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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
30/41

第30話 熾天使 ハニエル

ー大昔の大戦前の天界ー



ハニエルの部屋に数名の天使がいた。


「まったく!気が緩んでいるぞ、お前達!上位天使としての自覚はあるのか!」



青い目に金髪の長い髪を後ろに束ねた幼い顔立ちのハニエルが天使達を怒りながら睨みつける。



「すいません…でも…」


「言い訳はするな!そんな事でどうする?他の天使達の見本とならねばならぬ立場だと言うのに!」



言い訳をしようとした天使をハニエルがさらに叱りつける。

天使達が黙り込んでいるとドアをノックする音がした。


「私だ、入るぞ…」


ドアを開けてウリエルが入ってきた。


「何の用だ、ウリエル。」


ハニエルがむすっとしたまま、ウリエルに言う。


「ミカエルが呼んでる。…叱るのもそれくらいにしてやれ。私からもきつく言っておくから。」


ウリエルが困った顔でハニエルに言うがハニエルがさらにむっとする。


「お前まで、そんな甘い事を言って!そもそも、天使と言うものはだな…」



「分かった、分かった。後でゆっくり聞いてやるから…とにかく、ミカエルが呼んでる。」


ため息をつきながらウリエルがハニエルの背中を押して部屋から追い出す。


「…また、そう言って、はぐらかす!」


ハニエルが不服そうにしながらもしぶしぶミカエルの部屋へ向かう。ハニエルが部屋から出てほっとした天使の1人がウリエルに言う。


「…助かった、ウリエル。一旦、怒ると長いからなー」


「お前達も悪いのだぞ。…気をつけろ。」


「分かってる。気をつけます…」


そう言うと天使達が部屋を出ていく。



……黙っていれば幼い顔でプットのようなのに、性格はキツいな。

見た目と中身に差がありすぎる。


ウリエルがため息をつきながらミカエルの部屋に向かう。




「……そういう訳なので、様子を見て来てください。くれぐれも注意してくださいね。」


笑顔でミカエルがハニエルに言う。



「分かった。直ちに向かう。」


ハニエルがミカエルの部屋から出ようとドアを開けるとウリエルが立っていた。



「話は終わったのか?」


ウリエルがハニエルに聞く。



「ああ、終わった。」


「…いつもそうだが、もう少し穏やかに注意できないのか?」


ウリエルがハニエルの顔をじっと見ながら言う。


「また、そんな甘い事を言って!そんな事では悪魔(やつら)に足元をすくわれるぞ!」


ハニエルが眉間にシワを寄せてウリエルに言う。


「また、天使達を叱っていたのですね。…彼女の仕事なので仕方ないですよ、ウリエル。それが彼らの為でもあるので…」


ミカエルが笑顔でウリエルに言う。


「それにしてもだな…」


ウリエルが呆れながら話そうとするとミカエルが笑顔でウリエルとハニエルに言う。


「そうだ、ウリエルにも行ってもらいましょう。何があるか分からないのでハニエルだけだと少し、心配ですから…」



「…何の話だ?」


ウリエルが不思議そうな顔でミカエルに聞く。


「わたし、1人でも大丈夫だぞ?」


ハニエルがミカエルに言う。


「あなたは攻撃力は強いですが守りが弱い。ウリエルが一緒なら安心です。なので2人で行ってきて下さい。」


ミカエルが笑顔でハニエルに言う。


「ミカエルが言うなら仕方ない。…ウリエル、行くぞ。」


ハニエルがウリエルの腕を掴んで歩き始める。ウリエルは訳が分からずハニエルについて行く。ミカエルが笑顔で2人を見送る。


「…どこに向かうのだ?」


ウリエルがハニエルに聞く。


「天界の端だ。最近、怪しい動きがあるらしい。」


ハニエルが翼を広げ飛び立つ。ウリエルも後に続く。


「…怪しい動き…か。たしかに調べねばならんな。」


「わたし、1人では役不足という事か…まだまだ精進がたりんな。」


ハニエルがため息をつきながら呟く。



「そうではない。お前は守りが弱いからだろ?…我々の中では珍しいタイプだからな…」


「そう言う、お前もどちらかと言えば攻撃タイプだろ?」


「どちらかと言えば…そうだが。ハニエルより守りは強いぞ…」


「見えてきた。…あそこだ。」


岩場に降り立つ2人。ハニエルが辺りを見渡す。


「……何か、変化があるようには見えないな。」


ウリエルが何かの気配に気付く。


「いや、何かいるぞ…気をつけろ。」


「…?……そうか?」


ハニエルが不思議そうな顔をしながらも辺りを見渡すと足元から小物の魔獣が数匹現れる。


「やはり、何かあるようだな。」


ハニエルが大剣を手に持つと小物の魔獣を一掃する。


…あっという間だな。

しかし、小物とはいえ何故、魔獣がいるのだ?


ウリエルが下を向いて考えているとハニエルの後ろに大きな魔獣が現れる。


「…!…ハニエル、後ろ!」


ウリエルが大剣を手に取り魔獣に切りかかる。その後、ハニエルがとどめを刺す。


「……この程度の魔獣では相手にならんな。…何かの罠か?」


ハニエルが辺りを見渡す。


「どうだろうな。…しかし端とはいえ天界なのに、魔獣がいるのはおかしいな。」


「もう少し、調べてみるか…」





ーミカエルの部屋ー


「2人で行ったんだ…」


ガブリエルがミカエルに言う。


「ええ、ハニエルだけだと少し不安なので…」


「たしかに!あの子、無茶するもんねぇ~」


ガブリエルがため息をつきながら言う。


「そうそう。いつも、傷だらけで帰ってきますからね。」


「…天界の端で不穏な動きって…なーんか、嫌な感じよね…」


ガブリエルが心配そうに呟く。


「……大きな戦になるかもしれませんね。できれば避けたいですが…」


ミカエルが真剣な顔で答える。



…戦になれば、ハニエルは先陣に立つ。攻撃力は高いけど守りが弱いのに。他の天使達の為にも1番危険な所に切り込んでいくでしょうね…そしてウリエルもハニエルを守ろうとして…



ガブリエルが下を向いて不安そうな顔でため息をつく。


「…2人が心配なのでしょう?…戦になれば守りと治癒力の高いあなたは後援に回ることになる。そしてハニエルとウリエルは先陣に回るでしょうね。特にハニエルは…」


ミカエルがため息をつく。



「そうなのよ、あの子は血の気が多いから…無茶しかしないでしょうね…今も怪我してるんじゃないかしら?」



ガブリエルもため息をつく。


…あの子と私は同時に目覚めた。

のんびりしてる私と血の気の多いハニエル…

私達は2人で1人。…あの子………無茶してないといいけど…





魔獣の鋭い爪がハニエルの左肩を引っ掻いて傷つける。


「…!…大丈夫か?!」


ウリエルがハニエルに声をかける。



「このくらいなんともない!目の前の敵に集中しろ!」


ハニエルが大剣で魔獣をなぎ払う。


「……これで最後のようだな。魔の気配がなくなった。」


ウリエルがハニエルに言いながら肩の傷を直そうと手をかざす。


「…ほっとけば、治るからいいぞ。…それよりもミカエルに報告だ。」


ハニエルがウリエルの手を払いのけて飛び立つ。ウリエルがその後に続く。



「……まったく、少しは自分の身を大事にしろ。」


「我々の体は丈夫だ。腑抜けの人間どもとは違う。」




ウリエルとハニエルがミカエルの部屋に入ってくる。


「ミカエル、戻ったぞ。」


ハニエルが怪我をしてるのを見てガブリエルが怒る。


「ちょっと!怪我してるじゃない!」


「かすり傷だ。気にするな…」


「本当にしょうがない子ね!」


ガブリエルが傷口に手をかざす。


「…大丈夫だ。それよりも報告が…」


「じっとする!まだ血が出てるわよ!」


ガブリエルが溜息をつきながら傷を治す。

ハニエルが不思議そうな顔でガブリエルに言う。


「…そんなに、心配しなくてもほっておけば治るのに…」


「また、そんな事言って!仕事熱心なのはいいけど、もっと自分の体、大事にしなさい!」


「…そうだな。気をつける…」


「そんな事、言ってまた無茶するんでしょ?!」



ガブリエルがむすっとした顔で言うとハニエルが微笑む。



「怪我をしても、ガブリエルが治してくれるのだろう?」


「人のことをあてにしないの!…まずは怪我しないように気をつけなさい!!」


「ガブリエルの言う通りだ…自分の身を大事にしろ。」


ウリエルがため息混じりにハニエルに言う。


「お前達は心配性だな…」


ハニエルが困り顔で微笑む。





その後、間もなく、大戦が始まった。

ウリエルとハニエルは前線で戦い。私は後援で天使達の治療をしていた。





前線でウリエルが悪魔達に囲まれ戦っている。ハニエルも大剣を振りかざし戦う。大きな魔獣がウリエルの足を掴む。動けなくなった所で上位悪魔が天使を殺せる剣でウリエルに斬りかかる。


…しまった!殺られる!


ウリエルがもがくが動けない。悪魔の剣がウリエルの目の前に飛び込んできたハニエルを貫く。



…………!!!


ウリエルが目の前の光景に目を見開く。

そして周りにいる悪魔と魔獣を一掃して倒れるハニエルに手を伸ばす。


「ハニエル!!目を開けろ!」


「……ウリエル……無事か?」


「すぐにガブリエルの元へ…」


「無理だ、間に合わない…」


ハニエルの体から大量の血が流れる。

悪魔がニヤリと笑う。



「馬鹿なやつだ…わざわざ刺されにくるとは…お前も死ぬか?」


悪魔がウリエルに切りかかろうとするが目の前にミカエルが立ち塞がる。その傍にはガブリエルがいた。



「ハニエル!」


ガブリエルがハニエルの傷口に手をかざす。



「無理だよ、ガブリエル。普通の剣で貫かれたのではないのだから…」


「でも!」


ガブリエルが泣きながら治療する。


「ありがとう、ガブリエル。でも無駄に力を…使うな…」


「無駄じゃないわよ!…バカ!」



「………ハニエル…私の力が足りないばかりに…」


ウリエルが悲痛な顔でハニエルに言う。

ハニエルがウリエルの胸ぐらを掴む。


「お前などに……守られなければ…ならないほど…落ちぶれてはいないぞ……」


ハニエルが口元から血を流しながらニヤリと笑う。

ウリエルが苦しそうな顔でハニエルに言う。


「本当にお前と言うやつは……こんな時にまで…」


「……何だ?可愛げのある…事でも……言うと……思ったか?…そういうのは…ガブリエル…の役目……だろ?」



「もう、喋らない方がいいわ。天界に戻りましょう。結界を作って…時間を止めて、治療すれば…」


ガブリエルがハニエルに言う。



「無理だ…間に合わない…もういいから…」



「この剣はお前達を殺す物だからなぁ~」


悪魔がニヤリと笑いながら血のついた剣を舐める。

ウリエルが悪魔を睨みつける。ミカエルが真顔でウリエルに言う。



「ガブリエルとハニエルを安全な場所へ…」


「しかし…」


「早く!時間がありません。…ここは私が引き受けます。」


ウリエルが悪魔を睨みつけながらもハニエルとガブリエルを安全な場所へ移動させるために姿を消す。



「さて…どうしましょうか?切り刻むだけではすみませんよ…」


ミカエルが微笑みながらも目の奥は冷たく悪魔を見下ろしていた。


「お前の相手は……俺一人では、無理だな…」


悪魔が後ずさりする。



「…残念。逃がしませんよ」


ミカエルが笑顔で剣を振り上げる。



天界の安全な場所でハニエルを寝かせ、ガブリエルが結界を作る。


…間に合わないかもしれないけど、それでも…



「……すまんな、ガブリエル………もう、傍に…いられない…………」


ハニエルがガブリエルの手を握る。


「何言ってるのよ!…助けるから…そんな事…言わないで…」


ガブリエルが泣きながら治療する。



……私の大事な半身。

傍にいて見守りたかった。……寂しがりなお前を…1人にするのは気が引けるが……



「……ウリエル。……これからの……天界の……事………ガブリエルの事……頼んだぞ……」


ハニエルがウリエルの目を真っ直ぐ見て話す。


「…ハニエル。」


ウリエルが苦しそうな顔でハニエルを見る。



「…なんて顔してるんだ。…しっかりしろ……」


ハニエルが苦しそうな顔で微笑む。



「……優しい…お前には…酷な……仕事…だが……お前に……任せたい。……頼まれて……くれるか?」



「……分かった。」


ウリエルがハニエルの手を握る。



「……ありがとう…ウリエル。…任せた…ぞ…」


ハニエルがガブリエルの首に手を回して引き寄せ額に口つける。



「…ガブリエル………またな。」


ハニエルが小さな声でガブリエルの耳元で呟く。






ー現在の天界の花畑ー


ガブリエルが1人で座っていた。



よくここでハニエルと話してたなぁ…

ずっと一緒だったから…いなくなった後、一人でいるの…本当に辛かった。……今も心に穴が開いたまま…だけど。……自分の事、大事にしない子だったなぁ…人の事ばっかり…………………凛子と同じね。


ガブリエルがくすっと笑った後で目を見開いで驚く。



………どうして、私…ハニエルの事、思い出してたのに凛子の事が出てきたの?………そういや、凛子に初めて会った時、不思議と懐かしい感じがした。



「……まさか……ね。」






バサッ


羽根の音が聞こえる。



「……何だ、ガブリエルも来てたのか?」



ガブリエルが振り向くとウリエルが立っていた。



つづく。

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