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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
18/41

第18話 シャムシエルの過去


天界の木陰で横になるシャムシエル。



「見つけた!…こんな所にいたのね。」



1人の女の天使がシャムシエルのそばにやって来る。



「………おや、美人が俺に話しかけてくるなんて今日はツイてるな。」


シャムシエルが女の天使に微笑みかける。



「もう!最近、会ってくれないから探してたの!」



女の天使が不貞腐れながらシャムシエルに抱きつく。




……………最近、会ってない?

誰だこの女………えっと、名前…………覚えてないな。

とりあえず、話を合わせておくか。



「…ごめん。最近、仕事が忙しくて…」


女の天使の頬にキスをする。



「…ねえ、今夜はあいてる?」


「もちろん。美人の誘いは断らない主義だからね。」


シャムシエルが微笑む。



「…約束よ。」



そう言うと女の天使が嬉しそうにシャムシエルに抱きつく。

少し離れた場所から男の天使がシャムシエルに声をかける。



「おい!シャムシエル、お前の上司が探してたぞ!」



「……そうか。……面倒だな。」


シャムシエルがため息をつく。



「早く、行かないとまずいぞ。…かなり機嫌が悪そうだった。」



「…はいはい。すぐ行くよ…」


そう言うとため息をつきながら立ち上がる。



「…さっさと仕事を片付けてくるよ。」


シャムシエルが女の天使に微笑みながら言う。


「うん。……待ってる。」



「……俺の()()()はどの辺にいた?」


話しかけてきた男の天使に声をかける。



「こっちだ。オレもそっちの方に行くから案内してやるよ。」



彼の名はハスディエル。

シャムシエルと古い付き合いで気を使わない友人の1人だった。



女の天使から少し離れたところでハスディエルがため息混じりに言う。



「…また新しい女にちょっかい出してるのか?…いい加減にしとかないとまた修羅場になるぞ…」



「今までもそうだが…俺から声をかけた事はないぞ。…女の方から寄ってくるんだ。」



「…モテモテだな。色男さん」


ハスディエルがニヤニヤと笑いながら言う。



「永い人生、楽しんだ方がいいだろ?」


シャムシエルがニヤリと笑う。



「……本当に自由な奴だな。」


ハスディエルが呆れる。

シャムシエルがぼんやりと呟く。



「……女も、仕事も、何もかもつまらないよ。……天使の存在する理由ってあるのか?」



ハスディエルがシャムシエルに諭すように言う。


「……あるよ。お前にもオレにも存在する理由が。でないと生まれてきてないはずだぞ。」


「……そうか?……お前は前向きだな。」


シャムシエルがため息をつきながら言う。



「……そうでも、思ってないと天使なんてやってらんないよ。」


ハスディエルが笑いながら言う。



「……そうだ。仕事が終わったら人間界(した)行くけど、お前も一緒にどうだ?」



「また人間観察か?…俺はパス。人間なんて見てて何が面白いんだ?」



「面白いぞ。懸命に生きてる姿は見てて飽きないけどな…」





「シャムシエル!こんな所にいたのか!!」


シャムシエルの上司の天使が怒鳴る。




「……何の用だ?また面倒な仕事、押し付けてくるんだろ?」


シャムシエルがむすっとしながら上司に言う。




「まったく!減らず口ばかりたたく奴だ。…詳しい事はこの紙に書いてある。さっさと人間界(した)に行け!」



「えーーー!!!人間界(した)に行くのか?面倒だな…」


書類を受け取りながら不満をもらす。



「うるさい!さっさと行け!!」


上司の天使が怒鳴ってからその場を離れる。



「…やっぱり怒鳴られたな。しかも人間界(した)での仕事って…」


ハスディエルが笑いながらシャムシエルに言う。




「…よりにもよって人間界(した)かよ。…面倒だな、さっさと行って終わらせるか。」


シャムシエルがため息をついているとウリエルが通りかかる。



「…怒鳴り声が聞こえていたと思ったら、お前か。…また仕事をさぼっていたのだろう?」


ため息をつきながらシャムシエルに言う。



「うるせーよ。……今から人間界(した)に降りて仕事だよ。」



「…さぼらず、さっさと終わらせて帰ってくるのだぞ。」



「…はいはい。分かってるよ……」



そう言うとシャムシエルが人間界に降りる。

そして人間界でさつきに出会い、堕ちてそのまま天界に戻ってくる事はなかった…








…………本当に自由な奴だな。

まさか堕ちるとは思わなかったが。

……人間を妻にしたのも驚きだ。



「…………。」


ウリエルが自分の部屋でぼんやりと昔の事を思い出す。

ノックもせずに部屋のドアを開けてガブリエルが入ってくる。



「ねえ、ウリエル。…この件なんだけど…」


ガブリエルが書類をウリエルに見せながら話しかけてくる。



「……何度、言ったら分かるんだ。ノックぐらいしろ!」


ウリエルが険しい顔でガブリエルに言う。



「え?……急に入られて困るような事してるの?」


ガブリエルが笑いながらウリエルに言う。


「そうではない!…最低限の礼儀だ。」



「…は~い。覚えてたら次はノックするわよ。……そういえば、凛子の所に行ってたんでしょ?何の話をしてたの、人間嫌いのウリエルさん?」


ガブリエルがニヤリと笑いながらウリエルの顔を見る。



「………………。」


ウリエルが黙り込む。

ガブリエルが微笑む。


「…凛子の事、気に入ったみたいね。可愛い弟のお嫁さんだし♪」



「……!……いや、別にそんな事は。それにあいつは弟ではない!」



ウリエルが焦りながら答える。











「…………そろそろ、離してくれませんか?」



凛子がシャムシエルを困った顔で見ながら言う。

時計の針は10時を過ぎていた。ベッドの中でシャムシエルが凛子を抱きしめていた。



「もう少しだけ…」


「もう10時過ぎてますよ…」



「キスしていいなら離してあげるよ。」



シャムシエルがにこにこしながら凛子に言うと凛子がシャムシエルの両頬を摘む。



「訳の分からない事を言ってないで離して下さい!」


「痛いよ、凛子!…離してくれ…」


シャムシエルが仕方なく凛子を離すと凛子も手を離す。



「着替えてきますね。」


凛子が自分の部屋へ向かう。

シャムシエルが自分の頬をさすりながら起き上がる。



もう少しくっついていたかったのに。

……手を離したらさっさと部屋を出ていったな。



「俺も着替えるか…」


ため息混じりに1人呟く。着替えが終わるとキッチンへ向かう。



…今日の朝ごはんは何にしようかな?



「…ん?」




キッチンで凛子が朝ごはんを作り始めていた。

シャムシエルが後ろから凛子を抱きしめる。


「…何、作ってるの?」



「…!!!…危ないですよ!」


凛子が驚いて包丁を持つ手をとめる。



「俺の事は気にしなくていいよ。続けて…」


後ろから凛子を抱きしめたままシャムシエルが言う。



「何言ってるんですか?!…危ないので離して下さい!」


凛子が焦りながらシャムシエルに言う。



「何で?…凛子は俺に触られるの…嫌なのか?」


シャムシエルが寂しそうな顔で凛子に聞く。




「…!……嫌では…ない……ですけど……とにかく!危ないので座って待ってて下さい!」


頬を赤くしながら凛子が言う。

シャムシエルがしぶしぶキッチンの椅子に座る。

切った豆腐を鍋に入れておたまにとった味噌をとく。それが終わると卵と出汁を混ぜて卵焼き器に流し込む。味噌の香りと卵を焼く音が聞こえてくる。



………さつきは全く料理できなかったなぁ。

人間の女は皆、料理できないのかと思ってたけど違うんだな。



シャムシエルが微笑みながら、朝ごはんを作る凛子の後ろ姿を見る。テーブルの上に朝ごはんが並べられた。



「…できましたよ。」


「うん。…美味しそうだね。」



凛子が席について食べ始める2人。



「…今日はお仕事あるんですか?」


「今のところ、指示はでてないな。…用があったら向こうから勝手にくるからな…」


シャムシエルが面倒くさそうな顔をする。



「ダメですよ。真面目に働かないと…長い間、離れていたんですから。」



凛子が諭すようにシャムシエルに言う。


「分かってるよ。……さぼるとまた追い出されるな。」



そう言うとみそ汁を飲む。



「美味しい。…凛子は料理も上手いな。」


シャムシエルが微笑みながら凛子に言う。



「ありがとうございます。…でも、もやしさんの方が料理、美味しいですよ。」


凛子が少し照れながら言う。





「…凛子さんの料理も美味しいですよ。」


シャムシエルのお皿のだし巻き玉子を食べてからミカエルが言う。



「…!!……いつも突然ですね。……おはようございます。」


凛子が驚きながらミカエルに挨拶する。


「おはようございます。…いい朝ですね。」



「…何の用だ?…さぼりか?」


シャムシエルがミカエルに声をかける。



「さぼりではないですよ。…休憩です。」


ミカエルが微笑みながら言う。



「…言い方、変えてるだけだろ?」


シャムシエルが呆れた顔で言う。




「セバスチャンさんも朝ごはん食べますか?」


凛子が立ち上がろうとする。


「いえ、結構ですよ。後で紅茶をお願いします。」


ミカエルが微笑む。


……前に会った時もそうでしたがまるで別人になりましたね。

表情も豊かになったし、いきいきとしている。




朝食を食べ終えてリビングでくつろぐ2人に凛子が紅茶を持っていく。



「…どうぞ。」


凛子がミカエルの前に紅茶を置く。


「ありがとうございます。」


ミカエルが笑顔で答える。

シャムシエルの前にも紅茶を置く。


「ありがとう。」



凛子がソファーに座ろうとするとシャムシエルが凛子を自分の方へ引き寄せようとする。



「…!……また膝の上に座らせようとしてますね!…離してださい。」



凛子が抵抗する。


「…何で?…俺の膝の上の方が座り心地がいいよ。」


シャムシエルがにやにやしながら凛子に言う。



「目つきがいやらしいですよ……」


凛子が冷たい目でシャムシエルを見る。2人の様子を見てミカエルが吹き出す。



「……さすが新婚さん、仲がいいですね。」



……新婚?

そっか、結婚したばっかりだ。…まだ自覚ないなぁ。



「…………。」



凛子が少し照れたまま黙る。

そしてシャムシエルの隣に座る。



「……すいませんね、凛子さん。この前、少しだけ彼をお借りしますと言っていたのにお返しするのが遅くなってしまって…」


ミカエルが申し訳なさそうに話し始める。



「…いえ、大丈夫ですよ。」



「…()()()()あってなかなかお返し出来ませんでした。」



……いろいろ?



ウリエルから聞いた話を思い出す。

そして隣に座っているシャムシエルをじっと見る。



「……ん?……どうした?」


シャムシエルが不思議そうな顔で凛子を見る。




………ウリエルさんが遊び人って言ってた。

昔の事みたいだけど……



むっとした凛子がシャムシエルの背中を思いっきりつねる。



「…!……痛っ!……え?!……何、凜子?……どうして、つねるんだ?」



シャムシエルが驚く。



「……別に、何もありませんよ…」



凛子が両頬を膨らませて不貞腐れながら言う。




「………………。」


ミカエルが黙ったまま不貞腐れる凛子を見て笑いを堪える。



………もしかしてウリエルから昔の話を聞いたのかもしれませんね。

やきもち?……でしょうか?

あの無表情だった女の子が…ね。





「………?」


……またほっぺたが膨らんでる。

少し怒ってる?みたいだけど…可愛いな。


シャムシエルがふくらんでる凛子の頬を甘噛みする。



「…!!……何するんですか!!」


凛子が顔を真っ赤にして慌てる。



「美味しそうなほっぺだなと思って…」


シャムシエルがにこにこ笑いながら凛子を抱きしめる。



「…離してください!ほら、セバスチャンがいるんですよ!」



「私の事は…お構いなく。」


ミカエルが微笑む。



「お構いなく…だって。」


シャムシエルがにこにこしながら凛子に言う。



「わたしが気になります!…離して下さい!」


凛子がシャムシエルの両頬を摘む。



「……痛っ!」


シャムシエルがしぶしぶ凛子を離す。

凛子も手を離して隣のソファーに移動する。



「……そこまで、離れなくても…」


シャムシエルが寂しそうな顔で凛子に言う。




「変な事をするからです!」



凛子が頬を赤くしたままシャムシエルに言う。

ミカエルが肩を揺らして静かに笑う。



「本当に、あなた達は面白いですね。」



「……もやしさんが、変な事ばかりするんですよ。」


凛子が少し照れながらミカエルに言う。



「変な事、なんてしてないけどな…」


シャムシエルが不思議そうな顔で言う。






ー天界のウリエルの部屋ー



コンコン(ドアをノックする音)




「……入っていいぞ。」


ウリエルが言う。

女の天使が入ってくる。



「……どうした?何かあったのか?」


「聞きたいことがあって…その、シャムシエルが戻ってきたって…本当?」


女の天使が言いにくそうにウリエルに聞く。




「…本当だ。今はラファエルの下について、人間界での仕事が中心になっているから天界にはほとんど来ないがな…」



「…!……本当…なのね。しかも人間界にいるの?……堕ちたのにどうして?」



「………半分、堕ちたらしいが天使の力を取り戻したのでな。ミカエルが戻る事を許した。」



「………?……天使の力を取り戻した?……そんな事がおきるわけ…」



「私もそんな事はないと思っていたが実際に力を取り戻した上に前よりも力が増していた…」



「どうして?…彼に何があったの?」



…堕ちたのに力を取り戻した?

何があったの…



「…幼い人間の娘が堕ちかけていたあいつを救った。」



「……人間の娘。…彼が堕ちる原因になった女ね。」


……シャムシエルを堕とした女。


女の天使の顔が険しくなる。



「…いや、違う。その女は死んでいる。」


……なんだ、この女。

シャムシエルが手を出した女か?




「…!…え?…どういう事?」



堕とした女じゃない?

…他にもシャムシエルのそばに女がいるの?!


女の天使が驚く。



つづく。






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