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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
20/41

第20話 譲れない気持ち


「………何よ……こんな、女…どこがいいって言うのよ!」


女の天使が必死な顔で訴える。



「……こんな…女?……」


シャムシエルの顔が曇る。



「……ただのガリガリブスしゃない!!…どこがいいのよ!」


シャムシエルの眉間にしわがよる。

凛子が驚いて目が点になる。



「はぁ?!人の女の悪口、言ってんじゃねーぞ!!」


シャムシエルがキレる。



「こんな、まな板女より私の方が美人だしスタイルもいいわ!!」


女の天使が必死に訴える。



「お前!…突然、現れて、人の女を殴るわ、悪口言うわって最低だな!!」



……………ガリガリブス。

………………………まな板………


分かってる事だけど改めて言われるとへこむ……


凛子が頭に大きな石が乗っているかのようにその場にへたり込み床に両手をついて落ち込む。



シャムシエルが凛子の周りのどんよりとした空気に気づいて恐る恐る振り返る。




………うわっ!!

凛子の周りの空気がどんよりしてる。

すごい、落ち込んでるな…



「……凛子、大丈夫か?……あんな女の言う事、気にしなくていいよ。」


凛子の背中を擦りながらシャムシエルが慰める。



「……いえ、彼女の言う通りです。……ガリガリブスで……まな板……です。」


落ち込んだまま小さな声で呟く。



「………ガリガリだけど可愛いよ。……でも、まな板ってどういう意味だ?」


シャムシエルがきょとんとした顔で凛子に聞く。




「胸がない事をそう言うのよ。」


女の天使がハッキリと大きな声で言う。

凛子がさらにへこむ。



………胸がない?

言われてみれば……そうかもな。



シャムシエルが凛子の体をじっと見る。

シャムシエルの視線に気づいて凛子が顔をあげる。



「……そんなにじろじろ見ないでくださいよ。」


凛子が半泣きになりながら恨めしそうにシャムシエルを見る。



「本当に胸がないか、触ってみないと分からないし…確かめてもいい?」


シャムシエルがにやにやしながら凛子に言う。



「……確かめなくていいです!……目つきがいやらしいですよ。」


凛子が不貞腐れながら言う。




「……ちょっと!目の前でイチャつくのやめてよね!!」


女の天使が怒る。



「………何しに来たんだ、お前?……いい加減に……」


シャムシエルがそう言いかけると…


「……あの日、待ってたのに…」



………あの日?…




「……さっさと仕事を終わらせてくるって…言ったじゃない!!」


女の天使が切ない顔でシャムシエルに訴える。




「……………。」


……誰だ、この女……名前は………思い出せないな。



シャムシエルが黙り込む。



「…………あなたが堕ちた日よ…あの日、約束したでしょ?」




……俺が堕ちた日。

あの日は昼寝して仕事をサボってて…

ハスディエルが声をかけてきて……

上司に怒られて…ウリエルにお小言、言われて……………

他に何かあったか?



「……………。」



さらにシャムシエルが黙り込む。

黙り込むシャムシエルを凛子が焦りながらじっと見る。



………もしかして、この女の人の事、覚えてないのかな?




「……あなたにとっては何人もいる女の中の一人だろうけど……」



女の天使が辛そうな顔でシャムシエルに訴える。




「……………。」


…凛子が聞いてる前で……昔の話はして欲しくないな。

早く思い出さないとやばいな…


シャムシエルが焦りながら黙ったまま悩む。

悩むシャムシエルを見て凛子が呆れる。



……何人かのうちの一人。

しかも覚えてないみたい。

あの女の人…辛いなぁ…




「……覚えて…ない………のね?」


女の天使が諦めたように呟く。




……あっ!そういや、サボってる時に話しかけてきた女がいたな。

もしかして、その時の女か?

約束……してたのか?

まったく、覚えてない。


……とりあえず、話を合わせておくか。



………………。


…とりあえず……


………話を合わせ…る……?





「……あの、話の途中で…すいません。」



凛子が女の天使に話しかける。



「……なによ。」


「……えっと。昔、彼と付き合っていたって事ですよね?」


「…………。」


……私はそう思ってたけど。

あいつは私の事、覚えてない…




「あの……わたしの方が後から彼に出会って…こんな事を言うのは、変かもしれないんですけど……」



凛子がおどおどしながら話し始める。

女の天使が黙って凛子の話を聞く。



「……きっと昔だったら、どんなに大事にしてる物でも誰かが欲しがったら、簡単に譲ってきたんですけど……でも……」



…………この娘、何が言いたいの?



凛子が女の天使の目を見てハッキリと言う。


「………彼は……譲れない……です。」




「……え?」


シャムシエルが驚きながら頬を染める。



…………何なのよ、この娘。

腹が立つけど…何だか憎めない。

そんな真っ直ぐな目で言われたらもう何も言えないじゃない…

それに、あの、シャムシエルの顔…




シャムシエルが女の天使の前で頭を下げる。



「………悪い。君の事は…覚えてない。顔も名前も、約束の事も…」




……適当に話を合わせて誤魔化せばよかったのかもしれないけど。もう、昔みたいにいい加減な事はしたくない。



「俺の事が許せないなら、いくらでも殴ればいい。………でも、凛子には手を出すな……彼女は関係ない。」



……分かってたけどね。

私の事を覚えてない事。


…人間に出会って…堕ちて…あなたは変わったのね。

見たことのないシャムシエル……

昔よりいい男になって……本当に腹の立つ人……



パンッ!!


女の天使がシャムシエルの左頬を思いっきり引っ叩く。



「……もう、いい!……あんたみたいなロリコン男、興味がなくなったわ!」



女の天使が強がりを言い放つ。




………痛い。……遠慮なしだな。

……………ん?……ロリコン?



「………マキディエルよ。」


女の天使が不貞腐れながらシャムシエルに言う。



「……え?」


シャムシエルが不思議そうな顔をする。



「私の名前…マキディエル!……今度は忘れないでよ!」




もやしさん……痛そう。

やっとこの人の名前、分かった。




「……今更ですけど………立花凛子って言います。」


凛子がマキディエルに挨拶する。



「……凛子………ごめんなさいね。……痛かったでしょ?」


マキディエルが申し訳なさそうに凛子に言う。



「…いえ、大丈夫ですよ。」


凛子が微笑む。



「………。」


不思議な子ね。

この子を見てると怒ってるのが馬鹿らしくなる。

穢れなき魂を持った人間だから?



「シャムシエルがロリコンだったとはね。……私には勝ち目がないって事ね…」


マキディエルが呆れた顔で言う。



「ちょっと待て。…どうして、俺がロリコンなんだ?」


シャムシエルが焦りながらマキディエルに聞く。



「だって、この子、どう見たって子供じゃない?」


マキディエルが凛子を見ながらシャムシエルに言う。



「………子供。………これでも18なんですよ…」


凛子が諦めたように言う。




「…!!……18?!……14くらいかと思ったわ。」


マキディエルが驚く。

シャムシエルが凛子をじっと見る。



言われてみれば……

童顔………幼児体型………

………ロリコンって言われても…言い返せないか……



「…?」


凛子が不思議そうな顔でシャムシエルを見る。






「………あちゃー、遅かったみたいね。」


ガブリエルが現れる。




「…何だ?……仕事の話か?」


シャムシエルがガブリエルに聞く。



「その子が何かしそうだったから、知らせに来たんだけど……」


ガブリエルがマキディエルを見ながらシャムシエルに話す。



「……………正当な理由もなく、人間を傷つけた。……罰は受けるわ。」


マキディエルがガブリエルに話す。




「……違います、わたし、何もされてないです!」


凛子がガブリエルに慌てながら訴える。



「……凛子、手首にアザがあるし、左頬、赤いわよ。」


ガブリエルが凛子の目を見て話す。



「…えっと、これは……」


凛子が言葉を詰まらせる。



「……マキディエルがしてないならシャムシエルがしたの?」



「……え?!それは違います!………えっと、」



「……俺が………」


シャムシエルが言いかけると同時にマキディエルが言う。



「凛子、いいのよ。…シャムシエルじゃない、私がやったの。」




「……たいした事はないです!わたし、大丈夫です!……だから……」




ガブリエルがため息をつく。


「……そう言ってるけど…どうする?」


ガブリエルが後ろを振り返るとウリエルが現れる。



「……………。」


ウリエルがマキディエル、シャムシエル、凛子を黙ったままじっと見る。そして凛子の前にひざまずく。



「すまない、凜子。私の部下が君を傷つけた。」



そう言うと凛子の左頬に触れる。左頬の赤みが消える。

ガブリエルが左手首のアザを消した。



「……ありがとうございます。……あの、ウリエルさん、マキディエルさんは悪くないんです…えっと、勘違いで…」



「本当に君は不思議な娘だな。…自分を傷つけた者を庇うとは…」


ウリエルが立ち上がる。



「…元はと言えば俺のせいだ。罰するなら俺を…」


シャムシエルがウリエルに言う。



「たしかに、お前のせいだな。」


ウリエルがシャムシエルに言う。



「…でも、傷つけたのは私よ!…シャムシエルは関係ないわ。」


マキディエルがウリエルに言う。



「…わたし、大丈夫です!」


凛子が必死な顔でウリエルの服の裾を掴みながら訴える。



「……ぷっ!……どうするの、ウリエル?」


ガブリエルが吹き出しそうな顔でウリエルに言う。



「………………。」


まったく!何なのだこの3人は…


ウリエルが呆れた顔をする。

不安そうな顔をする凛子の頭をウリエルが撫でる。



「…そんな顔をするな、凛子。……天界にも決まり事がある。守らない者には罰を与えねばならない。」



「……でも………!」



ウリエルのそばにいる凛子をシャムシエルが自分の方に引き寄せる。



「…勝手に凛子に触るなよ。」


むすっとした顔でシャムシエルがウリエルに言う。



「……………子供か。」


ウリエルがため息をつく。



「………マキディエル、罰としてしばらく休みなしだ。今まで通り、真面目に働け。」



「……え?………罰ってそれだけ?」


マキディエルが驚く。



「今回は特例だ。…元々、シャムシエルのせいでもあるし、傷つけられた者が、大丈夫と言っているのだからな。」


ウリエルが呆れた顔で言う。



「…シャムシエル、お前は引き続き真面目に働け。…さぼるなよ。」



「…分かってるよ。」



シャムシエルが不満そうな顔で返事をする。

凛子がウリエルのそばに寄って微笑む。



「ありがとうございます。」



「…今回だけだ。……本来なら降格なのだが……」




「え?……こうかく?」


凛子が不安な顔をする。



「……だから、そんな顔をするな。」


ウリエルが少し困った顔をしながら凛子の頭を撫でる。



………でも…こうかく?ってなんだろ?

凛子が不思議そうな顔をする。



「…………もしかして、降格の意味が分からんのか?」


ウリエルが呆れた顔で凛子に聞く。



「………うっ……えっと、」



…………分からんのに不安になったのか?

まったく、この娘は……そんな顔をされると参る。




「…だから、凛子に気安く、触るなよ…」


シャムシエルが凛子を自分の方に引き寄せる。



「……………やきもちというやつか?」


ウリエルが冷ややかな目でシャムシエルを見る。



「うるせーよ。」


シャムシエルが焦りながらウリエルに言う。



……あの人間嫌いのウリエルがどういう訳か凛子には優しいんだよな。……何か、気になる。



凛子が不思議そうな顔でシャムシエルを見る。



……どうして、ウリエルさんのそばに行くと引き離そうとするんだろ?



「あの、マキディエルさん。…よかったら、また来てくださいね。…しばらくお休み、ないみたいですけど……」


凛子がマキディエルに話しかける。

マキディエルが驚いた後で微笑む。



「…ありがとう。いつになるか分からないけど…」



「…待ってます。」


凛子も微笑む。

ウリエルがマキディエルとカブリエルを見ながら言う。


「………先に戻っていろ。」



「オッケー♪」


ガブリエルがそう言うと2人が姿を消した。

ウリエルが真剣な顔でシャムシエルを見る。



「…今回はたいした事ではなかったようだが…しっかりしろ、シャムシエル。」



シャムシエルがばつの悪そうな顔をする。


「ああ、分かってる。…これからももっと気をつける。」



「………?」


凛子が不思議そうな顔でウリエルを見る。



「…凛子は気にしなくていい。…こちらの話だ。……ではまたな。」



そう言うと姿を消した。




「…もやしさん……」


「凛子、ごめんな。…怖い思いさせたな。」


シャムシエルが凛子の頬に優しく触れながら言う。



「早く、服を着て下さい。…風邪ひきますよ。」


「……え?………だから、風邪ひかないから。………俺が服を着てないと嫌なのか?」



シャムシエルがにやにやしながら凛子を抱きしめる。



「…ちょっと、もやしさん!……近いですよ、というか早く服を着て下さい。」


凛子が真っ赤な顔をして慌てる。



「…無事でよかった。……本当に焦った。俺のせいだ……」



「もやしさん…」



凛子がシャムシエルの背中に手を回す。



「……ん?……これ…何ですか?……少し…膨らんでる?」


シャムシエルの肩甲骨の辺りに違和感を感じて凛子が言う。

シャムシエルが凛子に背中を向ける。



「…ああ、羽根が出てくる場所だよ。縦に筋があるように見えるだろ?」



「……ここから、羽根が出てくるんですか…」


本当だ、縦に筋があるみたい。



「天使と人間は体の構造はほぼ同じだけど人間には羽根がないからね、凛子の体にはこの筋はないだろ?」



「そうですね。人間には羽根がないから。……体の構造はほぼ同じなんですね。……やっぱり早く服を着ないと…」



「…だから、風邪はひかないから。あと病気もしないし。人間より天使の方が体は丈夫なんだよ。」



そう言うと寝間着を着るシャムシエル。


「髪の毛、乾いたな…」


「本当ですね。」


凛子が笑う。





つづく。


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