全然恥ずかしくなんてないよ!
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻及び、ジュニア文庫2巻も発売中です。よろしくお願い致します!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
天照大御神が、苦しみや恨みといった『負』の感情を祓い、清浄な魂となった『彼女達』を引き連れ、元の世界に戻った後。気が付けば淀んでいた空気も浄化され、空には青空さえも見える。しかも、私達の周囲は見渡すばかり一面のお花畑となっていた。
――不自然な程の穏やかさ。かつ、圧倒的に平和な光景。
……でも、その殆どがペンポポスミレであった事については、敢えてツッコまないでおくとしよう。
『そ、それにしても……なんとかなって、本当に良かったー!』
張り詰め、強張っていた身体から力が抜けていくのを感じ、大きく息を吐く。
咄嗟に取った一か八かの作戦だったけど、結果的に私の前世における最高神の一柱を降臨させる事が出来た。その上、『対価』も奉納舞(+シリルお持ち帰り)だけで済んだだなんて、真面目に大成功だと思う!うん、自分よく頑張った!
『大御神曰く、こちらの世界の女神様のご尽力もあったみたいだけど……』
ひょっとしたら女神様、前回の『邪神』との戦いにおいて、人類に介入してしまったが為に歪んでしまった世界の理を正そうと、たったおひとりで力を尽くされているのかもしれない。
『だけど、天照大御神様があの時放った台詞……』
――……まさか、再びそなたと相まみえられるとは思わなんだ。
あれって、以前私と会っていた……って事だよね?だとしたら前世でだろうけど、全く身に覚えがない。私……一体どこで大御神と出会ったのだろうか?
『そういえば、剣道や居合を習っていた道場で、奉納舞を舞った事があったんだけど……。ひょっとして、その舞を天照大御神がご覧になっていた?実際、その道場神道を信仰していたし』
でも、あれって師匠から「巫女のばーさんがぎっくり腰になったから、代役頼む!」って無茶ぶりされて、ぶっつけ本番でなんちゃって巫女やった時、数日かけて叩き込まれた素人舞をご披露しただけなんだけどなぁ……。もしその時だったとして、一体どこら辺が天照大御神にぶっ刺さったんだろうか?
「エレノア」
「ひゃっ!?」
あれこれ考えていた私は、不意に後方から優しく抱きしめられ、心臓が口から飛び出そうになった。
「本当に……有難う。君のおかげで、僕も『彼女達』も救われた」
「オリヴァー兄様……」
バクバクしている心臓をなんとか鎮めていると、兄様の吐息が耳元にかかり、うっかり心臓が停止しかけた。ち……近いっ!近いです兄様!!
「でもまさか、君の前世における女神様を呼ぶだなんて。僕の最愛は本当、なんて凄い子なんだろう」
「オ、オリヴァー兄様……。あ、あのっ!か、身体の方は……大丈夫ですか!?」
耳元に落とされる、甘い口調と優しく力強い抱擁に胸が激しく高鳴る。それから気を逸らす為、裏返ってしまった声で兄様の体調について尋ねると、頭部に柔らかく温かい感触を感じた。
「うひゃっ!」
「うん。君のおかげでもう傷も塞がったよ。それより君の方こそ、どこか痛いところはない?」
「うう……あ、はいっ!大丈夫です!どこも痛くないです!!」
実際、シリルに蹴られ転がされ踏みつけられたわりに、身体のどこにも怪我を負った感覚はなかった。……尤も、見た目は絶対ボロボロになっているんだろうけど。
「そう、良かった!」
パッと明るい声を上げた後、オリヴァー兄様は私の肩に顔を埋めながら、身体を抱く腕に力を込めた。
「……本当に、まったくもって不甲斐ないよ。君を守るどころか守られ、その上あんな辛い思いをさせてしまうだなんて。婚約者として失格だ!!」
オリヴァー兄様の言葉から、溢れんばかりの後悔の気持ちが伝わってくる。
「兄様……!あのっ!!」
気に病まないでほしい。そう伝えようとした時、続けられた言葉に目を見開く。
「でも、今はこのような事態だ。反省も謝罪も償いも後回しにするよ。君が救ってくれたこの命をもって、君と、君が愛する人達を全身全霊をもって守り通す!……エレノア。その為に、僕に力を貸してくれるかい?」
「――ッ!!……はい、オリヴァー兄様!私も兄様と、兄様の愛する人達を、私の力の限りを尽くして守ります!!というか、兄様の大切な人達も私の大切な人達も、全員同じですよね?」
「ははは!その通りだね!」
屈託のない笑い声を上げる兄様の声を聞いている私の胸に、温かいものが満ちていく。
普段の兄様ならば、私を自分の手で守れなかった事を悔やみ、恥じたうえで、「今度こそは」と私を守ろうと一人で突っ走っていただろう。
でも、兄様は自分の失態(私はそう思っていないけど)を恥じ入りはしたけど、ちゃんと私に「助けてほしい」と言ってくれた。きっとこの戦いを経験して、兄様の中で確実に何かが変わったのだろう。
私は身体を反転させると、兄様と目を合わせながら微笑んだ。
「……兄様、大好き……!」
「エレノア、僕もだよ。……ふふ。でもさ、もう『愛している』って言ってくれないんだ?」
「うっ!!そっ、そ……れはっ!!」
兄様の言葉に、ボフンと顔から火が噴いた。そ、そういえば私、どさくさに紛れて本音をぶっちゃけちゃったんだっけ!うわぁぁぁっ!は、恥ずかしい!!
わたわたしている私を楽しそうに見つめながら、オリヴァー兄様はそっと、私の唇に自分の唇を重ねた。
「今は『好き』で我慢してあげるけど……。落ち着いたら、ちゃんと聞かせてね?」
短くも濃厚なキスの後、甘やかな口調でそう囁かれ、顔と言わず全身真っ赤になってしまう。に、兄様!非常事態に相棒を腰砕けにするとは何事ですか!?
「あ、でも二人きりの時にこっそりね。当分は僕だけの特権にしたいから」
万年番狂い特有の狭量発言キター!……ああ。こんな時でも兄様は兄様だな……と、妙にホッとしてしまったのはここだけの話です。
◇◇◇◇
「お嬢様!申し訳ございませんでした!!」
「うわっ!……あ!イーサン!!それにティル!!……ッ、よ、良かった!元気になったんだね!?」
私と兄様の会話が終わった直後。いつの間にか私達の足元近くで、お手本のような奇麗な土下座をしているイーサンとティルの姿が!!
さ、流石はバッシュ公爵家『影』の総帥とその右腕!でも、隠密スキルをこういう場で発揮しないでください、ビックリするから!!
「はい。お嬢様の癒しの御力を受け、恥ずかしながら生還致しました!……それと、ここに至るまでの状況は全て把握しております」
「イーサン……」
つまり、身体は動かせなかったけど、意識はハッキリしていたって事だね。というか、恥ずかしながらって……。前世における、ある帰還兵の言葉かな?
「お嬢様、俺もお嬢様のお陰で、この通り五体満足で復活しました!心から感謝いたします!!」
確かに。二人とも服はボロボロだけど、あの酷い火傷の痕や裂傷が全然見当たらない(まだ体のあちこちにペンポポスミレが咲いているけど)。うんうん、本当に良かった!でも、二人に張り付いていた小人な私の姿がどこにも見当たらない。
……ひょっとしたらだけど、二人の完治を見届けた後、「お役御免!」とばかりに良い笑顔を浮かべ、親指を立てながら大地に戻っていったのかもしれない。
「……それにしても……。この命よりも大切な主君の大事に不甲斐なくも死にかけ、戦線離脱するとは……!私を信じ、託して下さったアイザック様の御心までをも裏切った、これ以上はない程の愚行!!まさしく万死に値します!!腹を掻っ捌いて詫びても足りません!!」
ああっ!イーサンの目から光が消えた!!止めてー!!切腹ダメ絶対!!
「お嬢様!咎はこの俺にあります!イーサン様は、俺の命を助けようとして不覚を……!なので、全ての責は俺の命で償います!!」
「お黙りなさいティル!!上の者が部下を助けるなど、基本中の基本。その上で主君をお救いする事こそが家令の務めです!」
「ちょっと待って!!イーサンもティルも頑張ってくれたし、そもそもシリルの『魔眼』による『狂人化』と獣人って、最悪なぐらいに相性が良かっただけだから!!」
そう。シリルの『狂人化』とは、潜在的に眠っていた身体能力を、その生命力を糧に限界まで引き上げる力だ。それを、身体能力がずば抜けている獣人に施したのだから、オリヴァー兄様やイーサン、そしてティルが手こずるのも無理はない。
「ですが、お嬢様!!」
「それに、イーサンは魔力を大量に使った後だったし、ティルだっていくら私の魔力を付与した御守りを持っていても、『彼女達』の呪いの影響があったんだよね!?……私は、こうして全員助かったって事が、物凄く嬉しいの!!だからこれ以上なにか言ったら、泣いちゃうからね!?」
「――ッ!!……くっ……!お、お嬢様……!」
「お嬢様……。あざっす……!」
イーサンは滂沱の涙を流し、ティルがちょっと潤んだ瞳で照れ笑いをしているのを見て、私の目からもポロリと涙が零れ落ちる。
うん、本当に……皆が助かって良かった!
でも、いつもティルの事を文句言いながらボコってるイーサンも、イーサンをナチュラルに貶めたりおちょくったりしているティルも、こういう状況になると、自分の身を顧みずに庇い合うんだね。
そうだよね、イーサンもティルも、義理の親子みたいなものだもん。きっとお互いを、誰よりも大切に思っているんだよね。
「いえ、こんな愚息は要りません!」
「こんなんが親って……悪夢以外のなにものでもないんっすけど!?」
うわっ!速攻で否定された!
というか、息ピッタリに私の心の声を読み取らないで!!
「イーサン。復活して早々に済まないが、今すぐクライヴ達の元に行きたい。頼めるか?」
オリヴァー兄様の言葉を受け、一瞬で涙を引っ込めたイーサンが、無事だった眼鏡のフレームを指クイし、立ち上がった。
エレノアと愉快な仲間達、束の間の通常運転です。因みにこの間、僅か5分弱。
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