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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
23/41

第23話 引っ越してきた男

時計の針は朝の8時を過ぎていた。


「…いつまで寝てるんですか?!…起きてください!」


凛子が寝ているシャムシエルの肩を揺らして起こそうとしていた。


「今、…何時?」


シャムシエルが眠そうな顔で凛子に聞く。


「8時過ぎです。…朝ごはん、出来てますよ。」


「………8時?!……もうちょっと寝かして…」


シャムシエルが掛け布団の中に潜り込む。


「ダメです!……起きてください。」


シャムシエルの肩を揺らしながら凛子が言う。

掛け布団の中から顔を出したシャムシエルが凛子の後頭部に手を伸ばして凛子の顔を自分の顔に近づける。


「……じゃあ、おはようのキスして。」


凛子の顔が真っ赤に染まる。


「…!!……な、何、言ってるですか!」


シャムシエルが微笑みながら言う。


「…ほっぺたでいいから。……だめ?」


「………………。」


凛子が顔を真っ赤にしたまま悩む。


……いつまでもだめって言ってたらよくないよね。

恥ずかしいけど…



「……凛子?……怒った?」


シャムシエルが凛子から手を離して黙ったままの凛子の顔を焦りながら覗き込む。



「………ほっぺた………なら…………」


凛子が小さな声で言うとシャムシエルの頬にキスしようと顔を近づける。



「……へ?」


予想外の言葉を聞いてシャムシエルが驚く。

凛子の唇がシャムシエルの頬に触れそうになる直前にシャムシエルのスマートフォンが鳴る。




「……!!?!!」


凛子が驚いてシャムシエルから離れる。



……あと、ちょっとだったのに…誰だよ。


シャムシエルがイラッとしながらスマートフォンを手に取る。

相手は霧山だった。



「………霧山か。………何の用だ?」


シャムシエルが不機嫌なまま電話に出る。



「何だ?…機嫌悪そうだな。」


霧山が驚きながら話し始める。

凛子が慌てて寝室を出ていく。



………朝から何してるんだろ?……恥ずかしい。


ナマケモノのぬいぐるみに顔を埋めながらリビングのソファーに座る。霧山と話が終わったシャムシエルがリビングにやってきてナマケモノを抱えて座っている凛子をじっと見る。



……せっかく、いいとこまでいったのになぁ。

でも凛子からキスしようとしてくれたのは驚きだな。


「おはよう、凜子。」


「おはようございます。……朝ごはん、用意しますね。」


ぬいぐるみに顔を埋めたままの凛子がそう言うと立ち上がってキッチンへ向かおうとするが、後ろからシャムシエルが凛子を抱きしめる。



「…さっきの続きは?」


シャムシエルがにやにやしながら凛子に言う。

凛子の顔が耳まで赤くなる。



「……えっと………とりあえず………朝ごはん………………!!」



そう話す凛子の頬にシャムシエルがキスをする。

凛子が顔を赤くしたまま驚く。


「……!!」


「明日は凛子からキスしてくれると嬉しいな。」


シャムシエルが笑顔で言う。



「………え?………明日?……えっと……」


凛子が下を向いたまま小さな声で言う。



「そうだ。霧山が今日、引越しらしい…」


シャムシエルが思い出したように話し始める。


「今日?!」


凛子が驚く。


「…うん、今日。もう始まってるらしいけどな。」


「じゃあ、手伝いに行かないと…」


「いや。全部、業者任せだから大丈夫らしい。移動が終わったらうちに来るって言ってた。」



「……たしか、下の階って言ってましたよね?」


「そうだな。ミカエルが住んでた家だろ?…後で見に行くか。」



2時間ほどしてインターホンが鳴る。

玄関の前には霧山が立っていた。

液晶画面で確認すると凛子が玄関へ向かう。


「おはようございます。…もう引越し、終わったんですか?」


「おはよう。とりあえず、荷物の移動は終わったよ。」


霧山が凛子に微笑みながら話す。

シャムシエルも玄関へやってきた。



「…もう、終わったのか?早速、招待してくれよ。」


シャムシエルがニヤニヤしながら霧山に言う。



「なんだ?…もう機嫌はいいのか?…変なやつだな。」


霧山が呆れた顔でシャムシエルに言う。



「お前が変なタイミングで電話してくるからだよ。」


シャムシエルが不貞腐れた顔で言う。


「はぁ?…何の事だ?」


霧山が意味が分からず困惑する。


「何でもないですよ。……何か手伝える事ありますか?…それとも少し休憩しますか?」


凛子が少し焦りながら霧山に言う。


「少し一息入れたいな。」


「それなら、コーヒー入れますね。」


凛子がキッチンへ向かう。

霧山とシャムシエルがリビングのソファーに座る。



「……変なタイミングってなんだ?」


霧山がシャムシエルに詰め寄る。


「変なタイミングは変なタイミングだよ。……あとちょっとだったのに……」


シャムシエルが子供みたいに拗ねながら言う。


「……朝から何をしようとしてたんだ?」


霧山がため息をつく。




「な、何もしてませんよ!」


凛子がトレイに乗せたコーヒーを運びながら慌てて話に入ってくる。


「凛子。変な事されそうになったら、いつでもウチに来ていいからな。」


霧山が凛子に自分の家の鍵を渡しながら言う。


「はい。…分かりました。」


凛子が鍵を受け取る。



「……おいおい、何だよ。また変人扱いか?」


シャムシエルが不貞腐れる。


「変な人だから仕方ないですね。」


凛子が笑いながら言うと、コーヒーをテーブルに置いてシャムシエルの隣に座る。



「…やっと引越しできたよ。最近、忙しくて時間がとれなくてな。…仕事も一段落ついたし、少しゆっくりできるよ。」



「お仕事、忙しかったんですね。」


凛子が心配そうに霧山に言う。


「でも一段落ついたからな。……明日は2人で出かけるか?」


霧山が凛子に笑いながら言う。


「どうして2人なんだ?…俺は?」


シャムシエルが霧山に言う。



「何だ?…兄妹、水入らずについてくる気か?」


霧山が不満そうに言う。

2人のやり取りを見て凛子が困りながら微笑む。



「そういや、出かけるのにおすすめの場所はあるか?」


シャムシエルが霧山に聞く。


「…おすすめ?……どこがいいだろうな?」


霧山が悩む。



「…………。」


……他の人はどこに出かけるんだろ?

全然、思いつかない…


凛子が黙ったまま悩む。



「……映画とか、水族館…あと遊園地もいいかもな……」


霧山がシャムシエルに言う。


「そうか。…後で調べてみるか。…凛子は行きたい所ある?」



映画……最近、何してるか知らないし。


「水族館と遊園地は楽しそうですね。」



「デートスポットってやつだな。」


霧山がニヤニヤしながら凛子に言う。



「…え?………デート?」


凛子が驚きながら頬を染める。


……そっか、2人で出かけるって事はそういう事になるんだ。



「…凛子、顔が赤いよ。」


シャムシエルがニヤニヤしながら凛子の頬をつつく。


「え?!……赤くなってないです!」


凛子が焦りながらシャムシエルの手をのける。

霧山が微笑みながら2人の様子を見る。




「…話は変わるが………明日、室内プールに行くのはどうだ?……最近、仕事ばかりで体がなまってるから体を動かしたくてな。…凛子も体力作りにいいだろ?水の中だと体に負担が少ないし。」


霧山が凛子に言う。

凛子が難しい顔をする。


「えっと……プール…ですか?」


「嫌か?…水の中を歩くだけでもいい運動になるぞ。」


霧山が不思議そうな顔で凛子に言う。



「……嫌…というか……えっと……あっ、水着を持ってないので……」


凛子が焦りながら答える。



「水着?」


シャムシエルの目が輝く。


「水着、持ってないのなら……」


霧山がそう言いかけると同時にシャムシエルが言う。


「今から、水着を買いに行こう。」


シャムシエルが嬉しそうに凛子を見る。

凛子が疑わしい顔でシャムシエルを見る。


……水着に凄い反応してる。



「…でも、洋服を買ってもらったばかりですし…それに霧山さんの荷解きも手伝わないと…」


「気にしないでいいって言ったろ?…さて行くか。」


凛子の頭を撫でてからシャムシエルが立ち上がる。


「荷解きは…少しずつするから大丈夫だ。…行くか。」


そう言うと霧山も立ち上がる。



「…どうして、お前もついて来るんだ?」


シャムシエルが不服そうに霧山に言う。


「お前がろくでもない水着を選びそうだから監視役でついて行くんだよ。」


霧山がシャムシエルを疑わしい顔で見ながら言う。



「……………。」


…どうしよう?

本当に水着買って、プールに行く話になっちゃった。


凛子が黙ったまま悩む。



「凛子…プールに行くの、嫌か?」


霧山が心配そうに凛子に聞く。


「……いえ、えっと…水着って結構…高い…かもしれないですよ?」



「気にしなくていいぞ。こいつ、金持ちみたいだからな。」


霧山が凛子に言う。


「お前が言うなよ…」


シャムシエルが霧山に言う。

そして3人でショッピングモールへ出かける。

水着売り場でシャムシエルの目が光る。



「凛子、これは?」


シャムシエルが布地の少ない、ビキニを手に取って凛子に見せる。


「…無理ですよ。」


凛子が呆れた顔で言う。


「そんな、露出の多い水着、ダメに決まってるだろ?…これはどうだ?」


霧山がシンプルなワンピースの水着を凛子に見せる。


「そんな、普通の水着じゃ面白くないだろ?」


シャムシエルが霧山に文句を言う。

凛子が困った顔で笑う。


…どうして2人とも、そんなに楽しそうに水着、選ぶんだろ?




「……じゃあこれは?」


フリルのたっぷりついたビキニを手に取って凛子に聞く。


「…だからビキニは無理ですよ、そういうのはスタイルのいい人が着るものですよ。」


凛子が困った顔でシャムシエルに言う。


「…凛子は体が細いけど似合うと思うよ。」


シャムシエルが目を輝かせて凛子に言う。



「…まったく!ただの変態だな…」


霧山が呆れた顔で言う。


「……店員さんに相談してきます。待っててください。」


凛子が店員の所へ行く。



「そんな水着を着せて、他の男に見られてもいいのか?」


霧山が呆れながら言う。


「……凛子の反応が面白いから言ってみただけだよ。」


シャムシエルが意地悪そうな顔で笑いながら言う。



「子供か…」


霧山がため息をつく。

少し離れた所で凛子が女性店員にどの水着がいいか相談していた。


「……それでしたら、こちらはどうですか?」


女性店員が胸元にフリルのたっぷり入ったスカートのついたワンピースタイプの水着を手に取って凛子に見せる。



…これなら胸がなくてもごまかせるし露出も少ない。


「いいですね。」


凛子が水着を手に取る。


「今年の新作です。お似合いになると思いますよ。」


女性店員が笑顔で答える。


「お色はどうされますか?ピンクと水色と…」


女性店員がそう言いかけたと同時に…


「ピンクだな。」


シャムシエルが笑顔で凛子に言う。


「いや、水色だろ?」


霧山が凛子に言う。



「…………。」


この2人、いつの間に来たんだろ?

しかもふたりとも違う色、言ってるし……


凛子が悩む。

女性店員も苦笑いをしながら凛子に言う。


「……黄色もありますよ。」


「黄色でお願いします!」


凛子がほっとした顔で女性店員に言う。



「ピンクの方が似合うと思うけどなぁ……」


シャムシエルが不服そうに言う。


「水色の方が綺麗だと思うが黄色もいいな。」


霧山が言う。



…他の色があって良かった。

どっちかの色にしてたら後で面倒くさそう…


凛子が苦笑いをする。

水着を買ってショッピングモールを出てタクシー乗り場へ向かう。


「霧山さん、夜ご飯、どうしますか?」


凛子が霧山に聞く。


「…そうだな。外で食べるか…それとも家で食べるか…どっちがいいかな?」


霧山が悩みながら答える。


「ピザでも買って帰って霧山の家に行くか?」


シャムシエルがニヤニヤしながら霧山に言う。



「ダンボールだらけの部屋でもいいならかまわんが。」


「じゃあ、決まりだな。」


シャムシエルがニヤリと笑いながら言うと凛子の手を握る。

凛子が不思議そうな顔でシャムシエルを見ながら言う。


「……?……もう、闇堕ちしないので手を繋がなくても大丈夫ですよ?」


「それ、昔の話だろ?ただ、手を繋ぎたいだけなんだけど…」


シャムシエルが焦りながら答える。



……しっかりしてるようでたまに抜けてる所があるな。

そこも可愛いんだけど。



「………?」


凛子が黙ったままシャムシエルを見る。

霧山が必死で笑いを堪えながら言う。


「…さて、帰るか。」



つづく。



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