第 39話 変わらぬ思い
ー次の日の朝ー
シャムシエルの腕の中で穏やかな顔で眠る凜子。枕元にある、シャムシエルのスマートフォンが鳴る。手を伸ばして眠そうな顔でスマートフォンを見る。相手は霧山だった。
「……早いな。凜子なら無事だぞ。」
シャムシエルが霧山に言う。
「……すまん。聞いてはいるが、顔を見ないと落ち着かなくてな。」
霧山がシャムシエルに言う。
「仕事は?…凜子は寝てるけど、今から来るか?」
「休んだ。今から行く。」
霧山がそう言うと電話を切る。シャムシエルが眠そうな顔をしながら起き上がる。
……たしかに、顔を見ないと落ち着かないよな。
シャムシエルがほほ笑みながら、凜子の頭を撫でて頬に口づける。ベッドから出て玄関へ向かう。息を切らせて霧山がやって来た。寝室へ入り、眠る凛子の顔をみて安心してベッドの側で膝をつく。
「よかった。…生きてるんだな。」
消えそうな声で吐き出すように言う霧山。
凛子が目を覚ます。
「……霧山…さん?」
凛子がうっすらと目を明けながら呟く。
霧山が凛子の頭を撫でる。
「すまん、起こしたか?」
霧山か心配そうな顔で凜子に言う。
「…ごめんなさい。無理してしまって…もう、大丈夫ですよ。」
凜子が霧山に言う。
「本当に……。もうこんな無茶はするなよ。」
苦しそうな顔をして自分の額を凛子の額にのせて霧山が言う。
「…はい。」
凛子が霧山に返事をして起き上がる。シャムシエルが慌てる。
「今日は寝てた方がいいよ。」
「…昨日より、かなり楽になってるので…」
凛子が不思議そうな顔でシャムシエルに言う。
「いや、寝てた方がいい!」
霧山も慌てながら凜子に言う。
凛子が難しい顔をして2人に言う。
「少しくらい、動いても大丈夫ですよ?」
「凜子の大丈夫は信用してない!」
シャムシエルと霧山が同時に言う。凛子が驚いた後で無邪気に笑う。
「息、ぴったりですね。…喉が渇いたので、せめてリビングに行ってはダメですか?」
シャムシエルが少し、悩んで凜子を抱える。
「…今日は自分で歩くの禁止ね。」
シャムシエルが凜子に言う。凛子が微笑む。
「ありがとうございます。」
シャムシエルがリビングのソファーに凜子を下ろす。霧山もソファーに座る。
「霧山、何か、飲むか?」
「コーヒーを頼む。」
「凜子は?」
「……お水、お願いします。」
シャムシエルがキッチンへ向かう。
「本当に、無理しないで寝てた方が…」
霧山が心配そうな顔で凜子に言う。凜子が首にかかっているネックレスの石を霧山に見せる。
「この石のおかげでかなり楽になりました。」
凛子が微笑む。
「なら、いいが…」
「あっ、霧山さんがくれたお守り、役に立ちました!あと結界を破るために力を使ってくれたんですよね?ありがとうございます!あと悪魔さんも…」
霧山が凛子の顔を見て微笑む。
「たいした事はしてないよ。…あの悪魔は驚いた。まさか、力をかしてくれるとはな。」
「みずきさんのおかげですね。」
凛子が優しく微笑む。
「そうだな。」
霧山がほっとした顔をする。
「本当に、、無事でよかった。」
「あっ!!お仕事は?!」
凛子が思い出したように霧山に聞く。
「休んだ。こんな時に、仕事なんて手につかん。」
「…たしかにな。」
シャムシエルがキッチンから飲み物を持ってやって来た。
テーブルの上にコーヒーと水を置いていく。そして凛子の隣に座る。
「すいません、、お仕事、休んで怒られちゃいますね…」
凜子が申し訳なさそうな顔で霧山に言う。霧山が微笑む。
「1日くらい休んでも問題ない。凜子が心配する事はないよ。」
霧山が凛子に言う。
「本当に、助かった、ありがとう。一時はどうなるかと思ったよ。」
シャムシエルが霧山に頭を下げて言う。
「私だけじゃない。お前の仲間もいたから何とかなったんだ。」
霧山がシャムシエルに言う。凜子が微笑む。
「……それにしても、、天使というのは皆、金髪なんだな。」
霧山が不思議そうな顔でシャムシエルに言う。
「言われてみれば、、そうですね。」
凜子が納得する。
「そうだな。皆、金髪で青い目だ。面識のない奴は、正直、、皆、同じに見える…」
シャムシエルが難しい顔で話す。霧山と凜子が顔を見合わせて吹き出す。
「そんな、同じに見えるって…」
凜子が吹き出しながら言う。霧山も肩を揺らして笑う。
「本当に、個性がないんだよ、天使は。美男美女ばっかりで同じような顔してるし…」
シャムシエルが頭を抱えてため息をつく。しばらく雑談をした後、コーヒーを飲み終えた霧山が立ち上がる。
「そろそろ、帰るよ。凜子は休んでおけよ。」
「はい。」
凜子が微笑む。
霧山が帰ってシャムシエルがキッチンで食器を洗っていた。凜子がリビングのソファーでぼんやりと考え事をする。
……昨日はいろいろあったなぁ。
死にかけたけど、何とか助かった…そういえば、、無理に力を使った時、、誰かいたような?…………天使かな?すごい光ってた。
見たことない人だったけど、、何か会ったことあるような?…不思議な感覚……どうしてだろ?
「……何、考えてるの?」
凜子の耳元でシャムシエルがささやく。凜子が頬を赤くして驚く。
「…!!…え?!」
驚いた凜子が振り向くとシャムシエルがにこにこ笑っていた。凜子はいつの間にかシャムシエルの膝の上に座っていた。
「あれ?…いつの間に!!…ちょっと、もやしさん、近いですよ。」
凜子が顔を真っ赤にして慌てる。シャムシエルが凜子の腰に手をまわして膝の上から離れられないように抱きしめる。
「だーめ!ここは、凜子の指定席だから。」
「……近いですよ。」
凜子が耳まで真っ赤にして言う。シャムシエルが微笑む。
「……もう、俺の事、置いて行こうとしないでよ。」
シャムシエルが切ない顔で凜子を見て言う。凜子が優しく微笑む。
「……はい。……ずっと、そばにいさせて下さい。」
凜子がそう言うと安心した顔で微笑むシャムシエル。
「ねえ、凜子。もう一回、言って、、」
「今の言葉ですか?」
凜子が不思議そうな顔でシャムシエルに聞く。
「違う。昨日、言ってくれた言葉。…俺の事、どう思ってる?」
シャムシエルがにこにこしながら凜子に聞く。凜子がさらに真っ赤になって慌てる。
「え?!……い、今…ですか?……えっ、、と………」
凜子が下を向いて口ごもる。その顔を見てシャムシエルが微笑む。
……湯気が出そうなくらい真っ赤になったな。
本当に、この子は…
「……凜子、可愛いね。どれだけ眺めても、飽きないよ。」
「…ええ?!…可愛くないですよ!」
凜子が真っ赤な顔でシャムシエルに言う。じゃれ合う2人のすぐそばにラファエルが現れる。
「…ラブラブのところ、ごめんね~♪」
突然、現れたラファエルに驚く、凜子。シャムシエルはむすっとしながらラファエルを見る。
「何だ?…何かあったのか?」
邪魔されていらっとしながらも何かあったのかと気になり、心配する、シャムシエルがラファエルに聞く。
「心配しなくても、大丈夫よ。…ミカエルからの呼び出しだから♪」
ラファエルにそう言われて、凜子を置いていく事が気になるシャムシエルが凜子を見る。
「大丈夫ですよ。家でおとなしく待ってますから。」
凜子がシャムシエルの顔を見て微笑む。
「私がいるから、大丈夫よ♪…これからの話をしたいらしいわ。」
ラファエルがそう言うとシャムシエルが仕方なく、膝から凜子を下ろしてソファーに座らせる。そして立ち上がって行こうとするが、名残惜しそうに凜子の手に口付ける。凜子の頬が赤くなる。
「すぐ、帰るから…」
「…はい、大人しく待ってます。」
凜子が微笑む。
「ラファエル、頼んだぞ。あと……」
シャムシエルがラファエルに言う。
「分かってるわ♪……あと、何?」
ラファエルがシャムシエルに言う。シャムシエルが頭を下げる。ラファエルが驚く。
「昨日は助かった。…ありがとうございました。」
シャムシエルがラファエルに真剣な顔で言う。
「うふふ、大きな貸しよ♪」
ラファエルが微笑む。シャムシエルが顔をあげて笑う。
「分かったよ。」
そう言うとシャムシエルが天界へ向かう為に姿を消す。
「…昨日はありがとうございました。お茶でも飲みますか?」
凜子が笑顔でそう言うと立ち上がろうとする。ラファエルが笑顔で凜子の肩に手をのせて立ち上がろうとするのをとめる。
「座ってなさい。…今は無理しちゃだめよ。」
「はい、すいません。」
凜子が大人しく座る。
「素直ね。」
ラファエルが微笑む。
「無理すると、もやしさんや霧山さんに心配かけさせちゃうので…もう、ひとりじゃないんだって改めて思い知りました。」
凜子が微笑む。
「…そう、、」
ラファエルが笑顔で手を伸ばして凜子の額に手をかざす。
「…?…なんですか?」
「凜子、、、ごめんね。」
ラファエルが笑顔で凜子に言うと、凜子の意識が遠のいてソファーの上で倒れる。
ー天界ー
「ミカエル、入るぞ。」
シャムシエルがミカエルの部屋に入る。ミカエルが笑顔でシャムシエルを見る。
「…凜子さんの具合はどうですか?」
「だいぶ、楽になったみたいだ。」
「そうですか、よかったです。」
ミカエルが笑顔でシャムシエルに言う。シャムシエルがミカエルに頭を下げる。
「ありがとうございました。おかけで、凜子も俺も死なずにすんだ。」
シャムシエルがミカエルに真剣な顔で言う。ミカエルが驚いた後で微笑む。
「まさか、あなたからそんな言葉を言われるとは……」
「他のやつにも礼を言いたいんだが、、」
「なら、ちょうどいいですね。大広間に上位天使を集めているのでそちらに行きましょう。」
ミカエルが立ち上がる。気まずそうにミカエルのそばに立っていたウリエルが口をひらく。
「……その前に、、シャムシエル、すまなかった。」
ウリエルの言葉にシャムシエルが目を点にして固まる。
「………………?……どうして、謝るんだ?」
全く、身に覚えのないシャムシエルがウリエルに聞く。ウリエルが焦りながらシャムシエルに言う。
「…あの時、本気でお前に切りかかった。…傷付けずにすんでよかった。」
「ああ、あの時か…………はぁ?!あれ、本気だったのか?!」
シャムシエルが思い出した後で驚く。
「全く、手加減してなかった。…すまない。」
「待てよ、お前の本気の剣を俺が受けれる訳ないだろ?!」
シャムシエルが焦る。ミカエルがため息をつく。
「やはり、自覚なしですか……熾天使なのだから受けれるでしょう?」
「…自覚?…なんの話だ?熾天使はウリエルだろ?」
訳の分からないシャムシエルがミカエルに聞く。
「あなたの事ですよ、シャムシエル。…やっと力を受け入れて、今のあなたは熾天使です。」
ミカエルが笑顔でシャムシエルに言う。ウリエルが大きく頷く。シャムシエルが固まる。
「……俺が?……熾天使?………はぁ?!」
「とにかく、大広間にいきますよ。」
ミカエルが大広間に向かうために部屋を出て歩き出す。ウリエルとシャムシエルもついていく。
……親父から力を受けた時、たしかに強い力を感じた。けど……熾天使?…俺が?
あの時は夢中で自分の羽根の事なんか気にしてなかった…今の俺の羽根、何枚あるんだ?
シャムシエルが現実を受け入れられず、どんよりとした顔でミカエルとウリエルと一緒に大広間へ向かう。大広間には数十名の上位天使が集まっていた。ミカエル、ウリエル、シャムシエルが順番に大広間へと入っていく。シャムシエルの姿を見て上位天使達がざわつく。
……まぁ、当然か。
この前の出戻りの時も相当、揉めたし。
好き勝手やってきた奴が、今回の騒ぎ起こしたんだ、何を言われても文句は言えない……
シャムシエルが覚悟を決めて上位天使達の前に立つ。
つづく。




