①憤怒しながら雨に叫べば
脂肪には、体にいらないものまで溜まることがあるらしい。
痩せれば、そこに溜まっていたものまで体の中を巡ることがあるという。
健康とは紙一重だ。
揚げ菓子の封を開けると、ついつい食べ尽くす。
止まらないのである。
ただ、いつかはなくなる。
後悔とともに、脂肪が体に溜まる。
それでも、袋の中身は有限だ。
いつかなくなる。
今日、裏切られた。
他愛ないことだ。
だが、怒りが収まらない。
怒りや悲しみが湧き出てくる。
感情の封を一度開ければ、仄暗い感情は止まらない。
何度も何度も袋に手を入れる。
後悔しながら、それでも食べることをやめられない。
見えないこと、知らないことまで想像する。
そうすると、また袋の中に感情が溜まる。
食べても減らない。
底の見えない袋に手を入れ、また食べる。
やめられない。
胸焼けのように不安が腹の中を満たす。
いつも見る窓の外の風景すら、私を笑い、蔑んでいるように感じる。
なぜ、生まれてきてしまったのだろうか。
その辺まで来ると、そろそろ感情の底だ。
底に触れて、もう何もないことを確認しないと止められない。
タバコをうまく取り出せない。
むかつく。
ライターの調子が悪い。
むかつく。
風が強い。
むかつく。
むかつく。
むかつく。
このむかつきも、いつかは脂肪になる。
そして忘れ去られる。
それでいい。
だが、溜まった脂肪はどうするべきか。
恨み辛みを湛えた、この脂肪をどうするか。
走ればいい。
泳げばいい。
叫べばいい。
溶かせば体を巡る。
ならば、燃やせばいい。
私は橋に差しかかった。
腹のあたりを擦る。
溜まった感情が、内側から突き破ろうとしていた。
眼下の川を見る。
何もない。
真っ暗だ。
周りには誰もいない。
不幸なことに。
そして幸いなことに、誰もいないのだ。
私は雨の中で傘を閉じた。
なぜ、生まれてきてしまったのだろうか。
誰のためだったのか。
何のためだったのか。
私は叫んだ。
言葉ですらなかった。
傘を振り回した。
何度か振り回すうちに、骨が折れた。
そのまま川へ投げ込んだ。
雨が降っている。
このむかつく雨の中で、
私は雨にむかついた。
俺を濡らしていいと思ってるのか。
雨ごときが。
いいだろう。
走ってやる。
落ちてくる雨より速く。
濡れないくらい速く。
燃やして、燃やして、全部燃やし尽くして、家まで帰ってやる。
全部、川のせいだ。
全部、雨のせいだ。
そういうことにしてやる。
明日にはシラフに戻ってやる。
出先の仕事で雨宿りをしていたところ、不思議な人を見かけたので。
あとはだいたい嘘です。




