第十一話「世界を変える光」(ブラウン1)
第十一話 「世界を変える光」
(主人公 ブラウン1)
おれ達の世界の平和は、ある日突然地球外からの侵略によって侵された
世界の至るところで『ヴィラン』と呼ばれるようになった地球外生命体は人々を襲うようになったのだ。
それと同時に、世界の首都、10か所の上空に謎の物体が滞空し始めた。
それを見た誰もが、その物体とヴィランの関係性を指摘したが、その黒い塊に扉は無く、ただの一度も動いたことはなかった。
人類の科学力では、あの物体が何で出来ているのか…どんな原理で浮いているのか…敵なのか味方なのかも分からない。
敵であると断言できないこと、首都の上に存在していること、そして不気味でありながらもそれぞれ、美しいフォルムをしていることからその物体は「王冠」(クラウン)と呼ばれるようになった。
クラウンが浮遊し始めてから1年以上が経過したが、未だに人類はあれを破壊する術を身につけてはいない。
首都の上空に位置している以上、もし仮にその方法が見つかったとしても、確実なものでなければならないのも時間がかかってしまう要因だ。
そしてもはやクラウンが空に鎮座している光景は、人々にとって日常と化してしまった。今では朝のニュースでもちらりと生の映像が映るだけで特にコメントもない。
都市伝説界隈では、クラウンが中立どころか、人類の味方であるという考えもちらほらと出てきたほどだ。
…だが…おれは知っている。
あれがやはり、全ての元凶であることを。
クラウンが人類にとって悪であるということを…!
なぜならおれがこの日を迎えるのは…
2回目だからだ
*
ことみ「えぇっ!?そ……それ…本当なの……!?」
銀河「あぁ…あと一週間後、クラウンは地上に落ち、世界の何億人という人間が死ぬことになる。」
ことみ「そんな………」
銀河「だが、大丈夫だ!おれはタイムリープしてからすぐに解決案を考えついたぜ」
ことみ「そうなの!?」
銀河「あぁ…だからクラウン落下の日の前日までに皆を集めてほしい」
ことみ「皆ってバラレンジャー全員のこと?」
銀河「あぁ。まっ、すぐ終わる話だ。大船に乗ったつもりでいてくれよ!」
ことみ「…分かったわ……なら…明後日、皆を集めて話し合いましょう」
銀河「あぁ!」
*
二日後
バラレンジャー全員が事務所へと集まった。
藍「まったく…狭っ苦しいったらありゃしませんわ」
金一「皆集まるとぎゅうぎゅうだね」
ことみ「狭い事業所でごめんなさい…」
雪「謝ることないですよっ…!」
みどり「あと誰が来てないのー?」
ことみ「さっき出動した虎羽くんがまだ戻って来てないわ。」
桃華「虎羽さまでしたら、処理局の隊員から事情聴取を受けておりましたのでもう少し時間がかかるかと思います。」
紫雲「事情聴取?」
桃華「はい。今回討伐されたエネミーの体液には、人が触れると接触部位が膨張し、まるで別の生き物の肉が取り憑いたかのような作用が確認されました。ワタシは機械ですので影響はなく、先に帰投いたしましたが、虎羽さまはその兆候が出ていないか、検査を受けておりました。」
紫雲「なるほど…」
と話していると事務所の扉が開いた
虎羽「すみません、遅くなりました!」
虎羽が事務所に入ると、一番近くにいたブラウンと目が合った。
虎羽「……………」
ブラウン「………………」
ことみ「虎羽くん、大丈夫だった…!?」
二人はすぐに目を逸らし、虎羽はブラウンから一番遠いコトミの近くへと移動した
虎羽「えぇ、何の異常もありません。…後日、採血の結果が届くそうです」
ことみ「そう……ならよかったわ……」
銀河(なんだアイツら…仲悪かったのか?…前回はそんなことなかったと思ったんだが……シフトが少し変わった程度でそんなに影響が出るのか……?まぁいい、そんなこと言ってる場合じゃねぇ)「…よしっ!これで皆集まったな!話を始めてもいいか?」
銀河が皆の視線を集める
みどり「えっ、銀ちゃんが話すのー?」
銀河「あぁ、おれがことみさんに頼んで皆を集めてもらったんだ!」
金一「えーなんの話だろー…あっ、もしかして社員旅行とか!?」
黄慈「この前のお花見、楽しかったもんね。また皆で、どこかへお出かけかな?」
銀河「……みんなで出かけんのもいいが…それはこれからのことがひと段落ついたらだ。」
紫雲「一体なんの話なんだ?」
銀河「今から五日後、クラウンが街に落下する」
「「!!」」
黄慈「…どうしてそんなことが言い切れるんだい?」
銀河「それは…おれがタイムリープの能力を持ってるからだ」
雪「タイムリープって…過去に戻れるってことですか!?」
銀河「そうなんだ。だから、今回のおれは二週目なんだ。対策を考えるためにかなり余裕を持って過去に戻ったが、すぐに解決策を考えついたぜ!」
金一「おぉ!それは…!?」
銀河「ふっ…おれは今回、情報収集を怠らなかった…皆がどれくらいの力を持っているのか、今回は色々と聞かせてもらったよ…その結果!皆が力を合わせれば被害を出すことなく、クラウンを破壊できるんじゃないかって思いついたんだ!」
金一「おー!」
銀河「だから頼む!今度は、皆の力を借りてクラウンの被害を阻止したんだ、力を貸してくれ!!」
頭を深く下げる銀河
虎羽「…ちょっと待ってください…急すぎて話が入ってこなくて…」
朱祢「えぇ…急にそんなこと言われても信じられません」
紫雲「…ふむ…」
銀河「えー…でもこれ以上言うこともないぜ?」
藍「……証拠はあるのかしら?」
銀河「えっ?」
藍「クラウンがあと五日で街に降り注ぐという証拠はあるのかしら?」
銀河「あぁ!おれは見てきたんだ!日にちもばっちり憶えてるぜ!五日後で間違いない!だからそれまでにあれを破壊できれば…」
藍「あ・の・ねぇ!それでは証拠にならないでしょう!?わたくしは貴方がタイムリープできるということすら信じていないのよ!?」
銀河「えぇー…じゃあどうすれば信じてくれるんだよ…」
ことみ「例えば…銀河くんしか知らないことを言えば、皆信じてくれるんじゃない?銀河くんの話が本当なら今日までの出来事は既に一度経験してるってことよね?知ってるからこそ何か行動を変えたりとかしてないの?」
銀河「うーん…おれが変えたのは皆といっぱい話すようにしたことくらいかなぁ…」
藍「なぜ、一番にこういうことになると想定しないんですの!」
銀河「ははっ、解決策考えついてからは特に考えてなくってな……みんなすげー力持ってるから、こんくらい驚かないかなーって思っちまった」
紫雲「たしかに…それはあるかもね。…藍さん、実は俺もちょっとした能力があって…銀河が別の『世界』…未来から来たってのは確信が持てます」
藍「…ふん!貴方が信じるかどうかは証拠にはなりませんわよ」
紫雲「うーん…だってさ銀河」
銀河「証拠……証拠かぁ……あっ!そうだ、一個明確に行動を変えたところがあるぜ!」
みどり「えーなになにー?」
銀河「皆で花見に行った時あったろ?」
みどり「あったあった~」
銀河「一週目の時のおれ、酒飲みすぎて気持ち悪くなったんだよ。んで、そんな中でヴィランが現れるもんだから戦おうとしたらさ…もう周りを巻き込んでぐっちゃぐちゃよ。しまいにはヴィランそっちのけで金一さんと戦ってたからな。あれのせいでもう酒はいっぱい飲まないって誓ったね」
「「………………………」」
ことみ「………ちょっとエピソードが弱いかな…」
藍「もっとまともな証拠はないのかしら????」
銀河「うわっ!怒んないでくださいよ…えーっと…あっ!黄慈さん!その時におれ、弁当の中身言い当てましたよね?あれ実は一週目の時、肉より魚が好きだって言ってたの思い出したからなんすよ!」
黄慈「あぁ、たしかに言っていたね。なるほどね…僕は銀河くんのこと信じるよ」
銀河「あざーっす!」
藍「ちょっと!貴方まで、そんなことで人類の命運を決めかねないようなこの話を信じるんですの!?」
黄慈「…うん。銀河くんは嘘をつくような人じゃないしね」
銀河「黄慈さん…!ありがとうございます……。おれ、あんまし頭良くねぇから上手く説明する自信なくってよぉ…。みんながおれのこの、嘘をつかない性格を知ってもらうまでこの話をするのはやめてたんだ」
虎羽「だからこんな直前になって話したんですね…」
銀河「あぁ、いくらおれでもそんくらいは考えたぜ?」
藍「ふん!わたくしは信じませんからね!」
みどり「藍ちゃんは頑固だね~」
朱祢「…私も信じられていないから」
ブラウン「オレもだ」
銀河「えぇ……じゃあ、どうしたら信じてくれるんだよ…」
紫雲「…! 銀河、お前のその能力は今も使えるのか?」
銀河「ん?あぁ、いつでも使えるぜ」
紫雲「一分前とかに戻ることもできるのか?」
銀河「まぁな!」
紫雲「なら、藍さん。銀河に、絶対に答えられない質問の答えを教えてあげてください。」
藍「はい?」
紫雲「そしたら、銀河が少し前にタイムリープして藍さんにそれを教える。そうすれば藍さんも信じられるんじゃないですか?」
銀河「おー!頭いいな!」
紫雲「銀河が未来から来たとしか思えないような問いにしてくださいね」
藍「……なるほどね……というか、そんなことが出来るならさっさと言いなさいな!…はぁ……そうね…なら、過去のわたくしに、このピアスをどのお店で買ったのか教えなさい。そうすれば信じると思うわ」
藍は耳にある金色に輝くピアスを見せる
みどり「そういえばあたしも知らないなー どこで買ったの?」
藍「ここに居る者は誰も知らないわ。…これはわたくしのおばあ様の代からお世話になっている『金剛宝石店』というお店で買ったものよ」
銀河「金剛宝石店ね…オーケー 過去で待ってな!」
*
ことみ「…ちょっとエピソードが弱いかな…」
藍「もっとまともな証拠はないのかしら????」
銀河「うわっと…ここに戻ったか…ふっふっふ…証拠ならありますよ、藍さん」
藍「…?」
紫雲「…!」
銀河「さっき、紫雲からいいアイディアをもらったんだ。おれがタイムリープしてないと答えられない質問に答えるってな」
藍「…それで?」
銀河「藍さん、そのピアスをどこのお店で買ったか、誰にも教えてないですよね?」
藍「…そうね…」
みどり「たしかに。聞いたことなーい」
銀河「…未来の藍さんに教えてもらいました。それ、金剛宝石店ってとこで買ったんですよね?」
「「!!」」
藍「……当たってるわ……」
朱祢「!…まさか本当に……」
銀河「どうだ?これでおれの言うことを信じられるだろ?」
藍「……そうね……信じるわ…」
銀河「よしっ!…なら早速、世界を救うためにクラウンをぶっ壊そうぜ!」
??「………世界を護るだと…?」
「「!?」」
その時、突然全員の脳内に謎の声が響いた
銀河「バディ!?」
バディ“おっと、失礼。聞き捨てならない言葉が聞こえたものでね…。私の名前はバディ。銀河に力を与えた者で、そう呼ばれている。”
桃華「この通信方法は一体……??」
バディ“君程度の科学力では当分理解できない手法だ……まぁ、細かいことはいい。銀河、お前はクラウンの破壊が世界を救うことのように言っているが果たしてそうかな?”
銀河「なんだと!?どういうことだ!?」
バディ“…バラレンジャー諸君…君たちは私のように上位の存在によって力を与えられた者たちだ。心当たりがあるだろう?”
「「!!」」
バディ“…君たちに力を与えたのは私の仲間だ…。そして、我々こそ未来から来た存在なのだよ”
「「!!!」」
銀河「なんだって…!?」
バディ“……少し、話をさせてもらおう。我々のいた世界――これを正史と呼ばせてもらう。
正史では、ヴィランの出現によって地球は侵略され、人類は滅亡寸前まで追い込まれた。その敗北の直前、地球は最後の希望を託し、様々な人種を乗せた宇宙船を空へと放った。それが、人類最後の選択だった。
生き残った者たちは、何千年という時をかけて文明を存続させ、やがてヴィランとすら和解し、さらに技術を発展させていった。……そして、気の遠くなるほど長い時を経て、宇宙はついに“平和”を手に入れた。
その頃の我々にとって、技術に不可能はなかった。銀河がやってみせたように時の流れを遡ることすら、造作もないことだった。
そう……我々は、技術の究極点へと到達してしまったのだ。そこで、我々は考えた。
これ以上の進展を望むなら、もはや“未来”ではなく、“過去”を変えるしかない、と。そして白羽の矢が立ったのが、この時代だ。
もし、ヴィランによる被害をここで抑えることができれば、正史よりも遥かに少ない犠牲で、より短い時間で、我々の時代へと辿り着ける。その可能性に、我々は賭けた。
――だからこそ、君たちに力を託した。人類を救うために。この時代の“希望”として、
ヒーローになってもらったのだ。”
「「……………………」」
ことみ「…あの…突然のことすぎて理解が追い付いてないんですけど……」
虎羽「…ボクはバディさんの話、信じられます。…あまりにも突拍子のない話ではありますけど…でなければこの力に説明がつかない。ボクらの力は、あまりにも強大すぎる。人類が数万年かけなければ到達できないと断言できます。」
朱祢「…“ヒーローになってもらった”……これも心当たりがあるわ…」
桃華「…それで、バディさんが未来から来て、より多くの人類を救いたいと考えているのであれば、なぜ銀河さんの意見を遮るのでしょう?」
みどり「たしかに、そういえばそんな話だったね」
バディ“…銀河よ…私が何故、一週目の時にクラウンが落ちると警告しなかったと思う?”
銀河「あ?……確かに…一週目の時、お前は何も言ってくれなかった…未来から来たんなら、お前も知ってたんだろ!?何故だ!?」
バディ“あれが落ちることによる被害…それこそがその先の犠牲を減らすために必要な出来事なのだよ…”
「「!!!」」
紫雲「どういうことなんです?バディさん」
バディ“…これは、我々がこの時代を選んだ理由にも関わることだ。この時代以前に戻り、例えば戦争が起こらなかった世界を創ったとしよう…するとどうなると思う?”
銀河「…どうなるんだよ」
バディ“技術の発展は停滞し、文化は変化を受け入れにくくなり、倫理をはじめとする人類の価値観の成長を遅れさせる。”
ブラウン「…お前は人類に戦争が必要だと考えているのか」
バディ“これは事実だ。人類にとって、戦争とは進化を促すものだ。戦争…もっと広く言うのなら犠牲だ。犠牲なくして進化は在り得ない。”
ブラウン「何故、言い切れる?」
バディ“…我々は、君たちには数えきれないほどのシミュレーションの末、この結論を出している。…君たちが持つ力の大きさを思い出してから考えてほしい。我々の技術力によって導き出された予測…それはもう事実となんら変わりがないと思わないかね?”
ブラウン「………………」
バディ“それだけではない。もう既に、君たちの世界はそれを証明しているではないか。兵器が充実しているのは犠牲があったからだろう? 誰も死なず、誰も戦わない世界が続いたとしたら、今、戦えるヒーローが誕生していたと思うか? ……犠牲を出したくないという道徳性が生まれたのも、それまでの数多くの犠牲があったからだ。…これは人間として生きる以上、仕方のないことだ。気に病む必要はない”
「「……………………」」
虎羽「結局、クラウンを破壊するということはかえって犠牲を増やすことになると……このまま、何もせずに過ごすことはあんたにとっては予定調和だということなのか?」
バディ“その通りだ。君たちはただ、銀河によって事前にそれを知ってしまっただけにすぎない。阻止する責務も、気に病む必要もない”
銀河「おい!あれが落ちることで何億人死んだと思ってるんだ!!俺は見た…地獄のような光景を………何億人もの人間が、何の抵抗も出来ずにただ殺された!無慈悲に……あんな大虐殺を黙って見過ごせるわけないだろ!!!!」
銀河が声を荒げる
バディ“…それでも、戦争よりはマシだ。君たちはもう充分に人々を護ってくれた。ヴィランに食い殺されるよりも、苦しむ間もなく呆気なく死ねる方が、幸せな死に方だと思うがね”
銀河「ふざけんな!あんな終わり方が幸せなわけあるか!!それに…残った人の嘆きも、俺は見た!世界中の首都が壊滅すれば何もかもが崩壊する…政治だって……でっかい企業の重役だってほとんどが死んだ!世界の経済とかが回復するのにどれだけ時間がかかると思ってんだ!!」
バディ“…世界中の首都に落ちる…だからいいんだ。”
銀河「なにぃ!?」
バディ“お前の言う通り、あらゆる分野のトップは大体首都圏に住んでいる。それはクラウンが現れてからもさほど変わっていない。だからこそ、あれが落ちれば世界はリセットされる。残った人類は生き残るために、手を取り合うことができるんだ”
紫雲「…残酷な考えだけど…一理あるかも…」
銀河「紫雲!!お前…!!」
金一「お、落ち着いてよ…!」
つかみ掛かろうとする銀河を止める金一
バディ“…こんな実験を耳にしたことはないか?UNIVERSE 25――完全に管理された理想環境で行われた、生物実験だ。”
黄慈「! 聞いたことがある…」
バディ“そこでは餌も水も不足せず、外敵も、病もない。 争う理由など、どこにも存在しなかった。しかし、個体数が一定の限界を越えた瞬間、社会は内側から崩れ始めた。
暴力が生まれ、役割は失われ、やがて繁殖すら放棄されるようになり、絶滅した。
人類は今まさに、その道の途中に立っている。”
銀河「そんなのただの実験だろ?人間はそんなにバカじゃねぇ。簡単に滅びたりするもんかよ!」
バディ“いや…人類にとって、この課題はまだ早すぎる。人類全体の価値観が未熟なままでは、この危機を乗り越えることはできない。…たしかに、即座に人類が滅亡することはない。だが、これによって人類の選別がされてしまうこととなる。結果的に裕福な層だけが生き残り、残った資源を食いつぶし、奪い合い、滅んでいく……”
ブラウン「…それもシミュレーションか?」
バディ“あぁ…正史でそのような出来事は起きなかった。…しかし、今の君たちにもなんとなく想像はできるだろう?世界の環境が大きく変わらなければ、社会の構造も、価値観も、変わらない。そして、その歪んだ社会がずるずると続いていけば、いずれ崩壊する。 残された人類は退化した文明の中で不幸に生き続け、最後には静かに滅びることになる…”
ことみ「…人類は…大きな犠牲を出さなければ進化できないって言うの……」
一同は言葉に詰まり、静まり返る
バディ“…君たちはクラウンによる被害を甚大なものだと考えているようだが、我々からすれば正史に比べて膨大な数の人類を救うことに繋がる。これほど喜ばしいことはないのだよ”
ピピピピ…
桃華のメモリーが反応する
桃華「がっ…!!あ……う……」
「「!?」」
藍「ちょっと貴方!桃華に何をしましたの!?」
バディ“クラウンが落ちることによって、どれだけの人間が助かるのかシミュレーションの結果を転送しただけだ。……さて、君はどう思う?合理的な判断ができる君は、我々と同じ考えに到達できると思うのだが…”
桃華「…皆さま…この方のおっしゃっていることは正しいです。確かに、より多くの人類を救うためには多くの犠牲が必要です。」
雪「…そんな……」
桃華「確かに、クラウンが墜落すれば億単位の人が亡くなるでしょう…ですが、比率で言えば数パーセント…それに対して正史では99%以上の人間が死滅していたことになります…」
「「!!」」
桃華「それだけではありません…その後の人類の繁栄のことまで考えるのなら、他の選択肢と比べても桁違いに犠牲が少ない手段です…」
バディ“そう…クラウンの落下は、人類史においてもっとも犠牲を減らす手段なのだ。我々の使命にかけて、何としてでも成功させなければならないのだよ”
数億人の犠牲。
それで世界は救われる。
数億人、見殺しにすることができれば…
この先、数百億…いや、それ以上の人類を救うことができる。
さぁ…どちらの選択が正しいだろうか?
銀河「…そんなの…そんなの、ただの計算だろ!たとえ、現代の全ての人を救ったって、発展し続けられる道もあるかもしれねぇだろ!? それこそ、皆のこの力があればなんとかなるんじゃねぇのかよ…!」
紫雲「……銀河…。僕らに力があったとしても、人類の価値観が変わらなければ、人類は繁栄し続けない。…大きな犠牲が出る以上に社会が変化をもたらす出来事を……僕は知らない………」
銀河「…紫雲……」
皆が俯き、何も言わない
銀河「皆も黙ってどうしたんだよ…!…おれら、ヒーローだろ!?世界を……人々を護るのがヒーローなんじゃないのかよ!?」
藍「…その、世界を護るために犠牲がつきものという話だったでしょう…。悪いけど、わたくしは帰らせてもらいますわ」
藍が部屋を出ようとする
銀河「おい、待ってくれよ!」
藍「もう話すことも無いでしょう?…犠牲なくして、世界は変わらない…これは人の世の理よ…」
ピシャッ! と、扉を閉める藍
銀河「そんな……」
紫雲「…悪い、銀河……僕も帰らせてもらう…」
銀河「お、おい!紫雲まで…」
紫雲「…僕は……世界を護るためにヒーローになった。…犠牲だって、覚悟の上だ…!」
ガラララッ…! 扉を開けて出て行ってしまう紫雲
桃華「…申し訳ございません。ワタシも…銀河さまの意見には同意いたしかねます…」
銀河「桃華ちゃん…」
桃華「…ワタシにとってあのシミュレーションは事実と同じです。…ワタシには…0を1だと言い張ることは…出来ないのです……」
虎羽「ボクも失礼します」
銀河「虎羽…」
虎羽「ボクは……今、この瞬間の繁栄より…未来へと続く繁栄の道の方が大事だと思います。……それがボクの……正義ですから………」
銀河「あっ……クソッ!虎羽まで……」
みどり「じゃ、あたしも帰ろっかな~」
銀河「えっ!なんでだよ!?」
みどり「あたし、もともと正義がどうのこうのとかでヒーローやってないし。…先のことが予想できることにやる気も出ないから~」
銀河「ま、待ってくれよ!」
パシッ!とみどりの腕をつかむ銀河
みどり「っ!離してよ!」
銀河「!!」
みどり「……あたしに協力しろって命令する気?なら力づくでやってみる??クラウン落としよりも被害が出るかもだけどね」
銀河「………わかったよ………」
みどり「ふんっ」
雪「あわわわ……みどりさんまで………」
金一「みどりちゃんがあんなに怒ってるの…始めて見たよ……」
銀河「……………………」
ブラウン「銀河さん。オレは残りますよ」
銀河「!! ホントか!?」
ブラウン「…どんな理由があろうと、人を見殺しにしていい理由にはならない」
銀河「…! ブラウン~~!!」
ブラウン「うわっ!」
熱い抱擁を受けるブラウン
朱祢「私も残るわ。…ブラウンくんの言う通り、見殺しになんてできないから……」
銀河「…朱祢ちゃん…!!!」
朱祢「! ちょ、ちょっと!それ以上近づいたら殺すから!」
ブラウンへのノリで朱祢に迫るが当然拒絶される
金一「僕も残るよ!できることがあるなら最善を尽くす…これが僕にとってのヒーローだからね!」
雪「わ、わたしもっ!」
銀河「ありがとう……!……黄慈さんは…?」
黄慈「……ぼくは………………」
「「…………………」」
黄慈「…ごめん……答えられないや…」
ことみ「黄慈さん……」
黄慈「…ぼくには…どちらが正しいのかなんて選べない……わるいけど…何も聞かなかったことにしてもらえないかな……」
銀河「……分かりました………」
黄慈「……ごめん………」
黄慈は気まずそうに事務所をあとにした。
*
銀河「残ったのはブラウン、雪ちゃん、金一さん、朱祢ちゃん、そしておれの5人か……」
金一「でも、クラウンが墜落するのは五日後なんでしょ?銀河くんもいるなら5人でも充分間に合うんじゃないかな?」
雪「そ、そうですよっ!破壊ならわたしに任せてください!どんな物でもドーンと壊せる自信がありますよ!」
銀河「………………」
二人が励ますが、銀河は暗い顔をしたままだ
朱祢「何か不満なんですか?」
銀河「……壊すのはおれでも出来る……でも…問題なのは被害が出ないようにすることだ…」
雪「! …たしかに……」
ことみ「藍さんと黄慈さんが出ていってしまったのが痛いわね……せめてあのどちらかが残ってくれたら……」
銀河「…そうなんだよなぁ……重力を操る黄慈さんか、圧力を操れる藍さんがいてくれれば…完璧に被害を0に出来たかもしれないのに………」
「「……………………」」
銀河「まぁ、ごちゃごちゃ言ってても仕方がねぇ。皆、作戦を考えよう!それで、どうすれば被害を最小限に抑えられるかを考えるんだ!」
「「おー!」」
*
作戦を考えた一行は、翌日準備を整えクラウン破壊へと出撃した
銀河「まずは一番近いところからだ。…作戦通り、おれの能力でおれ達はヴィランの見た目に見えてるはずだから少し時間をかけながらクラウンを攻撃する。…それで少しでも多くの人が避難してくれればいいんだが…………っ!!あれは…!!」
スタッ…!
と、ビルの屋上に着地する五人。
そこに待っていたのは…
虎羽「待っていましたよ…銀河さん……」
銀河「虎羽…お前…どうしてここに……」
虎羽「…決まってるじゃないですか……バディさんに頼まれて、あなた達を阻止しに来たんですよ…」
銀河「…戦うつもりなのか……?」
虎羽「…えぇ……それが…ボクにとって…ヒーローの取る行動だからです…!」
ボッ!! 炎を纏って変身する虎羽
銀河「……おれ達……仲間じゃなかったのかよ……」
虎羽「…………ボクも……仲間だと思っていました……」
……スッ……
虎羽は拳を構える
銀河「…くっ!」
朱祢「待って!…ここは私が引き受けます…」
銀河「朱祢ちゃん…」
朱祢「…たぶん虎羽くんが本気を出せば私たち全員を相手にしてもいくらでも時間稼ぎができる……それに……あまり追い詰めると最悪……………」
金一「銀ちゃん!ここは朱祢ちゃんに任せて他の場所に行こう!…せめて…他の場所だけは確実に……」
銀河「…あ…あぁ……分かった……皆行くぞ!」
虎羽「……いいんですか…全員でボクの相手をしなくて……」
朱祢「私たちの力じゃ、一人でも五人でも変わらないでしょ…」
虎羽「…そうですね……」
朱祢「まったく……この力を手に入れてから最悪なことばかり………せめて…私一人だけが持ってればこうはならなかったのに………」
ビシュゥン! 朱祢も変身し、スリングショットを構える
虎羽「…ボクを殺す気ですか…?」
朱祢「…えぇ……そのつもりで行かせてもらうわ…」
*
空を飛びながら移動する四人
海を越え、広大な平野を進んでいる時、雷鳴が轟いた
ピシャァアンッツ!!!!!!!!!!
銀河「!! ブラウン!!!」
強烈な蹴りがブラウンを襲い、一瞬にして地面へと叩き落された
ドカァアンッ!!!!!!
紫雲「やっぱり、この程度で倒せるわけないよね……」
ブラウン「……紫雲さんも、バディに頼まれたのか?」
ぱっぱと、砂埃を払うブラウン
紫雲「…あぁ……世界のためなんだ……許してくれ……」
ブラウン「…許すも何も…あんたのことを恨んでるわけじゃない……だが……」
ブワァァアアアッ!!!!!
暴風が吹き荒れ、金色の戦士が現れる
ゴールドローズ「こちらも退くつもりはない。本気でやるぞ」
バチィン!!!
ピンクローズ「…あぁ……僕も…手加減するつもりはない…!!」
銀河「クソっ!ブラウンまで……」
金一「考えてる場合じゃないかも…早くしないとまた…」
雪「きゃっ!」
金一「!?」
銀河「雪ちゃん!」
突然闇に包まれ、どこかへ消えてしまう雪
雪「びっくりしたぁ……ここは…?」
みどり「なんか、一人ずつ相手にするって流れだからあたしの相手になってもらうよ」
雪「…………みどりさん………」
みどり「……そんな悲しい顔しないでってば………はぁ……あたし、どっちの役もやりたくなかったのに………」
*
二つ目のクラウンの元へと到着した銀河と金一
しかし、そこには…
銀河「…くそっ…やっぱりかよ……」
藍「レディに向かって、そんな言葉を吐くなんて…礼儀がなっていないようね」
金一「藍さんまで……」
藍「………諦めなさい……バディさんとやらも言っていたではありませんの…気に病むことはないと……」
銀河「………おれはな…小さい頃テレビで見た、パンを配ってるヒーローに憧れて、ヒーローになったんだ……」
藍「……………」
銀河「…ヒーローってのは諦めない。ヒーローってのは全てを救ってくれるもんだ。おれはその理想に、手を伸ばす…!」
藍「…そんな綺麗ごと…フィクションの中にしかありませんわよ」
銀河「…分かってる……それでもおれは、正義の光から目を逸らしたくない…」
藍「……ふふふ………ずいぶんおめでたい目と頭をしていることですわね………。星の輝きが、何故あんなにも優しいと感じるか分かるかしら?」
銀河「…さぁな」
藍「…程よく距離が離れていて…光以外の部分も同時に見えているからよ。」
銀河「何が言いたい?」
藍「貴方が見ようとしている正義の光…そんなものは所詮、身を焼き滅ぼす劫火の煌めきに過ぎないということよ…!」
シュピィン…! 刀を抜き、変身する藍
藍「近づけば近づくほど苦しむことになると、身を以って分からせてあげましょうか…?」
銀河も戦闘態勢に入ろうとするが、それを金一が止める
金一「…行ってよ、銀ちゃん…ここは僕が相手をするよ……」
藍「あら?貴方が戦うのかしら?」
銀河「でも……」
金一「僕の能力なら、藍さんを止められる……でも…きっと二人ともただじゃ済まない…ここはもう諦めるしかないと思う。だから…あとは任せるよ……スピードじゃもう他の場所は間に合わない…それに…
銀河「!…金一さん……」
金一「なんとなくだけど…世界を救えるヒーローがいるのだとしたら…君しかいないと思うんだ…信じてるよ、銀ちゃん。…さぁ!ほら早く!」
銀河「くっ……分かりました!」
シュンッ! 光となって消える銀河
藍「…犠牲の無い世界なんて、あり得るわけないでしょうに………」
金一「ふぅ……」
藍「…あら、あれほど啖呵を切っておいて降参するつもりかしら?」
金一「…いや…もう最善は尽くせたから……」
藍「!」
藍の周りは冷気が漂っており、空間ごと固まっているようであった
金一「そのまま固まってくれるのなら、あれを壊しに行けるんだけど……」
藍「ふん」
ビタァ……!
空気の壁に閉じ込められる金一
金一「まぁ…そうなるよね……」
藍「貴方との決着はつきませんが…勝負はわたくしの勝ちですわね」
金一「……………」
*
ピィン! 光速で移動し、最も遠いクラウンの近くまで来た銀河
銀河「………………………」
桃華「銀河さま」
銀河「うわぁ!?って桃華ちゃんか……速いな……」
桃華「銀河さまなら一番遠いクラウンから破壊を開始すると思いました。」
銀河「予想通りってか…」
桃華「はい……」
銀河「…下手なことは考えない方がいい。…桃華ちゃん、悪いが君はバラレンジャーの中でも最弱だ。…ぶっちぎりのな。おれに勝てないことだって、計算で分かるだろ?」
銀河は光のエネルギーで作り出した槍を桃華へと向ける
桃華「はい………ですが……ワタシには、バディさまの考えが正しいとしか計算できません……」
銀河「…!!」
桃華の背後に立つ、一回りデカイロボットが腕についたミサイルを街へと向ける。
銀河「やめろ……」
桃華「銀河さまがワタシを止めないというのなら……ワタシは出来る限り、シミュレーションと同様の結果になるよう、破壊活動を続けます………」
銀河「……………………」
桃華「………………っ…!」
桃華がロボットを操作する瞬間……
ゴシャァッ!!!
桃華「がっ…!」
桃華のコアが槍で貫かれる
銀河「……なんでだよ………クソッ…………」
桃華「……ぎ…んが……さま………………ありが………………………
完全に動きを停止させた桃華をそっと地面へ寝かせる
銀河「……やりたくないなら……そうすればよかったじゃねぇかよ…………!!なんで計算の方に従うんだよ………………」
再び、クラウンを見上げる銀河
ピィン!と空中へ移動し、槍を突き刺してみる
ガンッ!!!
銀河「クソォ!!!くっ…!!!くそくそくそくそぉおおお!!!!!」
地面に戻り、空へと叫ぶ
銀河(ダメだ……おれだけの力であれをぶっ壊そうと思ったら…衝撃波で下の街なんて壊滅しちまう……おれ一人じゃダメだ……。…いや…バラレンジャーの内、誰か一人でも反対意見の奴がいたら駄目なんだ…!……全員が揃ってないと、世界を救うなんて…できなかったんだ………)
「ちっくしょぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」




