人はいじめにも遭っていた。絡まれていたところをオレが助けたんだ。」

シルバー「いじめていたからと言って殺したり、指を切ったりしたのか…!」

ゴールド「お前ならどうしていた?」

シルバー「……暴行を加えていたりすれば立派な罪だ。しかるべき対処をするだろう…」

 ドン!!!!いきなり腹を殴られた。

ゴールド「だからお前は弱者の気持ちが理解できないんだ。お前の正義は根本的な解決を一切していない。原因をなくさなければ弱者は恐怖から解放されることはない。」

シルバー「その方法が殺しってわけか。」

ゴールド「そうだ。人の考えはそう簡単には変わらない。死んで消すか、死ぬほどの恐怖でも与えない限り考えを改めようとはしない。悪を根源から消さなければ善人は不幸になり続ける。」

シルバー「…あんた…学が浅いだろ?罪人が更生できるか否かをお前が決めるな!どんな人間にも更生のチャンスはある!そのきっかけに罰が必要なんだ!それにな!人間は生まれた時から悪ではない!必ず何らかに原因があって罪を犯してしまうんだ!その原因を突き止め、より良い社会へと変えていくことこそが悪を根源から消すことにつながるんだ!!」

ゴールド「社会が変わるまでに何年かかる?善人はいつまで怯える?罪人だとか罪だとか…犯罪者以外のクズも世の中にごまんといる! お前の方こそ経験が無さすぎるんじゃないのか?法も秩序もない国の人間を裁くのは誰だ?社会の変動の波に飲まれ、もみ消される罪をどう裁く!?」

シルバー「……………」

ゴールド「……………」

シルバー「どうやら話しても無駄らしい…表に出ろ…」

ボン!! 拳に火を付け、更に強まっていた雨の中を歩く。雨は体に触れる前に蒸発し、地面は真っ赤に溶けた。

ゴールド「…オレはこの考えを変える気はない。お前も同じならどちらかが黙るしかないな…」

ヴァア!! 風を全身にまとい、何ものも寄せ付けずに歩を進める。


シャキッ… ゴールドが刀を抜く。

ゴォオオオ…プシュゥウウウ…… 業火の中でゴールドを真っすぐと睨みつける。

ザァーー…… 激しい雨の中、太刀を構えるゴールド。


互いの気迫が風、水、火の渦を通り抜ける…

雨粒一つひとつがはっきり見えるほどスローに感じるこの一瞬…

同時に地面を蹴りだし、殺気を込めた一撃を放つ…

ゴールドとシルバーの攻撃が触れる直前、声がした。

ドォオオオオン!!!!………

声が聞こえたことで躊躇した二人の攻撃は、辺りを熱風で吹き飛ばしただけにとどまった。ゴールドの太刀の刃先にシルバーの右拳が当たっている。

声の方を見るとホワイトの黄慈さんがいた。

黄慈「二人とも何してるの!!」

二人は武器を下ろした。


 黄慈さんがボクの近くに来ていた時には既にゴールドは消えていた。事情を説明したボクはとりあえず二人で先ほどの女性を保護した。残りの男たちは全員消えていた。

 女性は黄慈さんが家まで送ったそうだ。うやむやになってしまったが、いずれは決着をつけなければならない。ゴールドとは決して分かり合えないだろうから。

 あいつは悪だ。罪人だ。許すわけにはいかない。いかないが……どうにも引っかかる。罪人のくせにもっともらしいことを言っていたのが気に食わない。




 ボクは正義だ。正義のはずだが……あいつの言う通り、救えないものもあったかもしれない…。あいつは正義じゃない。だが、ボクの正義も万能ではない。強者であるボクの正義は万能でなければならない。力を持つものの責任を果たさなければならない。よりよい正義ってなんだ…



ボクは…考え続けなければならない…この能力を正しく使うために……


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