ミニノア再び
今現在、新たなコミカライズ企画が進行しております!
始動時期とか詳細などは、追ってご報告いたしますので、皆様どうぞお楽しみに!
「アーウィン様!?」
つい先程まで、瀕死の状態だったアーウィン様がしっかりと自分の足で立っている……だと!?
いや、いくら私の『大地』の魔力で癒されたからって言っても、ちょっと回復早すぎませんかね!?
「エレノア。多分、君の中の『大地』の魔力の力が強くなった事により、人々を『癒す』スピードが速くなったんだと思うよ?実際、僕やイーサンが負った傷もすっかり癒えたし、後遺症もなくこうして立っていられるんだから」
「オリヴァー兄様」
「ああ、確かに。ヴァンドーム公爵領で花人形になった連中、アーウィン殿より軽傷だった奴でも、ほぼ一日あのままの状態だったが、例の夜会で似非聖女を癒した時は、数時間とかからず完治したしな」
「クライヴ兄様……」
そう言われて見れば、明らかに回復のスピードは上がっている気がする。というかクライヴ兄様、似非聖女って、言い方!!
「……尤も、お前達を助けてくれた異界の女神様の力が、この場に残っていたって可能性もあるが……」
クライヴ兄様の言葉に、オリヴァー兄様とイーサンが揃って頷いた。……そう言われてみれば、確かに。
――ここはまさに『邪神』がいる本拠地。
『嘆きの霊園』では、例の小人な私が土木工事しながら大地の魔素を掘り起さなければならなかったっていうのに、帝国の中で最も穢れた魔力で満ちている筈のこの場所で、私の『大地の魔力』があっという間に発動したのだ。そう考えると、天照大御神様の御業による恩寵は確かにあったのだろう。
「エレノア嬢」
「――!アーウィン様」
「……いや、『聖女』様。我が身への慈悲。心より感謝申し上げます」
穏やかな口調でそう言い放った後、アーウィン様は戸惑う私に向けて、貴族の最高礼を執った。そして顔を上げると、真剣な表情で私を……いや、私達を見つめる。
「力及ばず、死にかけた不甲斐なき我が身ではありますが、王太子殿下や『聖女』様の風除け程度にはなりましょう。是非私めにも『邪神』討伐への同行をお許しいただきたい」
アーウィン様が、力強く宣言した直後。私達が口を開く前に、悲鳴のような声がその場に響き渡った。
「アーウィン!!貴方、なにを言っているの!?」
「そうです、兄上!!殿下方と一緒に『邪神』の元に向かうなど、無謀過ぎです!!どうか今暫し、ここでご自身の回復に努めてください!!」
奥方様とベネディクト君が、血相を変えてアーウィン様に取り縋っている(奥方様は取り縋るというより、張り付いているんだけど)。そんな二人に向け、アーウィン様は安心させるように優しく微笑んだ。
「大丈夫。傷なら聖女様が癒してくださった。それに、死地とも言うべき場所に主君たる王族が向かうというのに、ヴァンドーム公爵家次期当主が付き従うどころか、何もせずにのうのうと休んでいるだなどと、三大公爵家の名折れだ」
「でも!!傷は癒えても、貴方はまだ……!!」
「母上。愛する祖国を守る為。そして、我が誉れを守る為。どうか、私の我儘をお許しください」
「――ッ……!!」
穏やかだけど、確固たる意志を込めて自分を見つめるアーウィン様に、奥方様は何も言えなくなってしまう。アーウィン様は、そんな奥方様を自分の胸から優しく剥がすと、そのままベネディクト君へと手渡した。
「アーウィン、無理をするな。確かに君の傷は、エレノアの御力により治ってはいる。……だが、たとえ『聖女』の魔力で傷は癒せたとしても、失った血は戻らない。実際、君の魔力は不安定だし、顔色も悪い。……『癒し』の力とて、万能ではないんだ」
アシュル様が、厳しい表情と口調でそう断ずる。でも、そのアクアマリンブルーの瞳には、瀕死の重傷を負い、一時は死の淵にあった幼馴染を気遣う感情が溢れていた。
『そう言われてみれば、確かに……』
気丈に振舞われているアーウィン様だが、その顔色は紙のように白い。それに、以前聞いた話によれば、自己治癒能力を使わずに『癒し』の力で強制的に傷を治し、その後すぐに強い力を使ったりすると、反動で動けなくなったり、下手をすると寝たきり状態になったりしてしまうんだそうだ(byアリアさん)。だからこそ、魔力で復活した後は安静にしていなくてはならないらしい。
『ああ、だから……』
それを知っているからこそ、奥方様は必死にアーウィン様を止めたんだろう。
「……アシュル殿下、発言をお許しください」
「オリヴァー?……許そう」
「有難う御座います。……確かに従来の『聖女』の魔力はそうなのでしょう。しかしながら、エレノアが持つ『大地』の魔力は、その質が異なっているように思います」
「どういう意味だ?」
「はい。私も第四皇子シリルの剣に貫かれた際に大量の血を失い、その後エレノアに癒されました。ですがこのように、失血による後遺症は全くありません。それは私同様、瀕死の重傷を負ったイーサンもです」
すると、オリヴァー兄様のお言葉に追従するように、「確かに……」「私も深手を負いましたが、貧血の症状はありません」と、その場にいる人達が(ヒューさんも含め)次々と声を上げ出した。えっ!?そ、そうなんだ!?
花人形や花冠に気を取られ、深く考えた事なかったけど、そう言われてみれば、今まで私の力を使って治した人達って、わりと全員元気だったよね。
「なので、アーウィン殿がまだ不調であるとすれば……。それは『邪神』の魔力をその身に取り込んでしまった事による後遺症なのではないでしょうか?」
ザワリ……と、その場に動揺が広がる。確かに、アーウィン様の不調が失血によるものではないとすれば、『邪神』の穢れた魔力……いわば『毒』がまだ体内に残っているからなのかもしれない。
「……であるならば、益々アーウィンを同行させる訳にはいかない。もう一度エレノアの『浄化』を受け、ここで大人しく……」
「王太子殿下。私からもお願いします」
すると、今まで黙っていたジルベスタ様がアシュル様の前に出ると貴族の礼を執った。
「ジルベスタ?」
「どうか、アーウィンの同行をお認めください。そして、アーウィンの補佐として、私も同行する事をお許し願いたい」
「――ッ!?ジルベスタ、お前……」
「アーウィン。お前の『水』の魔力と、私が持つ『水』の亜種属性である『氷』の魔力は、最も相性がいい。それに、エレノア嬢に直接花だらけに……いや、身体に『聖花』を咲かせてもらわずとも、私が定期的に『聖花』をお前の身体に『付与』していけば、『邪神』の毒も薄まっていく筈だ」
「……成る程。確かにそれなら……」
ジルベスタ様の提案に、アシュル様が逡巡した後、アーウィン様と視線を合わせた。
「正直に言えば、戦力は少しでも多い方が助かる。……良いだろう。二人の同行を許可しよう」
その言葉を聞き、アーウィン様の張り詰めたような表情がホッと緩む。そうして今度は、ジルベスタ様と視線を合わせた。
「……ジルベスタ、感謝する」
「なに。私も三大公爵家の直系の一人として、お前だけに良い恰好をさせるのは癪だっただけさ」
そう言い交わした後、阿吽の呼吸で拳を突き合わせたお二人の姿が尊い……!思わず、私の腐りし沼がはしゃぎそうになって、慌てて気を引き締め直す。
「分かりました!では早速、アーウィン様の為に全力で祈りましょう!!」
「い、いやエレノア嬢。非常に有難いのだが……」
「そ、そうだな。エレノア、取り敢えずここの地面の一画にだけ、花を咲かせてくれないか?出来るだけ気負わずにね」
「…………」
アーウィン様とアシュル様が笑顔で口元を引き攣らせている姿に、思わずジト目になってしまう。
でもまあ、確かに。私が気合を入れて祈ると、アーウィン様が花人形になっちゃう確率が高いからね。そうなってしまったら、今までの良い流れがぶち壊しになってしまうだろう。仕方がない。では心を穏やかに、無の極致で……。
「……小さく満開になぁれ」
ポソリと呟いたその瞬間、ポン!と、ポップな音がした。と同時に、なんと足元に、例の小人な私が!えええっ!?な、なんで!?
「えっ!?」
「へっ!?」
「は!?」
「なにっ!?」
「ち、ちょっ!?」
突如として発生した小人な私を前に、その場の全員がフリーズした。
だが、そんな周囲の反応を気にする事無く、小人な私はててて……と、アーウィン様の元へと駆け寄る。そして、ピョーンと見事な跳躍を決めると、まるで奥方様のように、アーウィン様の胸元へと張り付いたのだった。
「え、ええっ!!?」
アーウィン様が面白いぐらいに狼狽えている。うん、そりゃそうだよね。
というか小人な私よ、なんで出て来たんだ!?……ん?小人な私が、クルリと振り向くと、小さな親指をグッと立てた。微妙にドヤ顔なのがイラっとするが、ひょっとして私がアーウィン様の邪魔にならないよう、「小さく満開に」って祈ったから、その姿で出て来たとか?あ、コクリと頷いてる。というか、あんたまでナチュラルに私の思考を読むな!
いや、でもなんで小人!?まさかと思うけど、いちいち『付与』する手間を無くす為のおもてなし仕様だとでも言うのか!?って、また頷いた!だからいちいち思考読むんじゃない!!
「……エ……エレノア。あれは一体……?」
クライヴ兄様が小刻みに身体を震わせながら、小人な私を指差す。ん?兄様?なんか顔が真っ赤なんですが?
「えーっと……。あれは多分、私の『大地』の魔力のもう一つの具現化ではないかと……」
私は、アレが初めて出現した時の事や、その後、オリヴァー兄様やイーサン達を癒す為に出現した時の事を簡単に説明した。するとみるみるうちに、その場の全員の顔が輝きだした。というかキラキラしている。
「な、なんという事だ……!!つまり、この殺人的に愛らしい『コレ』は、エレノア嬢の魔力そのもので、私を癒す為に舞い降りた御使い……という事なのですね!?あああっ!なんて……なんて尊いんだ!!」
あっ!アーウィン様の青白かった顔が紅潮している!そんでもって小人な私を両手で抱き上げ、思い切り頬ずりしていますよ!小人な私もニッコニコ。な、なんか物凄く幸せそう。というか、絵面がヤバい。
そして、アーウィン様とジルベスタ様が、「お前だけズルいぞ!!」「何をする!この子は俺の為に生まれてきたんだぞ!?」って言いながら小人を取り合いしている!!
「……エレノア……。なんで、わざわざ小人な君をアーウィン殿に……?」
ひぃぃっ!!オ、オリヴァー兄様の背後から、とてつもない暗黒オーラがっ!!おっ、落ち着いてください!!狙った訳ではありません!こ、これは不可抗力なのであります!!
「……お嬢様。実は私、まだあの時負った傷のダメージが残っているのですが……」
え?イーサン?何で眼鏡のフレームを指クイしながら、意味深にこっちをチラ見してるの?
「エレノアよ。俺も実は、まだ見えないところに傷が残っていてだな……」
ク、クライヴ兄様!?なんですか、そのワクテカ顔!?セドリックとリアムも、いつの間にか傍に来て「僕も!」「俺も!」って言いながら目をキラキラさせているし!!
「エレノア。僕も『邪神』の魔力にあてられたのか、倦怠感が酷くて眩暈がするんだけど……」
「エル!俺も頭がズキズキするぜ!!」
「僕も。というか、なんでわざわざあいつにあんな凄いの出してやってんの?真面目にムカつく!お仕置きされたくなかったら、とっとと同じの寄越しなよ!」
ア、アシュル様にディーさん!?貴方がた、どう見ても思いきり元気そうなんですが!?そしてフィン様!ノット建前なうえに、恐喝するの止めてください!そもそも何度も言いますけど、狙って出した訳じゃないし、出そうと思って出せるものではないんですってば!!
ああっ!皆が口々に、「エレノア!(聖女様!)『邪神』を倒す為にも是非!!」なんて、言い出した!!落ち着いてください!!というか、小人な私でどうやって『邪神』倒すんですか!?あっ!小人な私!ミニシャベル取り出してドヤ顔するなー!!
アーウィンはミニノアをゲットした!
観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
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次回更新も頑張ります!




