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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
25/41

第25話 忍び寄る者…

朝の10時にマンションのエントランスを歩く3人。


「……誰が迎えに来るんだ?」


霧山が不思議そうな顔でシャムシエルに聞く。


「すぐに分かる。」


マンションを出てすぐの車道に黒塗りの高級車が止まっていた。中からスーツを着た男性が出てくる。霧山と凛子が何が起こっているか分からず目を丸くして驚く。



「おはようございます。シャムシエル様、お迎えにあがりました。……どうぞ。」



スーツを着た男性が車のドアを開けて3人を誘導する。


「……凛子と霧山も、乗って…」


シャムシエルが驚く2人に言う。そして、車に乗り込む3人。


「…どういう事だ?」


霧山がシャムシエルに聞く。凛子は黙ったまま驚いていた。


……高そうな車。どこに行くんだろ?


「混んでるのが嫌だから、ホテルのプールを貸し切った。」


シャムシエルが笑顔で霧山に答える。


「貸し切った?!……本気か?」


霧山が驚きながらシャムシエルに言う。凛子が唖然とする。


「貸し切りの方がゆっくり泳げるだろ?」


シャムシエルが霧山に言う。霧山が大きな溜息をつく。


「…やる事が、すごいな。まさか、貸し切るとはな…」



……人間の多いところは苦手なんだよなぁ。

金ならいくらでもあるし、送り迎えも頼めるしな。


凛子が驚いたまま固まっていた。


「…凛子?……大丈夫か?」


シャムシエルが心配そうに凛子の顔をのぞき込む。


「………ホテルのプールを貸し切るって……すごいお金がいるんじゃないんですか?」


凛子が心配そうな顔でシャムシエルに聞く。


「たいした金額じゃないよ。」


シャムシエルが笑顔で凛子の頭を撫でる。


……本当に、いろいろな事を気にする子だな。

さつきと大違いだな。


ホテルに到着してプールに案内される3人。霧山とシャムシエルは水着に着替えてプールサイドにいた。



「…ゆっくり泳げるが、金は大丈夫なのか?…半分、出そうか?」


霧山がシャムシエルに心配そうに聞く。


「金なら余ってるよ。…大丈夫だ。」


シャムシエルが笑いながら言う。


「…本当か?…無理するなよ。」


「俺は物欲がないからなぁ…。使うところがないんだよ。株のおかげでどんどん貯まっていくんだよなぁ…」


シャムシエルが困った顔で霧山に言う。


……どんどん貯まっていくって。

どれだけ持ってるんだこいつ。


霧山が呆然としたままシャムシエルを見る。着替えが終わった凛子がシャムシエルと霧山の所に歩いてくる。


「…凛子、そんなの、着てたら水着が見えないよ。」


シャムシエルが凛子が水着の上に着ている薄手のパーカーを脱がせようと手をのばす。


「…!…自分で脱ぎますよ。」


凛子が焦りながらシャムシエルの手をとめる。


「水に入る時に脱げば、いいだろ?」


霧山が呆れながらシャムシエルに言う。シャムシエルと霧山を見て凛子の顔が赤くなる。


…そっか、男の人は水着だと上半身、裸なんだ。


「…?……凛子、顔が赤いぞ?…熱でもあるのか?」


霧山が心配そうに凛子に聞く。


「…え?…顔、赤い…ですか?」


凛子が焦りながら霧山に聞く。シャムシエルが意地悪そうに笑いながら凛子の頬をつつく。


「…男の裸を見て、照れてるんだろ?」


「…!?」


凛子がシャムシエルに言い当てられて黙る。


「…?…照れる?……男が上半身、裸なんて珍しくもないだろ?」


霧山が不思議そうな顔でシャムシエルに聞く。


「でも、少しは慣れてもらわないとなぁ。…触ってもいいよ。」


シャムシエルがにこにこしながら凛子の手を取って自分の体を触らせようとする。


「…!!??!!?!……な、なに、するんですか!」


凛子が顔を真っ赤にして慌てる。



「…何をそんなに、慌ててるんだ?」


霧山が凛子を見て驚く。


……えらく、慌ててるな。一緒に暮らしているんだし、見慣れてるんじゃないのか?

………まさか。


霧山が驚いたままシャムシエルの顔をじっと見る。


「…何だ?…俺の顔に何か付いてるか?」


シャムシエルが不思議そうな顔で霧山に聞く。

凛子はシャムシエルから離れてパーカーを脱ぎ始める。



「……もしかして…まだ…手を出してないのか?」


霧山が凛子に聞こえないようにシャムシエルの耳元で呟く。


「………俺って、そんなにガツガツしてるように見えるのか?」


シャムシエルが目を丸くして霧山に聞く。


「いや、そうじゃないが。…まぁ、一緒に暮らしてるし……そういう雰囲気になったり…するだろ?」


霧山が言いにくそうに話す。


「……毎晩、一緒に寝てるけど……なんて言っていいんだ?……したいけど…まだしたくない?感じなんだよな…」


シャムシエルが悩みながら霧山に話す。


「一緒に寝てるのに?………凛子が大人になるまで我慢ってやつか?」


霧山が驚きながら聞く。



「ん~大人になるまで?……そういう感じなのかな?……別に我慢してる訳でもないんだよな。無理やりじゃなくて…少し、強引に押し倒す事も、出来ない訳じゃないけど……なんか、そういう事はしたくない。……どうしたんだろな、俺。こんな感情は初めてだ。」



シャムシエルが難しい顔をしながら話す。



「……長く生きてるのに、初めての事もあるんだな。」


…こいつがこんなに悩んでるのを初めて見たな。


「凛子と出会ってから初めての事、ばかりだよ。…あの子は本当に不思議な子だ。」



……さっきから2人で何の話してるんだろ?


凛子がパーカーを脱いでそばに置いてある椅子にかける。


そういえば…プール、何年ぶりだろ?学校で入ったのが最後じゃないかな?


凛子がプールをじっと見る。


「凛子、可愛い。よく似合ってるよ。」


シャムシエルが笑顔で凛子を見ながら話しかける。


「…か、可愛くないですよ。」


凛子が頬を染めながら下を向いて言う。


「水着だと体のラインがよく分かるね。……やっぱり、細いよ。」


シャムシエルが凛子の体をじろじろ、見ながら言う。


「そんなにじろじろ見ないで下さい!」


凛子が耳まで真っ赤にして自分の手のひらをシャムシエルに向けて自分が見えないようにする。


「……私は端で泳いでるから、勝手にいちゃついててくれ。」


霧山が呆れながらシャムシエルと凛子に言う。


「…?一緒に泳がないのか?」


「新婚の邪魔をする気はない。…私は泳ぎたかっただけだからな。」


そう言うと霧山がプールに入って泳ぎ始める。



「もやしさん、仮面を付けたまま、入るんですか?」


「一応、外しておくか…」


シャムシエルが自分で仮面を外そうとして手を止める。


「…?…どうかしましたか?」


「凛子が外して。」


「…はい。」


凛子が不思議そうな顔をしながらシャムシエルの後ろにまわって仮面を付けている紐に手を伸ばす。


「違うよ、こっちから外して…」


シャムシエルが笑顔で凛子の真正面に立って少し屈む。


「……え?!」


「早く、外して。」


シャムシエルがにこにこしながら凛子に言う。

凛子が顔を赤くしながら仮面を止めている紐に手を伸ばす。


……わざとやってる。顔が近い…


紐を解いて仮面をそばに置いてあるテーブルの上に置く。


「ありがとう。…じゃあ、入ろうか?」


シャムシエルが笑顔で凛子に言うと先にプールに入る。


「凛子もおいで。」


プールに入ったまま、手を伸ばして凛子に声をかける。

凛子がプールをじっと見る。



「…?……どうした?」


「…え?!……は、はい。…入ります……」


そう言いながらも凛子は動かない。


「……?…もしかして…」


「え?……な、なんですか?」


凛子が焦り始める。

シャムシエルが凛子をじっと見る。


「もしかして……凛子、泳げないの?」


「…!?……へ?……そ、そ、んな訳………」


シャムシエルが疑わしい顔で凛子を見る。


「……泳げません。水、怖い…です。」


青い顔をした凛子が下を向いて、小さな声で言う。


……なるほど、泳げないからプールに行くのを悩んでたのか。


「…おいで。俺がいるから大丈夫だよ。」


シャムシエルが微笑みながら凛子に言う。

凛子が恐る恐る、プールに足を入れる。


「……本当に、泳げないんですよ。」


凛子が不安そうな顔でシャムシエルに言う。


「大丈夫。…おいで。」


シャムシエルが手を伸ばす。恐る恐る、プールに入った凛子がシャムシエルにしがみつく。


「…絶対、離さないで下さいね。」


凛子が泣きそうな顔をしながらシャムシエルに訴える。


「もちろん。…離すわけないだろ?」


シャムシエルが凛子を抱きしめながら笑顔で言う。



……凛子には悪いけど、可愛いな。


シャムシエルが凛子の頬にキスをする。

凛子が焦りながら頬を染める。


「…!?…こ、こ、こんな所でな、な、何してるんですか?!」


「水を怖がってる凛子が可愛いから…」


シャムシエルがにこにこしながら凛子に言う。


「…なに、わけの分からない事…言ってるんですか…」


「可愛いんだから、仕方ないよ。」


…本当に、何でもハッキリというんだもん。…恥ずかしい。

水の中、怖いけど…もやしさんがいるから少し安心…


「……!?」


……水が怖かったから気づいてなかったけど、もやしさんと体がすごいくっついてる。………急に恥ずかしくなってきた。



耳まで真っ赤になった凛子がシャムシエルに言う。



「…このまま…だと、もやしさん、泳げないし……わたし、水から出てもいい…ですか?」


「…いいよ、泳げなくても。せっかく、プールに来たんだし。水の中で少し歩いてみる?」


「……い、いえ、わたしはいいので。………もしかして、もやしさんも泳げないんですか?」


「いや、泳げるよ。」


「……本当に?」


凛子が疑わしい顔でシャムシエルに聞く。


「……泳げるよ。…じゃあ、見せようか?」


シャムシエルが凛子をプールの縁に座らせる。


「何泳ぎが見たい?」


「………じゃあ、バタフライはできますか?」


「…バタフライ?…出来るけど。…普通、クロールとか言わないか?」


シャムシエルが焦りながら凛子に聞く。


「…たしかに、そうですね。…クロールでもいいですよ。」


凛子がにこにこしながらシャムシエルに言う。


「…いや、バタフライでいいよ。」


シャムシエルが焦りながらも凛子から少し離れてバタフライで泳ぎ始める。


…本当に泳げるんだ、すごい。



「…すごい、ちゃんと泳げるんですね。……!!」



シャムシエルが不穏な空気に気が付き顔を上げる。


…!!

何だ?この嫌な気配…



プールの縁に座っている凛子の周りに大きな水しぶきが出て凛子が水の中に引き込まれる。


「…!!…凛子!!」


シャムシエルが急いで凛子の傍に行く。霧山も異変に気づく。

水の中でもがく凛子の足首を何者かが掴んでいた。シャムシエルが凛子を引き上げると足首を掴む手が消える。



「…ごほっ!…ごほっ! 」


凛子が苦しそうに咳き込む。シャムシエルが凛子を抱きしめる。



……さっきの気配。まずいな…上位の悪魔だ。しかもわざとちょっかいを出してきた…。


「…も、やしさん……さっき、…ごほっ…足首を……」


「……大丈夫。…必ず、守るから。」


シャムシエルが凛子を強く抱きしめる。



……まずい。上位悪魔、相手だと…俺だけじゃ無理だ。

本当に、…守れるのか?



シャムシエルの顔に焦りが見える。

凛子が咳き込みながらシャムシエルの顔をじっと見る。


……もやしさん?……焦ってる?

さっき、足首を掴まれた。


「もしかして…わたしの……せいですか?」


凛子が心配そうな顔でシャムシエルに聞く。


「…違うよ。…俺のせいだ。…ごめん、凜子を巻き込んで。」


元々、穢れなき魂を持つ人間は悪魔(やつら)に狙われやすいけど……天使(おれ)と一緒にいるから目をつけられた。



「…大丈夫か?!」


霧山が凛子とシャムシエルのそばにやって来た。


「…はい。」


凛子が返事をする。


「とにかく、上がろう。」


シャムシエルが凛子を抱えてプールから上がる。

霧山もプールから出る。ホテルの従業員が駆け寄る。


「…大丈夫ですか?」


「足がつってしまったみたいで…今日はもう帰ります。」


シャムシエルがホテルの従業員に話す。3人は服に着替えてホテルの車で家に帰る。



「…何があったんだ?」


霧山がシャムシエルに聞く。


「…ちょっと、厄介なのに目をつけられた。大丈夫だ、俺が守るから…」



「…どういう事だ?…説明しろ!」


霧山がシャムシエルに詰め寄る。


「…いや、人間がどうこうできる話じゃ…」


「たしかに、人間じゃ出来ない事の方が多いが、何でも1人でどうにかしようとするな。私も凛子もいるし…お前にも仲間がいるんだろ?」



シャムシエルが目を見開いて驚く。


「……仲間?」



「もやしさん……」


凛子が心配そうな顔でシャムシエルを見る。霧山がシャムシエルをじっと見る。



「…仲間…か。たしかに……1人でどうにかしようと考えてたよ。」


シャムシエルの肩にプットが乗って微笑む。シャムシエルがプットの耳元で凛子と霧山に聞こえないように呟く。シャムシエルの話を聞いたプットが天界に向かって飛んでいく。

凛子と霧山にはプットが見えないので不思議そうな顔でシャムシエルを見る。



「…ありがとう、霧山。…お前の言う通りだ。俺にも仲間がいる。助けを借りるよ。……まずい相手に、目をつけられた。」


シャムシエルが霧山に話し始める。


「…まずい、相手?」


「上位、悪魔だ。俺よりかなり強い。」


「さっき、凛子が溺れたのは?…そいつのせいか?」


「…ああ。わざとらしくちょっかいをだしてきた。…たぶん、宣戦布告だろうな。」



凛子が不安そうな顔でシャムシエルのシャツの裾を掴む。



つづく。



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