戦いの火蓋
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻及び、ジュニア文庫2巻も発売中です。コミカライズ企画も進行中。よろしくお願い致します!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
「では、これより『邪神』と帝国皇帝がいるであろう、『黒城』本殿へと向かう!」
アシュル様の号令と同時に、奥方様の身体から青銀の『精霊力』が噴き上る。すると、何と大聖堂の壁の一部が扉のような形へと変化したのだった。
「よし。これで、外への通路が確保されたわよ!」
うわぁ……!これぞファンタジーの世界!!
「……本当は『邪神』に壊された場所から外に出ようかと思ったんだけど、エレノアのおかげで破損部分がほぼ修復されて、出入り口まで塞がっちゃったからね」
キラキラと感動している私の横で、アシュル様がそう言いながら苦笑する。私は「あわわ!す、済みません!!」と、慌てて謝った。
実は、アーウィン様に付与する用のペンポポスミレを生やそうとして、うっかり小人な私を生み出してしまったあの後。
「自分達にも同じものを!」という周囲の圧に屈し、再び小人を出そうとしたんだけど、出るのは大量のペンポポスミレのみ。
「エレノア!もういいから!!」という、アシュル様の悲鳴のような声に強制終了と相成りました。
どうやらあの小人は、絶体絶命の危機的状況と特殊な状況下において顕現する、お助けキャラ的なものらしい。……成る程。この場の重傷者は、ほぼペンポポスミレによって回復しているからなぁ。
「あの時、『邪神』に足の一本……いや、腹でも貫かれていれば!!」って、ディーさんが本気で悔しがっていたんだけれども、もしそうなっていたとしたら小人が出るのではなく、普通に花人形になっていただけだと思いますよ?
――話を元に戻します。
そんな訳で、私が頑張った結果。大量にワサワサ咲かせてしまったペンポポスミレが、「怪我人を癒す代わりに」とばかりに、破損しまくっていた大聖堂を癒してしまったという訳なんです。凄いぞペンポポスミレ!!
……まあ、それだけなら感動で終わっていたんだけど……。
アホな事に、ペンポポスミレは扉という扉までをも『修復』という名の元に壁と癒着させてしまい、扉はただのオブジェに……。結果、出入り口が無くなってしまい、奥方様が魔法で扉を作る羽目になったという訳なんです。皆様、誠にご迷惑をおかけしました。
しかし、ペンポポスミレ……。よもやの無機物修復機能にまで目覚めてしまうとは!これぞまさしく、チート能力!?私の中でシックスセンスが目覚めたのか!?
「いや、エレノア。多分それって、王立学院だからこそ出来た荒業だと思うよ?」
中二病的思考になりかけた私に、オリヴァー兄様が冷静にツッコんでくる。
「はい?王立学院だから……ですか?」
「うん。実はね……」
オリヴァー兄様曰く、王立学院の建物には魔鉱石が多く使われていて、それが長い年月を経て様々な魔力を吸収していった結果、魔石のような力を持つに至ったんだそうだ。
「だからこそ、エレノアが付与したペンポポスミレの力を取り込み、自己修復する事が出来たんだろうね」との事。な、成る程。
更には魔石のような性質を持つがゆえに、奥方様の『精霊力』に呼応し、形を変える事が出来たのだそうだ。……つまり、チートだったのは私の力ではなく、王立学院そのものだったというオチでした。
「アーウィン兄上!シーヴァー兄上!どうか、お気をつけて……!!」
「アーウィン、そしてシーヴァー。お願いだから、無事に私の元に帰って来てね!!」
「はい、母上。……ベネディクト。必ず帰ってくるから、母上と一緒に待っていてくれ」
「母上。どうか、可愛いベネディクトをよろしくお願い致します」
奥方様とベネディクト君が、アーウィン様とシーヴァー様と涙の抱擁を交わしている……かと思いきや、ベネディクト君が抱擁しているのは、小人な私でした。
しかもアーウィン様同様、物凄く嬉しそうに頬ずりしている。奥方様も「やーん!本当に可愛いっ!!孫がいたらこんな感じかしらっ♡♡」って言いながら、ヒレで小人な私の頭を撫でているではありませんか。
シーヴァー様も、いつものお色気全開な麗しい微笑ではなく、輝くような満面の笑顔で、ベネディクト君ごと小人な私を抱擁しています。……なんというか、肉親同士の感動のシーンが台無し!!
あっ!シーヴァー様が、どさくさ紛れに小人な私のほっぺにキスしている!!しかも、ベネディクト君までもが負けじとキスをしているではないか!!さ、流石に小人な私も恥じら……ってない!!やっぱりニッコニコしている!!なんという事だ……!!もしあの場にいるのが私だったとしたら、確実に憤死している!!
姿形は私のミニチュアバージョンだと言うのに、メンタルと鼻腔内毛細血管が猛者のソレ!!というか、元は私の魔力だというのに、私よりもアルバ女子らしいとは……!!『大地』の魔力……。なんて恐ろしいんだ……!!
「あー、はいはい、そこまで!!君達、名残惜しいのは分かるが、時間は待ってくれないんだぞ!?」
そんなヴァンドーム一家に対し、でっかい青筋を立てたアシュル様が声をかける。
「もうっ!アシュル君たら野暮ね!」
って言いながら、奥方様がベネディクト君と一緒にアーウィン様方から……ではなく、小人な私から名残惜しそうに離れた。
というか奥方様。アシュル様だけでなく、その場の全員が青筋立てたブチ切れ寸前な表情をしているんですが?オリヴァー兄様も私をお姫様抱っこしているから何も言いませんでしたが、しっかり青筋立てていますからね?
ともかく、小人な私はアーウィン様へと戻された。……が、小人な私は抱き締めようとしたアーウィン様の手元をすり抜け、再び胸元にハッシと張り付く。
「えっ!?」
小人な私は、そのままアーウィン様の胸元から背中へとよじよじ移動すると、そこでビタッと張り付いた。アーウィン様が「こっちにおいで!」と言いながら、必死に剥がそうと手を伸ばしているんだけど、『梃子でも動かぬ!』とばかりにピッタリと張り付いている。
どうやら攻撃を受けた背面に『邪神』の毒素が多く残っていると踏み、そこで浄化していく事に決めたようだ。
「うぐっ!」「ぶはっ!!」と、あちこちから誰かの噴き出す声が聞こえてくる。
うん。確かにこの図って、背中にコミカルな立体パッチワークを張り付けているように見えるよね。正面から見たら分からないけど、背後から見たら爆笑案件に違いない。
ううむ……。これから死地に赴くというのに、果たしてこれで良いのだろうか。全くもって場違い感が半端ない。
「ふっ……くく……。よ、良かったな、アーウィン。これなら、両手が自由になるじゃないか」
ジルベスタ様が含み笑いをしながら、アーウィン様に肩ポムする。周囲の人達も、先程までの不機嫌顔が一変、笑うのを耐えるように身体を震わせている。それに対し、アーウィン様はというと、めっちゃ渋面。でも、身体は確実に楽になっているようで、顔色がどんどん良くなっている。
うん。確かにジルベスタ様の仰る通り、敵から攻撃を受けた時、小人な私を抱っこしていて手が使えなかったら本末転倒ですからね。アーウィン様、ジルベスタ様の言う通り、これで正解だと思いますよ?
というか小人な私。選ばれしDNAを持つアルバ男の顔面攻撃も笑顔でスルーした上に、「私の仕事は愛でられる事ではない!」とばかりにセルフ付与よろしく、自ら背中に張り付くとは……!
見た目によらぬ、そのストイックさと行動力。なんて素晴らしいんだ!本当に、(多分)自分の分身ながら完敗です!!そういや『嘆きの霊園』でも、掘削機使って土の魔素を一生懸命掘り出したり、『彼女達』からの攻撃をシャベル一本で果敢に防いでくれていたもんね。
アーウィン様の背中から視線を外し、肩を震わせていたアシュル様が、コホンと一つ咳ばらいをした後、表情を引き締めた。
それを合図に、フィン様、学院長様。そして、彼らと私を守護するべく随伴するオリヴァー兄様やクライヴ兄様、マテオやヒューさん、アーウィン様方が一斉にアシュル様に倣い、表情を引き締め魔力を滾らせる。
「大叔父上、先陣は任せます!」
「うむ!」
「騎士達は三分の一はこの場に残す!残りはヒューバード、マロウ、シーヴァーの傘下に下り、大叔父上と共に我らを守護せよ!!」
「「「「御意!!」」」」
「そして、その他の者達も……。我らが祖国と民の為。……そして、己が生涯かけて守るべきものの為に命を賭けよ!!だが犬死は許さん!全員、必ず生きて帰るぞ!!」
「「「「「御意!!」」」」」
扉が音も無く開いていく。
学院長様とヒューさん達が先陣を切って駆け出す。それに続き、アシュル様とフィン様、そして私を横抱きにしたオリヴァー兄様が駆け出すと、私達を守るように、クライヴ兄様、マテオ、アーウィン様、ジルベスタ様が追従した。
私達が大聖堂を飛び出したのと同時に、自己修復を果たし、強固な結界となっていた大聖堂に入れずにいた、帝国の騎士や暗部であろう刺客達が一斉に飛び掛かかる。
――戦いの火蓋が、再び切って落とされた。
『ミニノア=魔力の塊』ですので、誰もがその心地よさに抗えない(魔力ホッカイロ)。
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