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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
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最終話 天使とわたし。



大広間に集まった数十人の上位天使達に向かってミカエルがいつもの笑顔で話し始める。


「お待たせして申し訳ありません。今日、集まっていただいたのは…」


「悪い、ミカエル、少し…話をしてもいいか?」


シャムシエルがミカエルの言葉を遮って話す。ミカエルがシャムシエルを見て微笑む。


「…かまいませんよ。…どうぞ。」


ミカエルに言われてシャムシエルが上位天使をまっすぐに見た後で頭を下げる。上位天使達がざわつく。



「今回の騒ぎ、直接、助けてくれた者やそうでない者、含めて…ありがとうございました。おかげで俺も妻も死なずにすんだ。」


シャムシエルの言動に困惑する上位天使達。中にはウリエルやハスディエル、マキディエル、カブリエルもいた。ガブリエルが微笑む。


……シャムシエルが頭を下げるなんてね。

一人前の顔しちゃって…


「…ちょっと、シャムシエル!…大きな貸しだからね!」


ガブリエルが大きな声でシャムシエルに言う。


「そうだぞ!…今度、奢れよ!」


ハスディエルも大きな声でシャムシエルに言う。シャムシエルがため息混じりに微笑む。


「分かったよ、、」



「今回の騒動に関しては、シャムシエルに非はありません。たまたま目をつけられたということです。協力してくださった方々やそれ以外の方々もありがとうございました。…今日、集まっていただいたのは…」


ミカエルが上位天使達に話し始めるとひとりの上位天使が発言する。



「騒動の事は、もういい。それよりも、シャムシエルが人間の娘と夫婦になった方が問題だ!」


「そうだぞ!人間との恋愛は禁止のはず…」


他の上位天使も発言する。それの発言に賛同する、天使がざわつく。



…やっぱり、その話がきたか。

そりゃそうだよな……認められないのなら、、


シャムシエルが覚悟を決めた顔で上位天使達を見る。



「お静かに。…その件に関しては後でゆっくりと説明させてもらいます。先に皆さんに報告したい事があります。………シャムシエル、羽根を出してください。」


ミカエルが上位天使達に話した後で、シャムシエルに声をかける。シャムシエルが羽根を広げる。6対の羽根がシャムシエルの背中から出てきた。神々しく光る羽根に上位天使達が圧倒され静まりかえる。



「…失われた熾天使(セラフ)がひとり、戻ってきました。」


ミカエルが穏やかな顔で上位天使達に話す。シャムシエルが自分の羽根を確認する。


……本当に6対だな。

マジか…俺が、熾天使(セラフ)


シャムシエルがうんざりした顔をする。



「……せ、熾天使(セラフ)が戻ってきたのはいいことだが…人間との婚姻は認める訳には!」


「そうだ、すぐに婚姻を解消、するべきだ!」


上位天使達が口々に文句を言い始める。シャムシエルの顔色が変わる。


「……愛したから、彼女を妻にした。婚姻を解消するつもりはない。…覚悟を決めて、誓いの指輪もつけた。彼女と同じ時を生きるつもりだ。」


シャムシエルが毅然とした態度で話す。上位天使達がざわつく。



「誓いの指輪だと?!」


「そんな、人間に誓いの指輪をつけたのか?!」


上位天使達が口々に文句を言う。ミカエルがいつもの笑顔で話し始める。



「はい、私が作って、渡しました。彼の妻は指輪をつけていますよ。」



「ミカエル!どうして、人間との婚姻を認めたのだ?」


「……彼女を見れば、分かりますよ。…天使の妻に相応しいのですから。」


ミカエルが微笑みながら言う。何者かが大広間のドアをノックした。


「ちょうど、来たようですね。…どうぞ。」


ミカエルがそう言うとラファエルが何かを抱えて入ってきた。上位天使達とシャムシエルが驚く。



「…凜子?!」


シャムシエルが思わず声を出す。ラファエルが抱えていたのは目隠しをして眠る凜子だった。


「ひやひや、したわ…。弾き飛ばされたらどうしようかと思ったわよ。」


ラファエルが焦りながらミカエルに言う。ミカエルが笑顔で凜子の額に手を伸ばす。


「私は最初から心配などしてませんでしたよ。」


ミカエルがそう言いながら凜子の額にかざした手に力を込める。それから、首にかかっているペンダントを消した。


「これで、大丈夫ですよ。無理に解放した力はちゃんと封じました。」


ミカエルがシャムシエルに笑顔で話す。シャムシエルが驚きすぎて言葉を失う。


「…あなたの婚姻に納得いってない者が多かったので一度、凜子さんを見てもらおうと思ったんですよ。なのでラファエルに連れてきてもらいました。」


ミカエルがシャムシエルに言う。



「……人間を、天界に連れてくるなんて、、」


シャムシエルが困惑しながら、どうにか、声を出した。ラファエルがにこにこしながらシャムシエルに凜子を預ける。


「……眠らせているわ。…もし、目を開けたらびっくりするだろうから念の為に目隠しをしているの。」


ラファエルが笑顔でシャムシエルに言う。上位天使達が凜子の姿を見てざわつく。



「人間を連れてくるなんて!」


「なぜ、入ってこれたんだ?!」


「ミカエル!どうして?」


上位天使達が口々に文句を言い始める。


「…見て分かりませんか?彼女は誓いの指輪をつけ、天界に入る事を許されたのですよ?」


ミカエルが上位天使達に訴えかける。


「……羽根がないのが、不思議なくらいね。」


マキディエルが発言する。


「たしかに!ミカエルが作った指輪をつけて、親父が天界に入る事を認めた…婚姻を解消させるなんて、おかしくね?」


ハスディエルも発言する。上位天使達がざわつく。


「そもそも、誓いの指輪は、天使がつける物。彼女は人間でありながら、つけることができたのですよ?…そして穢れなき魂を持つ、我々に、最も近い存在。」


ミカエルが上位天使達に強く、訴える。



「…………もしかして、誓いの指輪って人間だとつけられないのか?」


シャムシエルがミカエルに焦りながら聞く。



「……天界の鉱石で私が作った聖なる指輪、普通の人間にはつけられませんよ?…やはり、気付いてなかったのですね。」


ミカエルが大きなため息をついて、シャムシエルに言う。シャムシエルが黙りこむ。


……言われて、みればそうだな。

でも、すんなりと指輪、つけられたぞ?


シャムシエルが凜子をじっと見る。凜子は穏やかな顔で眠っている。


「ねぇ~、話ってそれだけ?」


マキディエルが退屈そうな顔でミカエルに聞く。


「はい、そうです。話はシャムシエルが熾天使(セラフ)になった事と彼女と夫婦になったことです。気になる事がある方は発言をお願いします。」


ミカエルが笑顔で上位天使達に言う。マキディエルが立ち上がってシャムシエル達がいる方に歩き始める。


熾天使(セラフ)の報告はわかったし、夫婦になる事に関しては意義なし!…やっと、休みがもらえたのよ、私は部屋に帰らせてもらうわよ。」


そう言いながら、シャムシエルの顔を見てマキディエルが微笑む。そして大広間から出ていく。ハスディエルも立ち上がりシャムシエルの方に向かって歩く。


「オレも意義なし!お幸せに♪」


ハスディエルもシャムシエルの顔を見て微笑む。そして大広間を出ていく。何名かの上位天使が立ち上がりシャムシエルの腕の中の凜子を見てから意義なしと言い大広間から出ていく。上位天使達が大広間から出ていく中、ひとりの上位天使がシャムシエルの前で立ち止まる。


「あ、、」


顔を見たシャムシエルが思わず声を出す。墜ちる前に上司だった、口うるさい天使が目の前に立っていた。


「この、悪ガキが!……まったく、お前と言うやつは…」


「勝手ばかりして、、すまなかった。」


シャムシエルが気まずそうな顔で謝る。口うるさい天使が困り顔で微笑む。


「……本当に、どうしようもないな。けど、、、一人前の顔、しやがって!………ちゃんと、守ってやれよ。大事な女なんだろ?」


そう言われてシャムシエルが驚きながらも微笑む。


「ああ、何にも変えられない大事な女だ。」


「もし、また、俺の部下になったら、思いっきり、こき使ってやるからな!…………俺も意義なしだ。」


そう言うと口うるさい天使が笑いながら大広間から出ていく。ほとんどの上位天使達が納得して大広間を出ていったが数名、残っていた。ミカエルがいつもの笑顔で話し始める。


「ご意見があるなら、どうぞ…」


「……いくらでも、文句を聞くぞ。」


シャムシエルが上位天使達に言う。残った天使達がばつが悪そうに立ち上がり、シャムシエルの前に立ち止まり、言う。


「…納得はしてないが……大半の者が、認めたのなら仕方ない。私は納得してないがな…」


不満そうに大広間を出ていく。残りの上位天使達もしぶしぶ大広間を出ていく。ミカエルが笑顔でシャムシエルを見る。


「これで、問題解決ですね。」


「無茶するなぁ…」


シャムシエルが焦りながらミカエルに言う。ラファエルもため息をつく。


「ほ~んと!無茶よね~」


ラファエルがむすっとした顔でミカエルに言う。


「指輪をつけられたので、大丈夫だと思ってたんですよ。しかも聖なる力を使って、命を落とさずにすんだ。……天界に入れないはずが、ありませんからね。」


眠っている凜子を見てミカエルが微笑む。


「……また、()()()天界(ここ)で会えるとは…ね。」


シャムシエルやラファエルに聞こえないくらいの小さな声でミカエルが呟く。


「…?…何か言ったか?」


シャムシエルがミカエルに聞く。


「いいえ。…もう凜子さんを連れて帰ってもらっていいですよ。ゆっくり、休ませてあげてください。」


「ああ。」


シャムシエルが返事をする。


「凜子さんの体調が戻ったら、たっぷりと働いてもらうので、覚悟しておいて下さいね。」


ミカエルが笑顔でシャムシエルに圧をかける。


「分かってるよ。」


シャムシエルが観念した顔でミカエルに言う。そして眠る凜子の顔を見て微笑む。


「凜子、家に帰ろうか…」


そう言うと、シャムシエルが羽根を広げて人間の世界へ降りる。

ミカエルとラファエルが見送る。ミカエルが大昔の事をふと思い返す。



ー大戦前の平穏なある日ー


ハニエルが怪我をして帰ってきた。ミカエルが困り顔でため息をつく。


「……あなたは、いつも無茶をする。いくら丈夫な体とはいえ、本当に死んでしまいますよ。」


ハニエルが不思議そうな顔で言う。


「ほっておけば、治る。」


「ですから!いくらなんでも…」


困り顔で話すミカエルを見てハニエルが難しい顔で考える。


「……人間は死んで、転生するのだろ?…我々はどうなるんだろうな?…ほぼ、不死身とはいえ、死ぬときもある。」


「……どうでしょうね?…もし、生まれ変われるのなら、あなたは何になりたいですか?」


ミカエルがハニエルに聞く。ハニエルが悩む。


「………そうだな、、、人間がいいな。あと猫や犬、動物でもいい…」


ミカエルが驚く。


「…人間…ですか?…どうして?」


ハニエルが微笑む。


「力のない者になってみたい……今度は守られる立場に。……今は守る立場だから、どちらの立場も経験してみたいな……」


「なるほど、、あなたらしいですね。」


ミカエルが笑顔でハニエルに言う。



……どちらの立場も…そう言っていましたね。

生まれ変わって、何を思っているのでしょうか。

………守られる立場と言いながらもやはり、無茶をする。


本当に、、いつもながら、あなたには驚かされる。


シャムシエルを目覚めさせる為にと思って、選んだ人間だったのに……最初は、本当に分かりませんでしたよ。



ミカエルが思い返して、微笑む。ラファエルがミカエルの顔を見て不思議そうな顔をする。


「やーね、なに考えてるの?」


「昔の事ですよ…」


ミカエルとラファエルが話しているとガブリエルとウリエルがやって来た。


「これで、一件落着ね♪」


ガブリエルが微笑む。


「そうですね。」


ミカエルが言う。ラファエルが思わず、呟く。


「凜子は……もしかして…………あっ、何でもない!」


ウリエルの顔を見て、話すのをやめるラファエル。ウリエルが微笑む。


「仮に、凜子がハニエルの生まれ変わりだとしても……彼女は、ハニエルではない。…あの娘は、、、凜子だ。」


ウリエルがすべて吹っ切れたと言いたげな顔で話す。



怒りで我を忘れたあの時、見えた羽根はきっと、お前なんだろ?

私を止めるために…情けないな、今だに、世話になるとは。

……おかげて、、やっと、お前の死を受け入れられたよ、ハニエル。シャムシエルと凜子のおかげだな。



ウリエルが晴れやかな顔で空を見上げる。

3人がウリエルを見て安心した顔をする。







ーシャムシエルの家ー



シャムシエルが凜子をベッドに寝かせ目隠しを取ると凜子が目を覚ます。


「………あれ?…わたし、寝てました?」


「うん、疲れてるんだよ。ゆっくり、休んで…」


シャムシエルが凜子の頭を撫でる。


「……不思議な夢を、みてました…空気が澄んでで、、花畑?みたいな綺麗な、場所に…」


凜子が自分の夢の話をしていると、シャムシエルが凜子の頬にキスをする。凜子の頬が赤く染まる。


「!!……え、急にどうしたんですか?」


凜子が頬を真っ赤にしたままシャムシエルに言う。シャムシエルが微笑む。


「可愛い、ほっぺだからキスしたくなった。」


笑顔でシャムシエルが凜子に言う。凜子が真っ赤な顔で黙る。


「休んだ方がいいよ。…寝るまでそばにいるから。」


シャムシエルが凜子の手を握って微笑む。凜子が頬を赤くしたまま、覚悟を決めた顔をして起き上がる。シャムシエルが不思議そうな顔で凜子をみる。


「どうしたの?………っ!!」


凜子が真っ赤な顔で目と口をぎゅっと閉じてシャムシエルの唇に自分の唇を重ねる。突然の事にシャムシエルが目を見開いて驚く。唇を離した凜子が驚くシャムシエルの顔を見て焦る。



「…………あれ?……やり方、間違えて…ました?」


キスのやり方が違っていたのかと思い、不安そうな顔でシャムシエルに聞く。凜子の言葉でシャムシエルが我に返り頬を赤くする。


………凛子から…キス?!

びっくりした…


シャムシエルが凜子の顎に手を添えて自分の唇を近づけながら微笑む。


「…間違ってないけど…足りないよ。」


そう言うとシャムシエルが凜子の唇に自分の唇を重ねる。そして凜子の下唇を親指で少し開かせ舌を入れる。目を閉じていた凜子が驚いてシャムシエルから離れる。


「……?!…今、何か、、入ってきた?!…え?…舌?…どうしてですか?!」


パニック状態の凜子が目を回しながらシャムシエルに聞く。シャムシエルが不思議そうな顔で答える。


「舌を絡めるんだよ。…さぁ、もう一度…」


「え??…からめる?……え?……!!?!!」


凜子がさらに混乱する。シャムシエルが吹き出して笑う。


「本当に、凛子は可愛いなぁ。」


シャムシエルが凛子を抱き締める。凜子が耳まで真っ赤になる。


「……だって、、びっくりして………」


混乱しながら言う凛子。シャムシエルが微笑む。


「…本当に、君に出会えてよかった。…もう離さないからね。」



凛子がシャムシエルの腕の中で穏やかに微笑む。



「……はい。わたしも、もやしさんに、、じゃなくて、シャムシエルに会えてよかった……大好きです。」



凜子がとびきりの笑顔でシャムシエルに言う。シャムシエルが名前を呼ばれた事で、少し驚きながらも微笑む。



……生きることを諦めて、、

闇の中へ落ちていきたいと考えた事もあるけど、、


そんな中で、いろんな人と天使達、、そして彼に出会った。


こんな、わたしを好きになってくれて、奥さんにしてくれた。


彼の為にも、わたし自身の為にも、、、


今、、本当に生きたいと…彼の側にいたいとはっきりと言える。


わたし、、もう迷いません。


彼と一緒に、生きていきます!



わたしの、、わたしだけの優しい天使と一緒に…




凛子がシャムシエルの腕の中で微笑む。シャムシエルも凛子を抱き締めて微笑む。







終わり。



最後まで読んで下さってありがとうございます。1年と5ヶ月の連載でした。

小説を書き始めて2作品となります。

自分で思っていたよりかなり長編になりましたが何とか書き終える事ができて、ひと安心です。

自分の足で立ち上がり歩こうとする凜子の生き方が誰かに勇気を与えることができたらいいなと思っています。

お話は終わりますがこれからの2人、そして周りの人々の物語はずっと続いていきます。

あと、その後のお話を次に投稿予定です。もう少しお付き合い頂けると幸いです。


拙い小説を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。また別の作品でお会いしましょう。


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