好機到来
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻及び、ジュニア文庫2巻も発売中です。よろしくお願い致します!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
私の説明を聞いたクライヴ兄様やセドリック、アシュル様方、そしてその場にいた人達が、呆然としたような表情を浮かべながら、食い入るように私を見つめていた。奥方様に至っては、「そうきたのね……!流石はエレノアちゃん!ぶっ飛んでいるわ!!」と、目をキラキラさせている。
……うん。まあ、そりゃそうだよね。
まさか、この世界の女神様にではなく、私の前世である異世界の神様方に『誰でもいいから助けてください!!』って祈りを捧げた結果、前世の故郷における最高神様が祈りに応えて降臨した……だなんて。そんな荒業、誰も想像すらしなかっただろう。今更だけど私だって、「よく成功したな」って震えがくるぐらいだもん。
というか、周囲の学生達や教師陣といった学院関係者達に至っては、私が『転生者』だったという事実にも衝撃を受けているようだ。……いくら緊急事態だったとはいえ、ばらしてしまって大丈夫だったのかな?
「大丈夫だよエレノア。後で大騒ぎになるかもだけど、君が思っている通り、今は緊急事態だからね。それに、僕だって自分の魔力属性を全振りしちゃっているし」
「そ、そうなんですか!?」
アシュル様が苦笑を浮かべながら頷く。
そ、そうだったんだ……。『光』の魔力属性ばらしてしまいましたか。それは私が『転生者』だった事と同じぐらいの衝撃だったでしょう。そうですよね、緊急事態ですもんね!
そしてアシュル様。どんな時でも正確に私の思考を読むのは、もうお約束なんですね?あ、また頷いた。ううっ、私の『大地』の魔力で、己の思考に結界を張れないものだろうか!?
あ!ジルベスタ様が「成る程。『万年筆』だけではなく、バッシュ公爵領で生み出された画期的な商品や商業技術、そして、今まで不治とされていた病を癒す知識も、『転生者』であるエレノア嬢の英知によるものだったのですね」って言いながら、物凄くキラキラした目でウットリしながら私を見つめている(そして、さり気なくクライヴ兄様が間に入って、視線を遮った)。
そういえば以前……というか、ヴァンドーム公爵領から帰って来てすぐ、アイザック父様経由でアストリアル公爵様から相談された事があったっけ。
なんでもヴァンドーム公爵領における『壊血病』のように、アストリアル公爵領にも風土病みたいなものがあるのだそうで、その大半が『気鬱』『筋力低下』『骨の変形や湾曲』といった症状なのだそうだ。
風土病という事で、アストリアル公爵領について、兄様達に詳しく聞いてみたところ、彼の領地はアルバ王国の北方にあたり、一年の半分ぐらい雪に閉ざされる地域がザラにあるらしい。なので、「多分だけどそれ、日照不足による『ビタミンD欠乏症』じゃないかなー?」と当たりを付けた訳なのである。
『ビタミンD欠乏症』の解決法は、日光を浴びるのが最も手っ取り早い……んだけど、そもそも太陽が照らない地域だから不可能だし、人工的に紫外線を作ろうにも、仕組みが良く分からないから却下。
だとしたら、残る手段は『食べ物』。幸い、アストリアル公爵領の特産品の中にサケっぽい脂肪性の多い魚がいるみたいなので、肉よりもそれらを沢山食べるようにと進言しておいた。
更にそれに加え、我がバッシュ公爵領が誇る、お日様をたっぷり浴びた家畜が生み出す新鮮な乳製品や卵、そして、私の肝入りによって栽培された様々なキノコ類……とりわけ、『干しシイタケ』をお勧めしておきました。
暫くして、アストリアル公爵様から「領民達の症状が劇的に改善した!感謝する」というお礼状と共に、希少な魔石とミスリルを使って作った素晴らしく美しいブローチが贈られてきました。
しかも、年間を通じてバッシュ公爵領の商品を定期購入する旨が記された書類と、何故かジルベスタ様と私との『婚姻誓約書』まで同封されていたというオマケ付き(当然、『婚姻誓約書』は秒でオリヴァー兄様が灰にしました)。
ヴァンドーム公爵領が抱えていた『壊血病』の治療法への道筋を立てたら、まさかのアストリアル公爵領の太客化。
果物&野菜だけでなく、畜産物や山間部の特産品も飛ぶように売れて、まさに一挙両得のウハウハ状態!穀物産地を領地に持つ直系の娘としての面目躍如、ここに極まれり!!
「……エレノア。今この場で商魂は必要ないから」
アルカイックスマイルなオリヴァー兄様に肩ポムされ、我に返る。も、申し訳ありません!私としたことが!!……って、あれっ!?気が付けばいつの間にか、皆のペンギンプロテクターが無くなっている!アーウィン様も普通に人間の姿に戻っている!前だったら、早くて一日経たないと花人形から元に戻らなかったのに!?
……どうやら私のペンポポスミレパワー、しっかり進化しているようだ。なんとも喜ばしい限りです。
「それにしても、エレノアの今の姿……。あのクソ第四皇子の仕業だったのか……!」
あ、クライヴ兄様。しっかり私のボロボロ状態、気にしていたんですね。
「全くもって、万死に値しますね!」
セドリック、あんまり興奮しないで。見た目ボロボロなだけで、怪我とかはしていないから。
「ああ。その腐れた性根ごと、真っ白に浄化してやりたかったものだ!」
ア、アシュル様?それって浄化というより、滅して地獄に叩き落とすって意味ですよね?
「異界の女神様に連れていかれる前に、いっぺん火炙りにしてやりたかった……!!」
ディーさん、直球ですね!?でも、気持ちは凄くよく分かります!
「脳髄破壊して意識だけ正常な木偶にしてやった方が良くない?」
ひいぃっ!!ひ、久々にフィン様の病み堕ち発言キター!!
「いえ。いっそ原型が無い程度に細切れにした方が、世の為エレノアの為になると思います!!」
リ、リアムー!?世の為はともかく、私の為に細切れにするのはちょっと……!気持ちは有難いけど、スプラッタ仕様はノーサンキュー!!
「みんな、済まない。僕が不甲斐ないばかりに。……やはり、来世の百年を差し出してでも、奴を消し炭にする権利を異界の女神様から得ておけば!!……いや、それが叶わないのなら、せめて奴の残った左目と舌と毛根を焼き尽くす許可だけでも……!!」
オリヴァー兄様ー!!お気を確かにっ!!
よ、良かった……。あの時、兄様が来世を犠牲にする覚悟で闇堕ち発言しないで。天照大御神様の性格を見るに、面白がって許可しちゃいそうだもん。真面目に危なかった……!!
クライヴ兄様とセドリックも、「……来世?」「……百年を差し出す?」って言いながら冷や汗を流しているし、この場にいる人達全員ドン引きしている。……いや。ただ一人、イーサンだけが「流石はオリヴァー様です!!」って言いながら感動している。違うでしょイーサン!?そこ、家令として諫めるとこだからね!?
「と、とにかく。エレノアの推測通りなら、今が『邪神』を叩く絶好の機会だという事だ」
カオスになりかけた空気を軌道修正するかのように、咳ばらいをした後、アシュル様が声を上げた。
「その通りです。……逆に、今『邪神』に最大限のダメージを与えられなければ……この世に災厄が満ちる事となるでしょう」
アシュル様の言葉に続き、発せられたオリヴァー兄様の言葉を受け、その場の全員の表情が険しくなる。
そう。『彼女達』と同様、『異世界人召喚』によりこの世界に連れてこられ、この地を富ませる為の『人柱』とされていた人々が元の世界に還った今現在、帝国は元の災害が蔓延する不毛な大地へと、急速に戻りつつあるのだ。
それによって生まれてしまう、帝国民達の膨大な『負』の感情を『邪神』が吸収してしまったら……。それこそ世界規模で取り返しのつかない惨劇を生んでしまうだろう。
「……そうだな。幸いというか、強い『魔眼』を有する王侯貴族の大半は、アルバ王国に送られている。今回の戦いによって、敵の戦力も大幅に削いだ。『邪神』が引いている今、一気に敵の牙城に攻め入るべきであろう。『影』と共に、及ばずながら私が先陣を切るとしよう」
学院長様のお言葉に、アシュル様方や兄様達が一斉に頷いた。
「承知しました、大叔父上。では、僕とフィンレーが共に向かいます。ヒューバード、マロウ、マテオ、シーヴァーは、僕達の護衛の任に就け」
「「「御意!!」」」
あっ!ヒューさんいつの間に!?って、まだ身体のあちこちにペンポポスミレが!
「エレノア、ヒューバード総帥は、特に建物の破損が最も酷かった……いわばマジもんの最前線で戦っていたんだ」
えええっ!?クライヴ兄様、本当ですか!?ヒューさん……よくぞご無事で!!さ、流石は王家直轄の『影』を率いる総帥!純粋な戦闘力で言えば、イーサンよりも強いのかも……。って、イーサン!ヒューさん睨みつけながら眼鏡指クイしない!!ついでに私の思考をナチュラルに読むのも禁止!!
「……そしてエレノア。君も『聖女』として、僕達と共に来てほしい」
「――ッ!は、はいっ!!」
アシュル様による共闘要請。それに対し、誰も異を唱えたりしない。『守られる』のではなく、『共に戦える』事の嬉しさに、胸が熱くなった。
「オリヴァーとクライヴは、エレノアの護衛を。ディラン、リアム、セドリックにジルベスタ。万が一の襲撃に備え、大精霊様や教師達と共に、この場に残る学院生や未だ傷が癒えぬ重傷者達を守れ。イーサン!……敵の本丸に乗り込んだ後、状況をフィンレーを通して伝える。万が一の事態が発生した時は、ディラン達と共に、直ちにこちらへ加勢にくるように!」
「御意!……王太子殿下、叶いますならば有事がなくとも、我らを一刻も早くお呼び寄せくださいませ」
「そうだぜ兄貴!なんなら、この場の全員引き連れて加勢に行くからよ!……俺達はアルバ王国の男だ。学院生達も祖国と『聖女』の為に命を捨てる覚悟はとっくに出来ている」
イーサンとディーさんの言葉に、セドリックとリアム。そして、ジルベスタ様や学院生達が全員、真剣な表情で頷いた。
「みんな……!!」
恐怖を感じない……と言えば嘘になるだろう。
たとえ天照大御神様によってダメージを与えられて弱体化していようとも、相手は『邪神』に身を堕としたとはいえ、元は女神様が生み出された神の一柱。ましてや今から向かう先には、このような状況に私達を追い詰めた張本人である皇帝セオドアも待っている。状況はまさに五里霧中と言えるだろう。
でも、遥か昔。アルバ王国を築いた祖たる人々は、絶望を希望に変えるべく戦い続けた。私と同じ『大地』の魔力を持つ聖女、『姫騎士』と共に。
『オリヴァー兄様、クライヴ兄様、セドリック、アシュル様、ディーさん、フィン様、リアム……』
そして、マテオやアーウィン様方、ジルベスタ様。……この場にいる全ての人達の中に、その英傑達の血は、確実に息づいているのだ。勿論、私の中にもその血は受け継がれている。
『……なんだか不思議……』
悠久の時を経た今、『姫騎士』と共に戦ったアルバ王国の祖を持つ彼らと、『救国の聖女』たる『姫騎士』と同じ力を持つ私が共に闘うだなんて。と言っても、私は『姫騎士』と違って、まだ半人前なんだけど……。
『でも大丈夫!過去の『姫騎士』同様、私は一人じゃなくて皆と一緒なんだから!それにいざという時は、いつものように火事場の馬鹿力が発動して、なんとかなる……筈!!』
そう密かに決意をしていると、背後から声がかかった。
「……エレノア嬢。私も一緒に連れて行ってくれないか?」
「えっ!?」
振り返ってみれば、さっきまで意識が無かった筈のアーウィン様が立ち上がり、真剣な表情でこちらを見つめていた。
シイタケは干す事で、旨味だけでなくビタミンDの含有量が爆増するのだそうです。
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