私も頑張ります!
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発売中です。
そして、『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』原作ベースのコミカライズがシーモア様で先行配信となっております!
コミックは『卯月澪』先生が担当されており、今のところ単話で1話~3話迄が配信されております。
キャラクターが生き生きと動いていて、何よりとてもエレノアが可愛らしく、読んでいて思わず笑いが出る程素敵な作品に仕上がっております。興味を持たれた方は、是非見てみてくださいね!
「きゃぁっ!!」
あまりの衝撃に、思わず悲鳴を上げてしまう。……が、先程までと違い、衝撃波を食らった結界からは、閃光と共に様々な色彩が火花となって周囲に散っているものの、目立った破損個所は見受けられなかった。
「……ここまでの防御力……。流石は『術式においては他の追随を許さぬ』と世に謳われしクロス一族の直系。しかも結界を作り上げる度、込める魔力の精度が増しているようだ」
眉根を寄せながら、そう口にした後。ゼンは結界から距離を取った。というか、メル父様が『天災級』と言われているのは知っていたけど、クロス伯爵家自体も有名だったんだね!
それにオリヴァー兄様の防御結界。えげつないだけではなく、術式展開する度に進化していっているのか。流石はメル父様の資質を全て継いだと言われている天災……じゃなくて天才だね!
「有難う、エレノア。どうやら物理的な攻撃にはなんとかなりそうだ。……でも、最上級レベルの『魔眼』には不覚を取ってしまったけれどもね」
「それは……!」
「いや、いいんだ。僕もまだ修行が足らないと思い知ったよ。……だからこそ」
ギラリと、兄様の目が鈍い光を放った。
「結界を壊されるたび、術式の分解、構築を徹底し続ける事にしたんだ!いずれは相手の特性と攻撃性を瞬時に察知し、自動的に攻撃を行う結界を張れるようにする!!」
「え、ええっ!?」
自動的に攻撃する結界!?それって結界という名のナニかでは!?おおっ!気が付いてみれば、黒曜石のようだった兄様の瞳が、ピジョンブラッドルビーのような深紅になっている!!
「……物理攻撃に対し、鉄壁と言える防御結界か。ならば、破れるまで攻撃し続けるまでだ!!」
言い終わると同時に、ゼンが目にも止まらぬ速さで斬撃を繰り出し、轟音と衝撃が立て続けに結界に浴びせられる。こちらに届かないと分かってはいても、恐くて身が竦んでしまう。
『……ん?え?あれっ!?』
すると、轟音の方はすぐに聞こえなくなった。どうやらオリヴァー兄様が結界に防音を施したらしい。……うん。衝撃はそのままだけど、音が無くなっただけでも恐さが和らぎます。有難う兄様!
「……『魔眼』も無しに、この凄まじい攻撃力。オリヴァーの言っていた通り、ブランシュ・ボスワースと同等かそれ以上だ。このうえ、奴の『魔眼』が使えるようになったらと思うとゾッとするな」
クライヴ兄様が、険しい表情を浮かべながら閃光と火花が飛び交う結界を睨み付け、舌打ちする。
「ええ。ですので結界が無事である今のうちに、皆様方は『邪神』の元に向かってください」
結界内にいた全ての人達が、一斉にイーサンの方を振り返った。
その落ち着き払った表情と態度を目にした瞬間、胸が激しく騒めく。……やっぱり、私達の代わりにここに残るつもりなのか。でも、あんな化け物レベルの騎士と、『魔眼』持ちの上級貴族、そして護衛騎士達がいるこの場に残るなんて、自殺行為でしかないじゃないか。
オリヴァー兄様やクライヴ兄様も私と同じ事を考えているのか、共に険しい表情を浮かべている。
「イーサン……!!」
胸の奥から湧き上がってくる不安感に目頭が熱くなり、思わず声を上げてしまう。そんな私を見つめるイーサンの眉間のシワが一気に増えた。
「エレノアお嬢様。私はお嬢様が女神様の御許に旅立たれるその日まで、お嬢様と共におります。ええ、これは揺るぎなき決定事項です。ですので、この場で死ぬ予定は全くもって御座いません。どうぞご安心くださいませ」
「……そ、そう。決定事項なんだ……」
いつものイーサン節に、思わず涙が引っ込んでしまった。周囲の人達も、生温かい視線をイーサンに向けている。
でもさ、イーサン。私、たくさんの孫に囲まれた大往生を狙っているんだけど、その時イーサン幾つなんでしょうかね?以前、ジョゼフも同じような事を言っていたんだけど、ひょっとしてイーサンも仙人になるつもりなのかな?
そんな私の心のツッコミと、周囲のジト目を意に介する事無く、イーサンは眼鏡のフレームを指クイしながら、再び口を開いた。
「アシュル王太子殿下がこの場にかけた『光』の魔力。それを維持及び強化し続けるお役をベネディクト様が。そして僭越ながら、ベネディクト様の補佐を私が務めさせていただきます。……そして、あの『黒騎士』の相手ですが……」
「当然、俺だな」
「ディーさん!?」
まるで初めから決まっていたかのように、ディーさんが速攻で名乗りを上げる。
慌ててオリヴァー兄様の顔を見上げると、厳しい表情を浮かべてはいるものの、驚いた様子は無い。周囲を見回してみても、動揺しているのは私だけのようだった。
「ディラン。……まさかとは思うが、お前一人であいつとやる気か?」
アシュル様の表情。一見冷静そうに見えるけど、物凄く心配しているのが分かる。リアムは唇を思い切り噛み締めているし、フィン様に至っては、物凄く不安そうなしかめっ面になっちゃっている。
「ああ。……と言いたいところではあるが、悔しいが俺一人であいつと渡り合うのは流石に無理だな」
「ディラン殿下。ならば私が共に……」
すかさず、ヒューさんが名乗りを上げようとする。……が、その前にアーウィン様とジルベスタ様が共に手を上げた。
「いや、私がディラン殿下の補佐に付こう」
「では、私も共に闘わせていただきましょう」
「アーウィン!?ジルベスタ!?」
突然の共闘宣言に、私のみならずディーさんも驚きの表情を浮かべた。
「……良いのかお前ら?『大地』の聖女の護衛なんていう、アルバ王国の男にとっての最高の誉れから外れ、こんな野郎の下につくなんざ」
いやいやディーさん!『こんな野郎』って言ってますけど、貴方、アルバ王国の第二王子なんですからね!?
「ふ……。アルバの男として、強大な敵を前に勇気を持って立ち上がった愛しい弟を置いては行けませんからね。それに……」
アーウィン様とジルベスタ様、そしてシーヴァー様がその場に片膝を突くと、ディーさんに向け、貴族の最高礼を執った。あっ!ベネディクト君もお兄様達に倣って片膝を突いている。
「我ら三大公爵家は王家を守護する『盾』であり『鉾』。主君たる貴方様と共に闘い、この身に代えても御身をお守りいたします」
「……そなたらの忠義と献身に対し、俺も持てる力を存分に振るい、報いる事をここに誓おう」
普段の陽気な態度を脱ぎ捨てたディーさんは、王家直系に相応しい堂々とした態度と口調でアーウィン様方の決意に応えた。
クライヴ兄様も感じ入ったようにその光景を見つめながら、「普段もああだったらいいんだが……」と呟いている。あ!ヒューさんも同意するようにコクコクと頷いているよ。酷っ!!
でもね、兄様。ああいった威風堂々とした態度も素敵ですが、私としては、夏の太陽のように陽気で溌剌としたディーさんの方が好きです。
「それに……。確かに我らが『大地』の聖女をお守り出来ないのは残念ですが、我らの代わりの守護者も、ここに来ていましたしね」
そう言うと、アーウィン様はセドリックとリアムの方へと視線を向けた。
「……はい!皆様方の代わりに、エレノアは必ずや私達が守り抜きます!!」
「ああ。未だ若輩の身なれど、ディラン兄上とそなたらに恥じぬよう、全力を尽くす事をこの場で誓う!!」
「ご安心ください。バッシュ公爵令嬢もリアム殿下も、ワイアット公爵家の名にかけて、この身に代えてでも私がお守りいたします!」
セドリックとリアム、そしてマテオが決意を込めた表情を浮かべながら、力強く宣言する。そんな二人の姿を見ていたディーさんやアシュル様方、そして兄様方が、眩しいものを見るような表情で微笑んだ。
あ、よく見てみると、アーウィン様方やヒューさん達も同じような表情を浮かべている。アルバの男性って、兄弟愛がめっちゃ深い……というか、頑張ろうと必死に背伸びしている年下の子が大好きだよね。
「……エル」
「――ッ!ディーさん……!!」
ディーさんが私の方へと近付いてくると、オリヴァー兄様は何も言わず、その場に私を下ろした。
「……あの……ディーさん……」
言葉を続ける事が出来ず、ギュッとスカートの生地を握りしめる。
アシュル様の『光』の魔力の効果は残る。そして、その効果を使い、『魔眼』の力を根底から消失しようとしていた『闇』の魔力の残滓も。
それらをイーサンとベネディクト君が引き継ぐ事により、『魔眼』の力は完璧に封じられずとも激減させられるのだろう。
でも、ディーさん達が相手にするのは、オリヴァー兄様の結界を破壊できる程の力を持つ『魔眼』持ち達。そして、ボスワース元辺境伯と同等と言わしめた化け物レベルの騎士だ。
今だって、ゼンの斬撃により結界の外は閃光と火花が散っている。しかも、先程まで微動だにしていなかった結界が、時折軋むような音を発するようになっているのだ。
数千年に及ぶ諍いの元凶であり、この世界に暗雲をもたらす『邪神』の元に向かうのと、この場に残り戦う事。どちらも命の危険と隣り合わせだ。
だから……。この場にディーさん達を残していく私達と、私達を『邪神』の元へと送り出すディーさん達。どちらが辛いなんて一概には言えない。
それでももし、この場に残った人達と……ディーさんに何かあったら……!!
『もう、時間が無い。早く、何か言わなきゃ……!』
でも焦れば焦る程、言葉が喉につかえて出てこない。私が言葉に詰まっている間にも、邪神の元に餌となる『負』の感情が雪崩れ込む時が刻一刻と近付いてきているというのに。
「……あ、あの……デ……うひゃっ!!」
突然の浮遊感に悲鳴を上げる。気が付けば私は見下ろす形でディーさんと見つめ合っていた。
「俺のエル。……お前をこの手で守ってやれなくて、済まない」
「ディーさん……!」
――そんな事無い!ディーさんは私達を……ひいてはこの世界を護る為にこの場に残るんだから!
眉を下げ、切なそうな表情を浮かべるディーさんに向かって、私は大きく首を横に振った。そんな私の声なき声を受け取ったディーさんが、抱き上げていた私を片腕抱きにし、真剣な表情を浮かべた。
「だから、約束する。俺は必ず生き残る!他の連中も誰一人として死なせはしない!!」
「――ッ!!」
告げられた言葉に、目の奥がジワリと熱くなった。
零れそうになった涙を、ギュッと奥歯を噛み締め堪え、無理矢理笑顔を作ると、震える唇を開く。
「……はい、頑張ってください!私も……頑張りますから!絶対後で元気に会いましょう!約束です!!」
「ああ!言っとくけど、アルバの男は惚れた女との約束は死んでも守るぞ!」
「し、死なないでください!!」
ディーさんは咄嗟に出た私の言葉に、「ははっ!」と笑いながら、ごく自然に私に口付ける。
勿論場所が場所だし一刻を争う状態だから、いつもと違って唇を合わせるだけのキスだったけど……。今ので、ディーさんと私が婚約者だって知らなかった人には、確実にバレたな。
チラ見したけど、やっぱりというかジルベスタ様が目を見開いている。ひょっとして、お父様から私達の婚約の事を聞いていなかったのかな?
「……アーウィン。そうじゃないかと疑ってはいたが、やはり……!」
あ、やっぱり聞いていなかったみたいだ。でも、察してはいたんですね。
「ああ。俺達は知っていたんだが……。まあ、ほぼ公然の秘密っぽかったしな」
お二人のヒソヒソ声が聞こえてくる。というか音量が全然潜んでいない。
「……ここで殿下が殉職なされたら、枠が一つ空くかな?」
「分からん。……が、可能性はある」
ジルベスタ様!アーウィン様!あなた方って確か、王家の盾と鉾ですよね!?さっきまでの忠義心溢れる美しい主従のやり取りは一体どこに!?
「てめぇら……!!」
あっ!ディーさんのこめかみに青筋が立ったー!!お、落ち着いてくださいディーさん!あれってばお二人なりの場を和ませる冗談だと思いますから!!……って、ちょっとオリヴァー兄様!「いや、あれは本気だと思う」って言いながら首を横に振らないでー!!
ひょんなところから、イーサンとジョゼフの血の繋がりを発見!
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