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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
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第28話 凛子の思い…

キッチンで凛子が食器を洗っていた。

リビングでシャムシエルとハスディエルが今後の事について話し合っていた。



「…姿を見せるのはオレと凛子ちゃんが知ってる天使だけで他の天使達は姿を消して護衛する事になった。」


「そうか、助かる。」


「オレも基本的に姿を消してるから安心しろ。新婚の邪魔はしねぇから。」


ハスディエルがニヤニヤしながらシャムシエルに言う。


「…はいはい。」


シャムシエルが呆れながら返事する。


「…本当はもっと早く、会いに来たかったんだけどな…すまない。」


ハスディエルが申し訳なさそうにシャムシエルに言う。



「…何言ってんだよ。堕ちた天使に会いに来ればお前の立場が悪くなるだろ?」


シャムシエルが笑いながらシャムシエルに言う。



「そんな事、気にするかよ。…本当に忙しかったんだよ。お前がいなくなってからな…」


ハスディエルがため息混じりに言う。


…シャムシエルの分も合わせて2人分の仕事してたからなぁ。おかげで上位天使まであがってこれたけど…



ハスディエルがシャムシエルをじっと見る。


「…?…どうした?」



やっとここまであがってきたけど、あっという間に抜かれそうだな。


「…最近、体に違和感…ないか?」


「…違和感?」


シャムシエルがしばらく悩む。


「……言われてみれば、なんか…羽根の収まりが…悪い?ような気がするなぁ。」


「……そうか。」



…やっぱり。

しかもこいつ、気づいてない…

凛子ちゃんの事も分かってなさそうだな。


ハスディエルが大きなため息をつく。


「…なんだ?」


シャムシエルが不思議そうな顔でハスディエルを見る。


「…昔からそういう所は鈍感だよな、お前。」


「…?…何の話だ?」


「教えるのムカつくから、自分で考えろ。」



……力やランクについては全く興味がないみたいだな。…こいつらしいけど。


「…鈍感?……????」


シャムシエルが悩む。



「……昼飯までそこら辺、見回ってくる。」


そういうとハスディエルが姿を消した。



……何の話か、さっぱり分からんな。


シャムシエルが頭を抱える。



「あれ?ハスディエルさん、帰ったんですか?」


凛子がリビングに入ってきてシャムシエルに聞く。


「ちょっと、見回りしてくるらしい。…凛子、手を出して。」


「…はい。」


不思議そうな顔で凛子がシャムシエルの前に手を出すとシャムシエルがハンドクリームを凛子の手に塗る。


「…いいですよ、自分でぬります。」


「いいから、いいから。」


……小さな手、柔らかくてすべすべだ。


「ありがとうございます。もういいですよ……!!」


シャムシエルが凛子の手を引き寄せ抱きしめる。


「…必ず、守るから。…俺のそばを離れないでね。」



…でも、相手の悪魔は強いんだよね。

もやしさん以外の天使も来てるって……

わたしの為にそこまでしてくれなくてもいいのに。

……ん?……わたしの為?

天使が1人の人間の為にそこまでするものなのかな?


凛子が難しい顔で考える。



「……まーた、何か考えてる。凛子は、いつも考えすぎ!」


シャムシエルが凛子の鼻をつまむ。



「…!!」


凛子が鼻をつままれて驚く。


「…本当に、ほっておけない子だな。」


シャムシエルが困り顔で微笑む。


「…あ、霧山さんにも同じような事を言われました。…どうしてそう思うんですか?」


凛子が不思議そうな顔でシャムシエルに聞く。


「…体が細いのにご飯は食べないし、思ったことは口にしない。あと人の事ばかり心配して自分の事を大事にしない…ほっておいたら大変だよ。」


シャムシエルが呆れながら凛子に言う。


「……………。」


凛子が痛い所をつかれて言い返す言葉が出てこず黙り込む。


……全部、当たってる。


シャムシエルが微笑みながら凛子の頭を撫でる。



「…でも、心の優しい子だ。…だから自分のことを大事にして欲しい。」



……自分の事を大事…に?


「…君が傷つくと、俺も悲しいし、辛いから。」


……わたしが傷つくともやしさんも悲しくて辛い?

そうか。……そんな事、考えた事もなかった…


凛子がシャムシエルの顔を見る。シャムシエルが凛子に顔を近づける。凛子が慌てて目を閉じるとシャムシエルが凛子のおでこに口づける。



…びっくりした…キスされるのかと思った。



凛子が傷つくと悲しくて、辛い…



わたしも、もやしさんが傷ついたら辛い。

悪魔が私を狙って、もやしさんがわたしを守る為に怪我でもしたら……そんなの嫌。

でも……わたし、何も出来ない。


凛子が下を向いて辛そうな顔をする。


「……凛子?」


凛子の後ろに黒い影が現れる。そして黒い手が凛子の首に手を伸ばす。闇の気配に凛子の背筋が凍る。



「…!!」


何かが首を触ってる?

この感じ、プールで足を掴まれた時と同じ…



凛子がそう思った瞬間にハスディエルが姿を現し凛子を抱えて黒い影をなぎ払う。


「…ちっ!どこから入ってきたんだよ!!」


ハスディエルになぎ払われて黒い影が姿を消す。


…結界の隙間をぬって入ってきたのか?

こそこそと卑怯なやつだ。


ハスディエルに抱えられた凛子がシャムシエルを心配そうに見る。シャムシエルは何が起こったのか分からず呆然としていた。


……さっきの魔の気配、気づかなかったみたいだな。

うまく隠れながら入り込んできたから分かりずらいから仕方ないけど。



「ありがとうございます。」


凛子がハスディエルにお礼を言う。


「無事でよかった。…急に抱えて、ごめんな。」


ハスディエルがそう言うとシャムシエルの腕の中に凛子を戻す。

凛子が心配そうにシャムシエルの頬に触れる。


「…もやしさん、大丈夫…ですか?」


我に返ったシャムシエルが凛子を見る。


「…いや、俺は何ともないよ。凛子…怪我は?……!!」


凛子の首に引っ掻いたような傷が出来て血が流れる。


「……大丈夫ですよ。…首を触られただけで……痛っ!」


「…首、見せて。」


「大丈夫です。絆創膏でも貼っておけば…」


凛子が首の傷を自分の手で隠してシャムシエルから離れようとする。シャムシエルが凛子の腕を掴んで傷を確認すると傷口を舐める。


「…ちょっと、何、するんですか?!」


凛子が頬を赤くして慌てる。


「だって、血が出てる…」


……さっき、魔の気配に気づけなかった。

ハスディエルがいなかったら…


シャムシエルが心の底から焦る。



やっぱり、力が足りない…

俺だけじゃ…凛子を守りきれない。




……力が欲しいのか?




「………!!」


この声は…



……どうだ?…自分のやりたい事は見つかったのか?




やりたい事?

……大切な人を見つけた。

どうしても守りたい!




………そうか、やっと()()()が来たようだな。




…その時?




「…さん?…もやしさん?!……大丈夫ですか?」


凛子が心配そうな顔でシャムシエルの顔を覗き込む。

凛子の声でシャムシエルが我に返る。



「……あれ?……俺…」


「…何か、ぼーっとしてましたよ?」



さっきの声……誰だったっけ?

……どこかで聞いた声なんだが…思い出せない。



「…大丈夫だよ。」


シャムシエルが微笑む。

凛子の手が血で汚れてる事に気づいシャムシエルが凛子の手を掴んで血塗れの手を舐める。


「…!!…ダメですよ、汚いから!」


凛子が慌ててシャムシエルから離れようとするがシャムシエルが抱きしめる。


「…汚くないよ。ごめん、痛い思いさせて…」


「もやしさんのせいじゃないですよ。…それにもう痛くないです。」


凛子が微笑む。



「…かなり、分かりずらいな。…オレでも気づくのに少し時間がかかった…」


ハスディエルがため息をつきながら話す。

…ほかの天使に比べると魔の気配に敏感なオレでも分かりずらかった。…まずいな、シャムシエルは鈍感だからな…



シャムシエルが落ち込む。凛子がその顔を見て微笑む。



「わたしは大丈夫です。…気にしないでください。」


「…………。」


シャムシエルが下を向いて黙る。

ハスディエルが握りこぶしを作ってシャムシエルの頭を強めに殴る。


「…いてっ!!」


「なーに、シケた面してんだ!!始まったばっかだろうが!?」


ハスディエルがシャムシエルを怒る。


「…痛えな!……もっと手加減しろよ。」


「もう1発か?!」


ハスディエルが握りこぶしを振り上げてシャムシエルを睨みつける。


「それは勘弁してくれ…」


シャムシエルが焦りながらハスディエルに言う。


「…やめてください。」


凛子がシャムシエルを庇いながらハスディエルに悲しそうな顔で訴える。


「今日のところは…凛子ちゃんに免じて1発だけにしといてやる!」


ハスディエルがシャムシエルに言う。



「…大丈夫ですか?」


凛子がシャムシエルの殴られた場所をさする。


「ありがとう、凜子。」


「甘やかさないでいいよ、凜子ちゃん。これぐらい当然!」


シャムシエルが腕を組んでシャムシエルを冷たい目で見る。



…本当に仲がいいみたい。


凛子が焦りながらハスディエルを見ているとシャムシエルが凛子の顎に手を伸ばして首から肩にかけて傷がないか確認する。


「…他に痛いところはない?」


「はい。本当に大丈夫ですよ。」


…あれ?血が止まってる?


凛子が傷ついた場所を触って確認する。


「…もう治したから血は出てないよ。」


「治した?…いつですか?」


凛子が不思議そうな顔でシャムシエルに聞く。



「さっき、舐めた時に治した。」


シャムシエルが答える。


「…舐めた時?!」


凛子が驚く。


「天使には治癒能力があるんだ。傷口に触れて治すことが出来る。…こいつの場合は攻撃力ばっかだから治癒能力、ほとんどないけどね。」



ハスディエルが凛子に説明する。


…別に舐めなくても手で触れば治せるけどな。


ハスディエルがシャムシエルを呆れ顔でじっと見る。



「…何だよ。」


シャムシエルがムッとした顔でハスディエルを見る。


「…凛子ちゃん、服が汚れたから着替えた方がいいんじゃない?」


「そうですね。着替えてきます。」


そう言うと凛子が自分の部屋へ向かう。

凛子の姿がなくなったのを確認してからハスディエルがシャムシエルの胸ぐらを掴む。


「なんて顔してんだ!!凛子ちゃんが不安がるだろうが!!」


「……悪い。……自分の不甲斐なさに驚いた。」


シャムシエルが下を向いて呟く。

ハスディエルが怒りながらため息をつく。


「初めてだ…こんなに自分に失望したのは。」


シャムシエルが苦しそうな顔をして言う。


「……オレも初めて見たよ。お前のそんな顔……」


ハスディエルがシャムシエルから手を離す。


「…力が足りない。…守りたいのに…」


シャムシエルが拳をにぎりしめる。


「…だから、オレ達が来たんだろ?1人で背負い込むな。……それにしても、驚いたな。…あの状況で自分の事よりお前の事を心配するなんて。」



「…凛子はいつも、そうなんだよ。自分の事より周りを気にする。」


……もっと、自分を大事にして欲しいのに。


シャムシエルがため息をつく。



「…………。」


ハスディエルがシャムシエルをじっと見て黙る。



……話には聞いていたがここまで変わってるとは。

こんなに表情の変わるシャムシエルは驚きだな…特に女といる時は

笑顔しか見せてなかったのに。それに、凛子ちゃんも…人間の姿してるのが不思議なくらいだ…


ハスディエルがシャムシエルの肩に手を乗せる。


「とにかく!凛子ちゃんの前でしみったれた顔をするな!」


「分かった。……気をつける。」


着替えてきた凛子ががリビングに入ってくる。


「ハンバーグ、作りますね。」


笑顔でそう言うとキッチンへ向かう。



「楽しみにしてるね♪」


ハスディエルが笑顔で凛子に言う。

凛子がキッチンでハンバーグを作り始める。


……これ以上、もやしさんに負担かけないようにしないと。

今日みたいにいつ襲われるか分からなくて怖いけど…顔に出さないように……出来るだけ…笑顔で………



凛子が震える手で包丁を握りしめる。



つづく。


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