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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
31/41

第31話 心の隙間に忍び寄る闇…

「…あんたこそ、どうして?」



「………何故か来たくなった…」


ウリエルがぼんやりと話す。



……ここでハニエルとガブリエルをよく見かけたからかもしれんな。あれからハニエルの事は考えないようにしていたが……シャムシエルに話をしたせいか、ハニエルの事を思い出す。




「………ふぅーん。」


ガブリエルがウリエルを見てから遠くを眺める。



「ここからの景色……あの子も好きだったの。」


「そうか。」


ウリエルがガブリエルの隣に座る。



「……()()()()、ずいぶんと月日が流れたのに…昨日のことのように思うときがあるのよね……」



ガブリエルが伏し目がちに話し始める。



…ガブリエルがしおらしくしてるのは珍しいな。



ウリエルが思わずガブリエルの頭を撫でる。



「……大事な者を失えば…誰でもそうなるものだ。」



「…………。」


頭を撫でられて驚いたガブリエルがウリエルを見る。



「……?…どうかしたか?」


ウリエルが不思議そうな顔でガブリエルを見てから無意識に伸ばした自分の手に気づいて引っ込める。


「……すまん。」


気まずそうな顔でガブリエルに謝るウリエル。

ガブリエルが焦りながら話を切り替える。



「…そ、そういや悪魔(あいつら)の動きはどうなの?」


「……少し、動きがあったようだが何とか切り抜けたようだ。」


「凛子は…」


「今のところは無事だ。」


「そう、よかった…」


「ハスディエルの話をする為にシャムシエルに会いに行ったのだが…凛子が寝ぼけて頭をぶつけていたぞ。」


ウリエルがふっと笑いながらガブリエルに言う。


「……寝ぼけて?…本当に面白い子ね。」


ガブリエルが微笑む。


…やっぱり気のせいね。

あの子はしっかりしてたから…

それに何でも思った事は口にしてたし。



「……さて、仕事に戻る。」


ウリエルが立ち上がる。


「私はもう少し、ここにいるわ。」


「そうか。」


そう言うとウリエルが羽根を広げて飛び立つ。









ーシャムシエルの家ー




「はい、あーんして。」


嬉しそうな顔でスープの入ったスプーンを持ったシャムシエルが凛子に言う。凛子が頬を赤くしながら気まずそうな顔でシャムシエルを見る。



「……自分で食べれ……」


「また零したらどうするの?…熱いの嫌だろ?」


凛子が少し悩んだ後で渋々、口を開ける。


「……他に食べたい物ある?」


シャムシエルが凛子にスープを食べさせながら聞く。


「…スープだけで十分です。」


凛子が頬を赤くしたまま目をそらして答える。


……食べさせてもらうの、なんか恥ずかしい。

もやしさん、嬉しそうだけど、どうしてだろ?



「はい、あーんして…」


「もう、お腹いっぱい…」


「ダメ!…もう少し食べないと。」



………やっぱり、恥ずかしい!



凛子が目を閉じて耳まで真っ赤になる。シャムシエルがニヤニヤしながら凛子の顔をじっと見る。


「…どうしたの?顔が赤いよ…熱でもあるのかな?」


「…やっぱり、自分で食べます…」


「だーめ!こぼして火傷してほしくないから」


シャムシエルがスープの入ったスプーンを凛子の口元へ出す。凛子が頬を赤くしたままスープを飲む。


「どうして、そんなに嬉しそうな顔、してるんですか?」


凛子が不思議そうな顔でシャムシエルに聞く。


「そりゃ、凛子の為になる事だからね。…凛子は何でも自分でしようとするから俺が何も出来ない…」


シャムシエルが不満そうな顔で凛子に言う。



「…自分の事は自分でするのは当たり前じゃないんですか?」


凛子が驚いた顔でシャムシエルに言う。


「俺は凛子の身の回りの事を全部したいんだけどなぁ…」


「……?……全部?…料理や洗濯って事ですか?」


「それだけじゃなくて、肌の手入れや、着替え、頭や体を洗ったり、爪切りとか…とにかく全部!」


凛子が難しい顔をしてシャムシエルをじっと見る。



「……それって…介護ですよ?…わたし、まだそんな歳じゃないです。」


「いや、介護じゃないから……」


シャムシエルが少し焦った後で凛子の頭を撫でながら微笑む。


「…君の為になる事は何でもしたいんだよ。」


「………さつきさんには……全部、してたんですか?」


「ああ。さつきは凛子と違って気を使わない子だったから全部、俺がしてた。炊事洗濯、何もできなかったしね。」


シャムシエルが笑いながら話す。



……さつきさんは全部、してもらってたんだ。


わたしと違って……


……何だろ?


もやもやする……


自分の事を自分でするわたしって……もやしさんにとって、嫌…なのかな?


わたしより……さつきさんの方が……



「…凛子?」


シャムシエルが心配そうな顔で凛子の顔をのぞき込む。


「………え?」


凛子がシャムシエルの声で顔を上げる。



「…どうした?…体調、悪い?…横になる?」


「いえ、…大丈夫です。」


凛子が困り顔で微笑む。



……嫌な事、考えてるなわたし。

もやしさんにとっては、さつきさんの方が大切な人なのに……

わたしは…さつきさんの次…


分かっているのに……


胸が苦しい……



凛子が自分の胸の前で手を握りしめる。




……ソうだな。


そいツはお前ヨり昔の女の方を愛してル…


所詮、お前は昔の女の代ワり…


自分の方ガ愛されてイると思っテいるとは……


哀レだな……




…ドクン……


凛子の頭の中に直接、誰かが話しかける。



………誰?



……ドクン………ドクン………



凛子の鼓動が早くなる。



……哀れな人間の女…


天使が本気で人間を愛するトでも思っているのカ?




……ドクン………ドクン………ドクン………



……そうだよね…


わたしみたいな……何もない普通の…人間…なんて……



「……っ!………凛子?!」



シャムシエルが凛子の肩を掴んで名前を叫ぶ。

その声で凛子が我に返る。



「…大丈夫?……顔色が悪いよ。やっぱり休んだ方がいいな。」


そう言うと凛子を抱えて寝室へ向かう。



……さっきの声、何だったんだろ?

もやしさんには聞こえてない……のかな?



シャムシエルが凛子をベッドに寝かせて凛子の顔を真剣な顔でじっと見る。



「………何かあった?」


「え?」


凛子が驚いた後で誤魔化す為に微笑む。


「……いえ、何も、ないですよ。」


「…………。」


シャムシエルが黙って凛子の顔を見た後で頭を撫でる。


「とりあえず、休んだ方がいいな。……寝るまでここにいるから。」


そう言うとシャムシエルが凛子の手を握る。



「…はい、ありがとうございます。」


そう言うと凛子が目を閉じる。



……急に真剣な顔するからびっくりした。

誤魔化せた…よね?

これ以上、迷惑かけたくないし…

さっき、聞えた声も気のせいもしれない。

きっと、いろいろあった…から……疲れてる……だけ……



凛子が眠りにつく。

凛子の手を握りしめながらシャムシエルがため息をつく。



…また、何か隠してるな。

いつも、1人で抱え込む……本当に、ほっておけない子だな。

……聞いても、話さないだろうし…困ったな。



シャムシエルが眠る凛子の頬に触れる。



……さつきは俺が聞かなくても思っている事は何でも話してくれたけど…凛子は話さない。

同じ人間でもまったく違うな……さっきの怯えたような顔。

魔の気配はしなかったけど…何かあったのか?

………俺が気づいてないだけかと思ったが、ハスディエルも来なかったしな。


悩みながらシャムシエルがリビングへ行く。



「…ハスディエル……いるか?」


「どうした?」


ハスディエルがシャムシエルの目の前に姿を現す。


「…ついさっきだが、魔の気配を感じたか?」


「ん?…何かあったのか?何も感じなかったぞ…」



……悪魔の仕業じゃないのか?

でも、そうじゃないならあんなに怯えたような顔はしないはず…


「…何か…嫌な予感がするな。」


「嫌な予感?…凛子ちゃんに何かあったのか?」


ハスディエルが焦りながらシャムシエルに聞く。


「何もない。……()()()()()()。」








闇の中で悪魔が笑う。


「…天使と……人間が夫婦?……笑わせるな……」








ハスディエルとシャムシエルがリビングのソファーに座って話していた。



「……そうか、お前にもいろいろあったんだな。たまにガブリエルからお前の話は聞いていたけど…」


ハスディエルがうなだれてため息をつく。


「…凛子ちゃんの詳しい事は聞いてなかったから。…ひどい話だな。」



「…ミカエルが見つけてきたんだ。闇堕ちする人間を助けてみませんか?って言って。凛子がここに来た時はほぼ感情がなかったよ。」


シャムシエルが伏し目がちに話す。



……顔色、悪くて今よりも痩せてたな。

笑顔もなかった。今は違うけど…



「…よく考えると、ミカエルの罠?にはまったような気がするな。」


シャムシエルが顔を上げて呟く。


「…ん?…罠?」


ハスディエルが不思議そうな顔で聞く。


「凛子に出会う前、消えたいとばかり考えていた。さつきがいなくなって生きる意味を失っていたからな…」



「……ミカエルの罠…か。」



……たしかに、シャムシエル(こいつ)が消えると困るもんな。

ミカエルが仕組んだな。…けど夫婦になったのは予想外だったかも?


ハスディエルがクスッと笑う。



「…なんだ?」


シャムシエルがハスディエルを顔を見て不思議そうな顔をする。



「いやぁ~。()()()()()()()()がこんなに必死になってるのが面白くてさぁ~」



「……どういう意味だよ。」


シャムシエルが気まずそうな顔でハスディエルに言う。


「顔がいいからって言い寄ってきた女達を余裕の笑顔と見せかけの優しさであしらっていた頃のシャムシエル(おまえ)とは大違いだからぁ~♪」



「…うるせー。凛子の前で、昔の話はするなよ。……知らないんだから。」


シャムシエルが焦りながらハスディエルに言う。


「あれ?…凛子ちゃんは知らないの?……どうしようかなぁ?」


ハスディエルがニヤニヤしながら話す。



……本当におもしろいな。

あの頃とまったく違うシャムシエル…凛子ちゃんのおかげだな。



数時間後、凛子が目を覚ます。



……何時だろ?

少し寝たからすっきりした……ん?


ぼんやりと目を開けるとベッドに腰かけて本を読んでいるシャムシエルがいた。



「…!!…えっ……ずっと、そばにいたんですか?」


「…よく眠れた?…ずっとじゃないけどそばにいたよ。」


シャムシエルが凛子の顔をじっと見る。


…少し、顔色がよくなったかな?



「…すいません。」


…迷惑、かけたくないのに。


凛子が下を向いて申し訳なさそうにシャムシエルに言う。

シャムシエルが凛子の頭を撫でながら微笑む。


「…謝らなくていいよ。」


……悪魔(あいつら)の事だから何をしてくるか分からない。

でも凛子を守りたい…いや、必ず守る。






ー深い闇の中ー


「…さて、()()()がどこまでもつか……見物だな………」



悪魔がニヤリと笑う。




つづく。





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