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もやしさんの憂鬱  作者: あかなす(前とまとまと)
17/41

第17話 覚悟の指輪、共に生きる…

「おや、早かったですね。」


ミカエルが微笑む。


「話は何だ?…早くしてくれ。」


シャムシエルが焦りながら聞く。


「心配ですか?…大丈夫ですよ。…本当はガブリエルが行く予定だったのですがウリエルが行きたいと言ったので。」



「え?!……ウリエルが言ったのか?」


シャムシエルが驚く。



「凛子さんに話があったようです。…珍しい事もあるものですね。…さて、仕事の話ですが…」










「……指輪の意味って何ですか?」


凛子がウリエルに聞く。



…………シャムシエルが言っていないのなら私から話すべきではないのかもしれんな。



ウリエルが黙り込む。

その様子をみて凛子が焦る。




……なんだろ?

胸騒ぎがする。

指輪の意味って………



「……指輪の意味、教えてください。」


凛子がウリエルを真っ直ぐな目で見る。



……………言うまで聞いてきそうな顔だな。

いずれ、知ることになるだろうから今、言っても問題ないのかもしれんな。




「………………天使同士なら特に意味などないが、天使と人間なら話は別だ。この指輪はひとつの鉱石から2つ作る。その特性からつけた者同士の命を繋ぐ。」



「……命を…つなぐ?…それってどういう事……ですか?」


凛子の鼓動が早くなる。


…何だろ?

いやな予感がする……



「どちらか片方が死ねば……もう片方も死ぬ。命を繋いでいるからな。」



凛子が驚愕する。



……命をつなぐ?

片方が死ねば……もう片方も?


「そんな!!……じゃあ、わたしが死んだら…」


「シャムシエルも死ぬ。」



凛子が慌てて指輪を外そうとする。


……!!

抜けない?!

どうして……



「…1度つけたら外せない。……だから天使達でつけたがる者は少ないのだ。…………正直、驚いたよ。…あの遊び人のシャムシエルが1人の女に…まさか、人間に誓いの指輪をつけるとはな。」



「そんなの、だめですよ…。どうにか外せないんですか?あの人が死ぬなんて、嫌です…」



「……それが、あいつの覚悟だ。…君が私に見せた覚悟と同じだ。あの時、そばにいれなくてもシャムシエルが天界に戻れる事を望んだのだろう?」



……覚悟。

だから、何も言わずに指輪をつけたんだ。



「ずるい………何も言ってくれなかった。本当に…変な人なんだから……」


下を向いて苦しそうな顔で凛子が言う。



「そう、気を落とすな。……あの遊び人の覚悟だ。受け取ってやってくれ。」



……………遊び人?



「………遊び人ってどういう事…ですか?」



凛子が顔を上げて疑わしい顔で聞く。



「…?……知らないのか?…………あいつは昔から、女に手を出すのが早くてな。先日、帰ってきた時も大変だったぞ。……大勢の女があいつに群がって、怒ってる女や泣いてる女で大騒ぎしていたぞ。……そういや、何人かに殴られていたな。」



………………あのほっぺたが赤かったのは女の人に殴られた?って事?

壁にぶつかったって言うのは嘘?



「…………本当に、あの人は…」


凛子が大きなため息をつく。



………もしかして、余計な事を言ったのかもしれぬな。


ウリエルが少し焦る。



…不思議な娘だな。

人間はあまり好ましく思っていないのだが普通に話が出来る。

穢れなき魂の者だからか?

それだけではないような気が……



ウリエルが凛子をじっと見る。



…あっ、そうか。

どこかで見た事があるような気がしたが、この幼い顔に羽根を生やせば…



「君は……プットに見えるな。」



「プット?って何ですか?」



凛子が驚いた顔でウリエルに聞く。



「幼児の姿をした天使のことだ。…プットに見えるから普通に話ができるのかもしれんな。」


ウリエルが吹き出しそうな顔で答える。



………幼児?

わたしってそんなに幼く見えるの?!

しかも吹き出しそうな顔してるし!



凛子が両頬を膨らませて不貞腐れる。



…両頬が膨らんだ。

面白い娘だな。



「これでも、18です!」



「…?…じゅうはち?」


ウリエルが不思議そうな顔をする。



…そうか、天使だから人間の年齢の事は分からないんだ。



「…生きてきた年数です。20年で大人という扱いになります。わたしは18年なんで、もうすぐ大人になる年数です!」



両頬を膨らませ不貞腐れたままウリエルに話す。


「…そうか、それは失礼したな…」


…もうすぐ大人……なのか?

しかし、もうプットにしか見えない。



ウリエルが吹き出しそうなのを必死に堪える。

ムッとした凛子がウリエルの両頬をつまむ。



「失礼……って思ってないですよね?!」


凛子がさらに不貞腐れる。



「……!!…こら、やめないか。私を誰だと思っている?」


ウリエルが両頬をつままれて驚く。



「知りませんよ!…わたし、天使じゃないんで…」


目の座った凛子がウリエルに言う。






「……………。」


天界から戻ってきたシャムシエルがふたりを見て言葉を失う。



……え?!…嘘だろ?

凛子がウリエルの両頬を……つまんでる?!



「………なに、してるんだ?…凛子、手を離せ…」


シャムシエルが少し焦りながら凛子に言う。

凛子がシャムシエルに気づく。



「聞いてくださいよ、もやしさん!……ウリエルさんがわたしの事を…プット?に見えるって言うんですよ!しかも吹き出しそうな顔で!」



凛子が両頬を膨らませて訴える。



………プットに…見える?



「…………ぷっ!あははは!…たしかに、見えるな!よく思いついたな、ウリエル。」



シャムシエルが吹き出して笑う。


「!!…もやしさんまで、そんな事を言うんですか!…プットって幼児なんですよね?!…わたし、そんなに子供に見えるんですか?!」



「…見えるんだから仕方ない。…早く手を離しなさい。」


ウリエルが諦めた顔をしながら凛子に言う。



「……また、言いましたね!」


凛子がさらに膨れる。



「はいはい、凛子。…そろそろ離してやれ。」


シャムシエルが凛子を持ち上げてウリエルから離す。



「…私にこんな事をするのは君くらいだ。」


ウリエルがため息をつきながら言う。



「…わたし、幼児じゃないです!」


凛子が両頬を膨らませながら言う。



…何だこの2人、心配して帰ってきたのに仲良くなってないか?

つーか、ウリエルの吹き出しそうな顔って…見た事ないぞ。


シャムシエルが焦る。



「…シャムシエルが戻ってきたし、私は帰るぞ。」



ウリエルが立ち上がると姿を消した。

凛子が両頬を膨らませて不貞腐れていた。



「……………。」


……両頬が膨らんでる。

可愛いな。


シャムシエルが凛子を見て微笑む。



「……もやしさん、おろして下さい。」


シャムシエルが凛子を下ろすと同時に凛子がシャムシエルの襟を両手で掴む。



「どうして、指輪の事を言ってくれなかったんですか!?」



「……何の話…かな?」


シャムシエルが焦りながらとぼける。



「ウリエルさんに聞きました!…どうして言ってくれなかったんでか?!」


凛子がシャムシエルを問い詰める。



……ウリエルに?

あいつ、余計な事を…



「………だって、本当の事を話したら、つけてくれなかっただろ?」



「はい、つけないです!」


凛子が怒る。



「…だから、何も言わなかったんだよ。」



「…消えないでって言ったのに…どうして…」


凛子が悲しそうな顔で訴える。

シャムシエルが襟を掴む凛子の手に触れる。



「……君を失った後の哀しみは…乗り越える自信は、ないな…」


シャムシエルが寂しそうな顔で凛子に言う。



「…もうこれ以上、愛する人を見送る事は…できないよ……」


「もやしさん…」


凛子がシャムシエルの両頬に触れる。



「…変なだけじゃなくて…馬鹿な人…」


凛子が切ない顔をしてシャムシエルを見る。



「…ひどいな、凛子…」


シャムシエルが困り顔で微笑む。



「……明日、死ぬかもしれないんですよ?…人間はもろいから。」


「いいよ。……君と一緒に生きて、一緒に死にたい。」



凛子がシャムシエルにしがみつく。



……本当に変な人。

彼が覚悟を決めたのなら…



「…もやしさん……」


「……ん?」


「…………指輪をつける時に言ってくれた言葉……もう一度、言ってください。」



シャムシエルが少し驚いた後で微笑みながら凛子の左手をとって自分の唇によせる。



「…凛子、愛してる。俺の妻になってくれ。」



凛子が微笑みながら言う。


「……はい。不束者ですが、よろしくお願いします。」



シャムシエルが凛子を抱きしめる。


「凛子、ありがとう。」


「……もやしさん……近い……です。」


凛子が顔を赤くして言う。




「……凛子、キスしてもいい?」


「…!!………ダメです!!」



凛子が慌ててシャムシエルから離れようとする。



……あれ?

さっきはいい感じだったのに、急に態度が変わった…


シャムシエルが焦る。



「…何で?…さっきは…」


「……やっぱり、怖いです!!……どうして口を開けるんですか?………分からないから、余計に怖くなりました!!」


凛子が顔を赤くしたままパニック状態になる。



「…………へ?」


シャムシエルが唖然とする。



「離して下さい!……近いですよ。」


シャムシエルの腕の中で凛子が暴れる。



「いやいや、怖くないから…少し、落ち着いて。」


「……離して下さい!」


凛子が必死にシャムシエルから離れようとする。



……うーん。

キスだけでこんなに混乱するものなのか?

人間はまだまだ、謎が多いな…

……今は、最後までする気はないけど。

でもキスくらいはしたいな…

無理やりするか?

……でも後ですごい、怒りそうだしな。



腕の中で混乱しながら離れようとする凛子をじっと見る。



「…………じゃあ、一緒にお風呂、入ろうか?」


シャムシエルがにこにこしながら凛子に聞く。




「……へ?」


凛子が目を丸くして驚く。



「頭と体、洗ってあげるよ。」


シャムシエルが笑顔で凛子に言う。




「…!!!!………ダメに決まってるじゃないですか!!」


顔を真っ赤にして凛子が叫ぶ。



「じゃあ、一緒に寝るのは?………キスか、一緒にお風呂か、一緒に寝るか……どれがいい?」



シャムシエルがニヤニヤしながら凛子に聞く。

凛子が顔を真っ赤にしたまま悩む。



「………………………じゃあ…………一緒に………寝…る……だったら………。」



凛子が顔を赤くしたまま下を向いて小さな声で言う。



「……じゃあ、今夜から一緒に寝るって事だよね?」



………?!

今夜……から?


凛子が驚く。



「え?…今夜だけですよね?」


「今夜から…だよ。…心配しなくても()()何もしないから。」



シャムシエルがニヤリと笑う。



「……!!…やっぱり、一緒に寝るの、やめます!」


「じゃあ、キス?…それともお風呂?」



「…………うっ………えっと……じゃあ……………一緒に……寝る………で……」



何か、罠に引っかかった…ような気がする…



凛子が顔を真っ赤にしたまま難しい顔をする。



……ゆっくり……でいいか。

凛子が怖がらなくなるまで……



シャムシエルが凛子をぎゅっと抱きしめる。






「……楽しかったようですね?」


ミカエルがウリエルに笑顔で話しかける。


「……!!……何の話だ?」


ウリエルが少し驚いた顔をする。



「…あなたとも長いですからね。表情に出ていなくても、何となく分かりますよ。」


「……私は別に楽しかった訳では……」


ウリエルが少し焦りながら言う。



「……どうでしたか?……彼女は?」


ミカエルが真剣な顔でウリエルに聞く。


「…………まだ、半々といったところだが…可能性はあるな。」


ウリエルが答える。



「かなり久しぶりの奇跡という事になりますね。…人間から天使になるのはかなり希な事ですから。」



「…まだ、決まったわけではないぞ。」



「…分かっていますよ。」


ミカエルが微笑む。



「あいつは、気づいていると思うか?」


「……まさか。気づいていれば誓いの指輪をつける必要はないでしょう?」


「たしかに、そうだな。」



……穢れなき魂を持つ者は人間でありながら天使に近い存在。

ごく稀に天使になる事がある。

魂の浄化まで行えるとなるとかなり可能性は高いですね。




「…きっと、いい方向に進む…はずです。」



ミカエルが微笑みながらウリエルに話す。








ーシャムシエルの寝室ー




凛子が枕とナマケモノのぬいぐるみを抱えてシャムシエルをじっと見る。



「どうしたの?…となりあいてるよ。」


シャムシエルがベットに横になったまま、笑顔で凛子に話しかける。



…………やっぱり、罠にハマったような気がする。



凛子が難しい顔をするがしぶしぶシャムシエルの隣で横になる。

シャムシエルが笑顔で凛子を抱きしめる。



「……何もしないんじゃないんですか?」


凛子が少し顔を赤くしながらシャムシエルに言う。




「……()()…ね。」


シャムシエルがニヤリと笑いながら言う。





「……………。」


……ほんの少し前まではずっと死にたいと思ってたのに。

今では天使と結婚してる。

本当に人生って何が起きるか分からないなぁ…




「……どうした、凛子?」



シャムシエルが不思議そうな顔で話しかける。

凛子がシャムシエルにしがみつく。



「……おやすみなさい。」



凛子がシャムシエルの腕の中で目を閉じる。

シャムシエルも目を閉じる。



「おやすみ、凛子。」










ー天界ー




「……それ、本当?!」



1人の女の天使が別の女の天使に聞き返す。



「本当よ。…私も見たわ。シャムシエルが帰ってきたらしいよ。」



「……あいつが、帰ってきたの…ね。」



女の天使が険しい顔をする。




つづく。



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