やって来た援軍
本日、『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』原作ベースのコミカライズがシーモア様で先行配信となっております!
コミックは『卯月澪』先生が担当されており、今のところ単話で1話~3話迄が配信されております。
キャラクターが生き生きと動いていて、何よりとてもエレノアが可愛らしく、読んでいて思わず笑いが出る程素敵な作品に仕上がっております。興味を持たれた方は、是非見てみてくださいね!
――こ、この声は……!!
「イーサン!?」
「はい、お嬢様。お嬢様の危機と伺い、僭越ながら参上仕りました」
まるで空間から染み出てきたようにその場に現れたイーサンは、眼鏡のフレームを指クイした後、驚きの声を上げた私に向かって、家令として満点の優雅な礼を執った。
いや、ちょっと待ってイーサン!私が危機だって事を、一体誰から伺ったんだ!?
「……エレノア。言っておくけど、僕はまだ呼んでいないからね」
マロウ先生が学院長先生を護りながら退避し、ヒューさんがゼンと一触即発状態で睨み合う中。フィン様が憮然とした表情でこちらに声をかけた。
えっ!?フィン様、呼んでいなかったんですか!?では一体、どうやってイーサンはこちらに!?
「……ちょっと、君。ひょっとして僕の魔力に糸を付けていた?」
「ええ。流石はフィンレー殿下、ご明察です」
「ええええっ!?」
なんと!イーサン、あのフィン様に気が付かれないように魔力を繋げていたの!?さ、流石はフィン様に「僕より魔力量は少なくても、彼の実戦経験と魔力操作の力量はそれを補って余りある。本気でやり合ったら、多分良い線行くんじゃない?」と言わしめた男!!
その時、覇気と刃同士がぶつかる激しい音にハッとする。
慌てて振り向いてみれば、ゼンとヒューさんが互いに飛びずさって距離を取っていた。
「あっ!!」
ヒューさんの腕から血が滴っている!ゼンの方は……ダメージは無さそうだ。ヒューさんは鎧を付けていないからハンデはあるだろうけど、それでもあのヒューさんに傷を負わせるなんて……!!
「イーサン。……成る程。貴様があのイーサン・ホールか」
ゼンの口から、低い声があがった。
意識がこちらに向いているにも拘わらず、ヒューさんやマロウ先生達に攻め込む隙を与えず、しかもアシュル様に『魔眼』を抑えられてなお、噴き上がる覇気は一向に衰えを見せない。そんな彼と視線を合わせながら、イーサンは再び眼鏡のフレームに手を当てた。
「おや?私の名をご存じでしたか?」
「この帝国の騎士であれば、貴様の名を知らぬ者はいない」
「それはそれは。そこまで私を買ってくださっているとは。長年地道に活動してきた甲斐があったというものです」
……そういえばイーサンって、赤ん坊だった私と引き離された鬱憤晴らしに、帝国でかなりやんちゃをしていたってティルが言っていたな。
アイザック父様も、「イーサンはね、帝国の『絶対滅したい人物一覧』通称『絶滅一覧』の最上位者に君臨しているんだよ」って、遠い目をしながら言っていたっけ。というか、前世での絶滅の意味合いが悪い意味で違う!
「成る程。貴様がここに来たという事は、第三王子の代わり……という事か」
ゼンは己の大剣の先を、ピタリとイーサンへと向けた。
「確かに『闇』の魔力は、『鎮静』に特化しているがゆえに、周囲の者達を『魔眼』による魔力汚染から守る事が出来る。しかも、使いようによっては『魔眼』を根本から浄化する猛毒ともなり得る恐ろしい魔力属性だ。……だが」
互いに無表情なまま、視線を合わせていたゼンの口角が僅かに上がった。
「その『毒』は、『光』の魔力と違って遅効性だ。『闇』の魔力の使い手とは言え、このような場に貴様一人がいたとして、王太子達の代わりは務まるまい」
「……ッ……!」
ゼンの的確な指摘に、思わず唇を噛み締める。
実際、今私達がこうしていられるのは、アシュル様とフィン様が『光』と『闇』の魔力を使って、この場の帝国人達の『魔眼』を無効化しているからだ。
イーサンは確かに『闇』の魔力をフィン様並みに操れるけど、お二人の代役を務めたり、ましてや『黒騎士』と渡り合うなど不可能に近いだろう。
けれども、ゼンの指摘を黙って聞いていたイーサンからは、焦りや怒りといった感情が一切伝わってこなかった。
「ええ。確かに私一人ではこの場にいる方々の代わりには到底なれません。……ですからこれより、代わりとなる方々をお呼びいたします」
「何!?」
そうイーサンが宣言した直後、『闇』の魔力が漆黒の空間……すなわち『転移門』が姿を現した。
「オリヴァー様」
「ああ」
すかさず、オリヴァー兄様が私達の周囲に新たなる防御結界を張った。……そう。あの殺傷力百パーセントの超えげつないやつです。さっきまでは、ネイハム達による『魔眼』の多重攻撃によって、幾度も破壊されてしまっていたんだけど……。
「うん。今はアシュル殿下やフィンレー殿下のおかげで、殆どの『魔眼』は使えなくなっている。だから、暫くの間は保つだろう」
オリヴァー兄様のお言葉の通り、あのゼンも剣は構えているものの、様子を窺っているのか攻撃をしてこない。
「よっ!わりと呼ばれんの早かったな!」
「アシュル兄上!フィン兄上!ご無事でしたか!?」
転移門の中から最初に出てきたのは、ディーさんとリアムで、アシュル様とフィン様が大きく目を見開いた。
「ディラン!!」
「リアム!?来ちゃったんだ!!」
ディーさんはすぐにゼンに気が付くと、一瞬見た事も無い程鋭く険しい表情を浮かべた。リアムもディーさんと同様、ゼンに向けて殺気を放つ。
そして、彼らの次に出て来たのは……。
「エレノア!そして、オリヴァー兄上!クライヴ兄上!よくぞご無事で!!」
「セドリック!!」
セドリックは、まずオリヴァー兄様に抱かかえられている私に視線を向けた後、オリヴァー兄様とクライヴ兄様を目にしてホッとした表情を浮かべた。
だがしかし。セドリックの次に出て来たのは、予想もしていなかった超意外な人物だった。
「アーウィン兄上!シーヴァー兄上!」
「なっ!ベティ!?」
「ベティ!!なんでここに!?」
本当だよ!!なんでベネディクト君が!?
ベネディクト君の登場に驚愕していたアーウィン様とシーヴァー様だったが、その一瞬後。シーヴァー様がイーサンに怒気を孕んだ鋭い視線を投げつけた。
「……まさかとは思うがイーサン。お前、『光』の魔力の代わりとして、精霊の力が使えるベティを無理矢理こちらに連れてきたのか!?」
ブチ切れているシーヴァー様の発言に、ハッとする。
『そうだ!精霊の持つ魔力は『光』の魔力と同様、『聖魔力』だから、邪悪な力に対抗出来るんだ!!』
という事はイーサン。まさか本当にベネディクト君を無理矢理こっちに連れて来たんじゃ……。
「落ち着いてくださいシーヴァー様。ベネディクト様がこちらにいらっしゃったのは、あくまでご本人の意思によるものです。それに、セイレーン様もこの事は承知しておられます」
「な……っ!?馬鹿な!母上がそんな事を!?」
『えっ!?奥方様が!?』
確かに、あの奥方様だったら、「ベティを行かせるぐらいなら私が行くわ!!」って言って、イーサンの背中に貼り付くぐらいしそうなんだけど。
「……シーヴァー兄上。確かに最初の内は母上も止めましたけど、最終的には認めてくださいました」
「――ッ!?母上が……そんな……!!」
ショックを受けたようなシーヴァー様に代わり、アーウィン様が真剣な表情を浮かべながら、ベネディクト君の両肩に手を置く。
「ベティ、確かにお前は次代セイレーンとして、精霊力を操れる。だが、実戦経験の乏しいお前がこの場にいても、一瞬でも隙を見せたその瞬間、嬲り殺されてしまうだろう。……だから、今からでもあちらに戻れ。そして代わりに母上を……」
「嫌です!!」
「ベティ!!」
「……アーウィン兄上、シーヴァー兄上。確かに今の俺は実戦経験が浅い未熟者です。でも、それを理由に戦いを避けるのは、もう嫌なんです!!」
「……ベティ……」
「俺の精霊力は、アシュル王太子の足元にも及びません。ですがそれでも、力になれる筈です!!俺だってアルバ王国を……大切な人達を護る為に戦いたいんだ!!」
ベネディクト君の真っすぐな決意を前に、アーウィン様とシーヴァー様が沈黙する。きっと奥方様にも、こんな感じに訴えたんだろう。
『そうだよね、ベネディクト君。大好きな人達が傷付いているのを見ながら、自分だけ守られているのって苦しいよね』
ましてや自分に力があって、その力が大切な人達を護る為の役に立てるかもしれないってなったら、そりゃあアルバ王国の男子なら奮い立つだろう。実際、セドリックやリアム、そしてマテオといったアオハル組も、ベネディクト君の決意を聞いて、『その気持ち、分かるぞ!』って顔で力強く頷いているしね。
「話は終ったか?」
「――ッ!!」
唐突に、刃が喉元に突き付けられたかのような冷たい声が耳元に届き、ゾクリ……と全身の皮膚が粟立つ。それと同時に、オリヴァー兄様の結界に凄まじい衝撃が襲い掛かったのだった。
イーサン、帝国にとっての絶許人物だったもよう。
※コミカライズについての詳しい説明は活動報告をご覧ください。
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