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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
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第37話 半人前の天使、、


「……体はどうした?」


メフィストがアザゼルに聞く。


「惚れた女にくれてやった…」


アザゼルが笑いながら答える。


「……何を言ってる?」


「人間に惚れて先に逝かれた。同じ場所へは逝けないが…一緒に眠りたいと思ったんだよ。」


「人間に?……馬鹿げてる。」


「ああ、馬鹿だよ。よーく、分かってる。」



アザゼルがシャムシエルの顔を見て微笑みながら聞く。


「お前には、オレの気持ち…分かるだろ?」


シャムシエルも微笑みながら答える。


「…何だ、悪魔にも話の分かる奴がいるんだな。」


……こいつ、もしかして、霧山の妹の?



メフィストがイラつきながらアザゼルに切りかかる。アザゼルがひらりと避ける。


「体もない状態で、まともに戦えると思ってるのか?」


「…お前と戦う気はない。」


アザゼルがそう言うとシャムシエルと凛子の周りに結界をはる。メフィストが怒る。



「お前!!……人間に惚れた?そんな事で、体も捨て、時間稼ぎに協力するのか?!」



メフィストがアザゼルの結界に剣を振り下ろす。

結界の中でアザゼルが凜子の顔をみる。


「お前が、霧山の守りたい娘か…」


「もしかして…みずきさんの…」


凛子がアザゼルに話しかける。


「…ああ、そうだ。」



「お前…どうしてそこまで?」


シャムシエルがアザゼルに聞く。


「惚れた弱味だよ。みずきはずっと兄の事を気にかけていた。悪魔が出来ることなんて、たいした事はないけど…みずきの為に何かしたかったんだ。」


……偶然見つけた、すぐに消えそうな(むすめ)

見過ごせなかった。愛しても苦しいだけのはずなのに…



「……お互い、馬鹿ってことだな。」


シャムシエルがニヤリと笑う。


「そうだな。」


アザゼルもニヤリと笑う。そしてシャムシエルと凛子だけに聞こえる小さな声で話し始める。



「…今のオレではたいして時間を稼げない。外でお前の仲間と霧山が結界を破る準備をしている。」


「そうか…」


シャムシエルが上半身を起こす。


「動けるか?」


「何とか…な。」


シャムシエルが苦しそうな顔で答える。

凛子が心配そうな顔でシャムシエルを見る。


「大丈夫。…必ず守るからね。」


シャムシエルが凜子の頭をなでる。



……もやしさん、まだ傷が治りきってない。

この結界が壊れたらまた悪魔ともやしさんが戦う事になる。でも悪魔の方が強いから…

わたし、、何もできない、、、



〈穢れを知らない純白の魂を持つ人間は特別な力を持つ事があります。…あなたは特にその力が強い。〉


…そうだ、セバスチャンさん…じゃなかった、ミカエルさんが言ってた。

わたしは特別な力?があるって…わたしに使えるのかどうか分からないけど………もやしさんを、守れるなら、、、



凛子が覚悟を決める。

その顔を見てアザゼルが凛子に言う。


「……死ぬなよ、、お前が死ねば霧山はまた妹を失う事になる。」


「……はい、分かってます。」


凛子が焦りながら答える。


…死ねない。

もやしさんの為だけじゃなくて…霧山さんの為にも。



アザゼルの結界を何度も切りつけるメフィスト。


「まったく!久しぶり会ったかと思ったら、とんだ腑抜けになったな!」



アザゼルの姿が少しずつ透けていく。


「そろそろ、限界のようだな……剣を構えろ、半人前。」


アザゼルがシャムシエルに言う。


「半人前って言うなよ。…でも助かった。凛子は俺の後ろに隠れて……!!」



シャムシエルがアザゼルに言った後で凜子の方を向く。凛子がシャムシエルの首に手をまわして抱きつく。



「…凛子?…俺の後ろに……」



メフィストがアザゼルの結界を破るとアザゼルが消えていく。



………みずき…約束……守った……よ………



笑顔のまま、消えるアザゼル。

凛子がシャムシエルに抱きついたまま、目をぎゅっと閉じて歯をくいしばる。メフィストが剣を振り上げる。





「だめです!その力は人間(あなた)には使えない!!」


天界にいるミカエルが思わず叫ぶ。





……わたしに、特別な力があるなら、お願い!

大事な人を守りたいの!


凛子の体が光輝き真っ暗な結界の中を明るく照らす。メフィストがたまらず目を閉じる。



この光は、天使の持つ聖なる力。

……どうして凛子からその力が出てるんだ?

体の痛みが消えて…傷が治った?


シャムシエルの体の傷が治っていく。




………ドクンッ!!


凜子が目を見開き自分の心臓に手をあてる。


……なに?……心臓が……体が重い……



「凛子?!」



シャムシエルが焦りながら叫ぶ。

凛子がシャムシエルの腕の中で崩れ落ちて咳き込む。


「ごほっ!!……っ!!」


凛子が咳き込み、口から大量の血をはく。

シャムシエルの顔が青ざめる。





……まったく、世話のやける子だ。

仕方ないか…凛子(わたし)はそういう者だったな…

大切な者の為に惜しみなく我が身を差し出す。


髪を1つに束ね、幼い顔をした天使の影がうっすらと現れ、6対の翼をひろげ凛子を包みこむ。



…天使?…6対の翼…熾天使(セラフ)だ。

幼い顔…まさか……


シャムシエルが唖然とする。




ーメフィストの結界の外ー




「今よ!霧山!!」


ラファエルが霧山に声をかける。

霧山が魔術を起動させる。ガブリエルが霧山の魔術に自分の力を込める。



「いいわ、結界が、少し薄くなったわ!」


そう言うとラファエルが結界が薄くなった所を狙って光の矢を無数に放つ。無数の光の矢がメフィストを襲う。



…凛子の鼓動が弱まってる。

このままだと……


腕の中で苦しそうに血をはく凛子を見てシャムシエルが焦る。

天界の方を見上げシャムシエルが叫ぶ。




「おいっ!…くそ親父!!力をよこせ!!」



…悪魔を倒すためか?



「ちがう!!」



……何の為だ?



「凛子を守る為に決まってるだろ?!もったいぶってないでさっさとよこせ!!」



シャムシエルが必死な顔で叫ぶ。



……本当に…お前は変わり者だな。

我が子よ…受けとれ。



空から大きな光がシャムシエルに向かって降りてくる。眩しそうにしながらもメフィストが目を開ける。



「…何だ?…この光は…」



メフィストの目の前でシャムシエルが光輝き、6対の翼をひろげる。



…まったく!

ちょっと遊んでやろうと思ってただけなのに、半人前が目を覚ましやがった!


メフィストか舌打ちをする。シャムシエルが左手に凛子を抱えて右手で先ほどより大きな剣を構える。



……所詮、目覚めたての熾天使(セラフ)、何とかなるだろ?



メフィストがシャムシエルに切りかかろうと踏み込む。

シャムシエルがメフィストの剣をかわして結界の薄くなった所を切りつけ結界を破る。そして、外にいたガブリエルのそばに行き叫ぶ。


「ガブリエル!凜子に治癒を!頼む!!」


「!!…凛子?!…ここに寝かせて!」


シャムシエルが凛子を床に寝かせる。ガブリエルが凜子の周りに円陣を描く。そして両手を凜子にかざして力を込める。



「何があったの?…凜子の体、ぼろぼろじゃない。」



…鼓動が弱い。

このままだと……


ガブリエルが焦る。


「分からない。凜子の体から聖なる力が出てその後、血をはいた。」


ガブリエルに説明しながら凜子の手を両手で握りしめ悲痛な顔で凛子を見るシャムシエル。霧山が凛子のそばに駆け寄る。


「凜子!!」


「ハスディエルとマキディエル、霧山を安全な場所へ!」


ラファエルがそう言うと霧山の肩にハスディエルが手をのせる。



「霧山、凛子ちゃんの事は任せてくれ。…お前は安全な場所へ…」


ハスディエルにそう言われて、霧山が悲痛な顔をする。シャムシエルが霧山の目を見て頷く。


「…分かった。…凛子の事は、任せたぞ。」



霧山が仕方なく立ち上がり、ハスディエル達と一緒に姿を消す。



「凛子…だめだよ。…俺を置いていかないで……」


シャムシエルが震えながら凛子の手を握る。

ラファエルがメフィストに向けて弓を構える。


「動くんじゃないわよ!」


「皆さん、お揃いだな…」


メフィストがニヤリと笑う。

ガブリエルが凛子を治療しながらメフィストを睨み付ける。


「久しぶりだなぁ、ガブリエル…」


ガブリエルの視線の意味に気付いたメフィストがニヤリと笑いながら言う。


「…!!…あんたっ…」


「あんな奴、相手にしないで治療に専念しなさい、ガブリエル。」


怒ったガブリエルが何か言おうとするのを遮るようにラファエルが言う。


「蜂の巣にされたいの?」


ラファエルがメフィストを睨み付ける。

メフィストがニヤリと笑いながら言う。


「治療しても無駄だそ。その娘、無理に自分の力を使ったんだ。人間の身で使える力ではないのにな。」



……自分の力を無理に使った?

それでこんなにぼろぼろになったのね。

……バカな子。…人間の体が耐えられるものじゃないのに。



ガブリエルの顔が曇る。


()()()と同じ。

ハニエルといい、凛子といい…どうして、そんなに無理、するのよ……



「………シャムシエル…」


ガブリエルが重い口を開く。


「私たち天使の体は丈夫だから聖なる力に耐えられる。……でも、人間には……凛子には……」


ガブリエルが言葉をつまらせる。


「治療しても無駄だぞ。その娘はもう、助からない。」


メフィストが冷たい目で微笑みながら言う。

ラファエルがメフィストの足元に矢を放つ。


「黙ってて!!」



「……ガブリエル…そう…なのか?」


シャムシエルが真顔でガブリエルに聞く。

ガブリエルが苦しそうな顔で頷く。凛子がシャムシエルの手を握り返す。



「……も、やしさん…」


「凛子?!」


凛子が苦しそうに微笑む。


「怪我は大丈夫ですか?」


「俺は大丈夫だよ。」


「よかった。…ごめんなさい…無理しちゃいました。」


「俺こそごめん…守りきれなかった…」


シャムシエルが凛子の手を握りしめ下を向いて震えながら言う。

凛子が微笑む。そしてガブリエルを見て言う。


「ガブリエルさん、ありがとうございます。ひとつお願いがあるんですよ…ミカエルさんとお話…できますか?」



「ミカエルと話す?……命乞いでもするのか?」


メフィストが鼻で笑いながら言う。

ラファエルが睨む。


「黙ってなさい!」



「そういや、()()()がいないなぁ…元気にしてるか?ウリエルは…」



メフィストが意地悪そうに笑う。



「黙れって言ってるのよ!!」


ラファエルが矢を放とうとすると同時くらいに天界から大きな光を放ちながら6対の翼を広げた天使がおりてきた。



つづく。


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