表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/52

第十二話「後悔」(イエロー1)

第十二話 「後悔」

(主人公 イエロー1)


ボワァッ!!!!

ドンッ!!!!!!!!


朱祢「ぐっ……!!」


炎の拳を振り抜くシルバーのヒーロー

朱祢の腹部に直撃し、凄まじいスピードでビルに叩きつけられる

ドッガッシャァアン!!!!!!


「きゃああああああああああああああ!!!!!」 「うわぁああああ!!!!!」

「ビルが崩れるぞ!!!」 「早く逃げろー!!!!」


パラパラ………

少し体を動かすだけでガラスが落下してしまう


「ひぃいいいいいい!!!!」

「……あ……あのっ……大丈夫ですか………」

朱祢「早く避難を……できるだけ遠くに…っ!?」


視線を前へと戻すと、向かいのビルを踏み台に攻撃態勢へと入っているシルバーローズがいた


朱祢「くっ…!!」


タンッ!

間一髪のところで上へと逃げるが…

ボワァアアッ…!!!

朱祢が激突したフロアへ熱波が広がり、そこにいた人たちは………


朱祢「っ!!!!…なんてこと………はっ…!」


ダンッ!!!!!!!!!

上空に先回りしていたシルバーローズが朱祢を叩き落す

ドンッ!!バッ…!

着地と同時に横方向へと飛び退く

ビュンビュンビュン!!!

すかさず追跡するシルバーローズへスリングショットの弾丸を放つ

カンカンカンッ!

拳でそれを弾く。しかし…

グニュ……ビュン!!

空気がゴムのように弾丸を受け止め、背後から再び襲う!


虎羽「………………」


ブワァアアアッ!!!!!!!!

巨大な火柱が上がり、弾丸は到達する前に溶解する


朱祢「…っ!!!」


近くにいた人は溶け、車に引火し、いつ爆発するか分からない状況だ。

タンッ!と地面を蹴り、別のビルの屋上からその惨状を見下ろす


朱祢…やめて………もう…………


震える指先に、光が集まる。

空気を引き裂くように、力を帯びた弓が朱祢の前に生成された。


朱祢(…もう……これしか………お願い…許して…………)


狙いを定めた先にいるのは、敵ではない。

かつて背中を預けた仲間――シルバーローズ・虎羽。


一瞬、ためらいが瞳を揺らす。

それでも朱祢は、弦を引き絞った。


ッ――――!!!!

バァアンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


放たれた矢は音を置き去りにし、衝撃波を纏いながら一直線に虎羽へと突き進む。

矢が通過した後、空間そのものが歪み、遅れて爆風が追いついた。


朱祢「はぁ………はぁ…………あぁああっ…!」


熱波によって破壊されていた建造物は、その上から衝撃波に叩き潰され、

道路は抉られ、壁は粉砕され、射線上に存在したものは形すら残さず消し飛んだ。


朱祢「……これが…私の護ろうとした街の姿なの…………」


膝から崩れ落ち、顔を伏せる


虎羽「貴方ももう…人を殺した…」

朱祢「…!?」


振り返るとそこには何事もなかったかのように虎羽が立っていた


朱祢「がっ…!」

虎羽「貴方に世界は救えない……」


虎羽の手が朱祢の喉元を掴み上げ、体はふわりと地面を離れる。

もがこうとするも、その体の下に床は無い。


虎羽「未来を知っていても、ボク達に世界は救えない…!世界を護ることとは…ここにいる人たちを犠牲にすることだ…!」

朱祢「ちがう……そんなの…間違ってる………」

虎羽「…ボク達にできることは…その犠牲を無駄にしないように生きる事……そうやって人は繁栄してきた、進化してきた………これが…人類における最善手だ…!!」

朱祢「…そんなの…関係ない…!あなたは…何の罪もない人を殺してなんとも思わないの!!??」


涙目になりながら叫ぶ朱祢


虎羽「!!……何とも思わないはずない……………でも…………ボクは………あの人たちを見殺しにする決断をした……!!もう二度と…後戻りなんて出来ない……。貴方が邪魔しなければ、ボクだって何もしない!!」


少しだけ、虎羽の手が緩む


虎羽「……朱祢さん……貴方とだって…これ以上戦いたくない………お互いに辛くなるだけだ…………約束してください…。もうこれ以上抵抗しないと……そうすれば、この手を離します……」

朱祢「……………………」

虎羽「……バディさんも言っていたじゃないですか………ボク達は知ってしまっただけ……罪を背負う必要なんて、無いはずです………」



「誰かぁ!ヒーロー!助けてくれぇ!!」

「いやぁああああああああああ!!!!殺さないでぇええええええ!!!!!」

「うわぁああああああん!!死にたくないよぉおーー!!!」

「死ぬのか………ここで……………ははっ………………」



ガッ!


虎羽「!?」


虎羽の腕を掴む朱祢


朱祢「…私…には……そんなこと出来ない……あんな顔、もう二度と見たくないから……!!」

虎羽「…あなたは弱い」

朱祢「…!」

虎羽「あんたの考えは、問題を先延ばしにしているだけだ…嫌な現実から目を逸らし、逃げているだけの臆病者に過ぎない!!」


――ボワァッ!!!!!

怒りと殺気に呼応するように、虎羽の拳が灼熱を帯びる。


虎羽「そんな弱者に、その力を持つ資格なんて無い!!!!」


パッ、と朱祢を突き放した瞬間。

踏み込みと同時に、渾身の正拳突きが叩き込まれる。

朱祢の放った矢と同じように、虎羽が撃ち込んだ拳先にある物は全て焼き払われ炸裂した衝撃波が周囲の建物をさらに粉砕する。


ドッ!!!!!!!ガシャァンッ!!!!!!!


凄まじい衝撃とともに、朱祢の身体がクラウンへと叩きつけられる。

硬質な外殻が悲鳴を上げ、朱祢の体はそのまま深くめり込んだ。


衝突の余波が空気を震わせ、砕けた破片が雨のように街に降り注ぐ。


「きゃああああああああああ!?!?!」

「なんだ!?」 「何か降ってくるぞ!!」


住人はパニックに陥り、破片に潰される人も少なくなかった…


虎羽「……殺すつもりだったんだけどな……。まだ……覚悟が足りなかったのか……」


すぅ――……ふぅ――……。


虎羽「……どこかで聞いたことがある……人は、自分を“正義”だと思い込んでいる時、最も残酷になれる……と」


静かに息を整えながら、虎羽は自嘲気味に呟く。


虎羽「……今のボクは……きっと、そうなんだろうな………だが……これ以外が正しいとも、思えない……」


ふぅ……すぅ――……。


虎羽「……よし……次は必ず、燃やし尽くしてやる……!」


拳を握り込み、朱祢へと踏み込もうとした――その刹那。

ガウッ!!!


虎羽「…っ!?」


屈強なオーラを纏った狛犬が、横合いから虎羽へと襲いかかる。


虎羽「なんだコイツは!?」


巨体からは想像できないほどの俊敏さで、狛犬は間断なく追撃を繰り返す。


虎羽(侵略体…?…っ!!いや、この力…朱祢さんのものか!!)

「くっ…はぁッ!!!!!」


(つるぎ)のように鋭い炎を纏い、攻撃を避けつつ手刀で首元を焼き切る虎羽。

しかし…


虎羽「!!」


その狛犬はオーラそのもの

霧散しても再び集束し、何事もなかったかのように元の形を成す。


虎羽「……ふっ……いいだろう……」


燃え上がる炎を纏い、虎羽は不敵に笑う。


虎羽「この力が……すべてを焼き尽くす焔の源だと、証明してやろう…!!」


グルルルァッ!!!!


朱祢を守るため、自律的に顕現した守護獣――タロと虎羽。

主である朱祢の意思とは無関係に、タロはただ“守る”という役割だけを果たそうとしていた。


朱祢「……うぅ…………タロ……………」


クラウンに叩きつけられ、壁にめり込んだままの朱祢は、

遠くに小さく見えるその戦いを、ただぼんやりと眺めることしかできず、立ち上がれずにいた。


朱祢「……私……何のために、ヒーローやってたんだっけ……………」


意志なき守護と、燃え盛る焔。

戦いの幕が切って落とされようとするその瞬間――

朱祢の頬から一粒の涙が、静かにこぼれ落ちた………







全ての始まり…

それは忘れもしないあの日…





朱祢「タロ!お散歩行くよ!」


そう声をかけると、柴犬のタロは尻尾をぶんぶんと振り、こちらを急かすように玄関へ駆けていった。


母「いってらっしゃい」

朱祢「うん、行ってきます」


午前九時半頃。

大学が休みの日は、決まってこの時間に散歩に出る。


朱祢(いい天気……風も気持ちいいな)


歩き出してすぐ、道端で立ち話をしている主婦たちの声が耳に入った。


「……えぇっ!? それはお気の毒にねぇ……」

「まさかよねぇ。娘の旦那の妹らしいんだけど……道を歩いてたら突然襲われたんですって」

「命は助かったみたいだけど、背中に大怪我を負ったそうよ……」


会話の横を通り過ぎながら、朱祢はちらりとだけ視線を向ける。


朱祢(……何の話だろ。物騒な話………もしかして、最近いろいろニュースになってる地球外生命の話なのかな…)


――クラウン。

突如、世界各国の首都上空に出現した巨大な飛行物体。


それを境に、地球外生命体の存在は徐々に現実味を帯び、世間を脅かすものとして扱われるようになっていた。

とはいえ、一般の人々にとってそれは、どこか遠い出来事だ。

ニュースで騒がれる“危険な存在”は、感覚としては凶悪犯罪者と変わらない。


自分の身近に被害者はいないし、もちろん自分がその対象になるなど、微塵も考えていない。

特にそれ以上考えることはせず、そのまま足を進め、いつもの公園へと入っていく。



朱祢「久しぶりに少し遊ぼっか!」


リードを腰につけ、ポーチからボールを取り出す。


朱祢「いくよー!それっ!」


ボールを投げると、タロは一直線に駆け出し、すぐに咥えて戻ってきた。


朱祢「いい子、いい子」


ボールを受け取り、頭を撫でる。

タロの表情が、くしゃりと緩んだ。


朱祢「じゃあもう一回……それっ! ……あっ!」


今度は少し力が入りすぎ、ボールは草むらの奥まで転がってしまった。

夢中で追いかけるタロに引っ張られ、朱祢も慌てて後を追う。


朱祢「あははっ、タロ待って~」


ボールに追いついたタロ。しかし、その視線はもうボールには向いていなかった。


朱祢「…なに…?何か見つけた?」


タロは鼻をひくひくと動かし、草むらの奥へと踏み込んでいく。


朱祢「えっ!何!?どこ行くのー!?…そっちはゴルフ場しかないよー!」


タロに導かれるように草をかき分けて進む。


朱祢「…!!…え…なにこの臭い……」


草むらに入って、まだ十歩も進んでいない。

それなのに――

さっきまで漂っていた、陽だまりと芝生の匂いは、鼻を突くような腐敗臭に、あっという間に塗り替えられていた。


グイッ

腰についたリードが引っ張られる。


朱祢(…………どうしよう……嫌な予感がする……やばいかも…………)「た……タロ!もう戻るよ!!」


声を出してみて初めて気が付く。

うまく声が出ない。声が震えている。


朱祢「はぁ………はぁ…………」


脚も震え、手には力が入らない


朱祢「…はぁ……はぁ……っ…タロ…!」


今すぐにでも引き返したかったが、愛犬を置いていくわけにはいかない。

勇気を振り絞り、更に奥へと進んだ…



朱祢「…はぁ…タロ……どこ………」


リードを手繰り寄せ、タロを探す朱祢


朱祢「……! タロ…!はぁ……よかった……もう戻ろ………」


タロの体に触れるとその異常にすぐ気が付いた。

タロの体はぶるぶると震えている。


朱祢「…っ!!!」


再会できた安堵で緩んだ気が、一瞬で凍りついた。

異臭が近い…

それに、湿った何かを噛み砕くような、クチャクチャという音。


朱祢「…………っ!!!!!!!」


恐る恐る、ゆっくりと視線を上げる。

そこには、黒い獣のような“何か”がいた。

しゃがんではいるが、その巨体は明らかに人間より大きい。


朱祢(………何か……食べてる……??…っ!!!)


その足元の地面には、何かを引きずったような跡。そして――


朱祢(……血…?…もしかして…………ひぃいっ!!!!)


さらに目を凝らすと、その獣が貪り食っているものが見えた。

それは衣服ごと噛みちぎられた人間の体だった。

パシッ

反射的に口を押さえ、込み上げる吐き気と呼吸を必死に殺す。


朱祢(やばいやばい…!このままじゃ私も殺される……逃げないと…早く逃げないと…!)


へたっ…

だが、恐怖はすでに限界を越えていた。

体に力が入らない。腰が抜け、立ち上がることすらできない。


朱祢「ふぅ………ふぅー……………」


涙が、ぼろぼろと零れ落ちる。

あと数分もしないうちに、自分は死ぬかもしれない。

そう思った瞬間、頭が真っ白になり、正気が削れていく。


朱祢「うぅぅ……うくっ………ふーっ……ふーっ……」


じわり、と温かい感覚が広がる。

それでも震える手で、腰に巻いたリードを外した。


朱祢(タロだけでも……せめてタロだけでも逃がさないと……)


ガチャッ!


朱祢「あぁっ!」


震える手から、ようやく外したリードが零れ落ちる。


朱祢「…!」


黒い獣と目が合っている。

殺される


朱祢「…い…いやぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


もう叫ぶことしかできなかった


朱祢「死にたくない!!!!!お願い殺さないで!!!!!!!!助けてーーーーー!!!!!誰かぁああああああっ!!!!!!!!!」


無様に地面を這い、命乞いをすることしかできない。


朱祢「ヒーロー……ヒーローを呼んでぇええええええ!!!!!!!誰か…!!!!!助けてぇええええええ!!!!!!!!!っ!!!!いやぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


振り返ると、黒い獣はもう、すぐそこまで迫っていた。



こんなこと、今までずっと他人事だと思っていた。

自分には関係ないと思っていた。

もし、地球外生命体が現れても通報すればいいだけだなんて楽観的に思っていた。

誰かが、ヒーローが助けてくれると思っていた。


でも、これが現実。

あの時あぁしていれば……

もっと前からこうしていれば……


どれだけ後悔しても、もう遅い。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ