第14話 それぞれの生きる道…
セバスチャンさんが天使?……しかも最上位?
……という事は……
「セバスチャンさんがてんかいの一番えらい人…ですか?」
凛子が驚きながらも聞く。
「はい。一番えらい人です。…そしてさっきの話も聞いてましたよ。私もシャムシエルが帰る事を許します。」
セバスチャンが凛子に微笑みながら話す。
「本当ですか?ありがとうございます。」
凛子が喜ぶ。
「…けれど、私とウリエルだけではほかの天使達を説得するには少し弱いですね。………隠れているお二人さんにも協力してもらいましょうか?」
セバスチャンが誰もいない場所に話しかけるとリリスとオカマバーのママが現れた。
「バレてた~♪」
リリスが現れて言う。
「そりゃ、気づくわよね?ミカエル。」
オカマバーのママも現れて微笑む。
「…え!?」
凛子が混乱する。
リリスさんとママさんが突然、現れた?!
リリスが凛子の顔をじっと見る。
「うん♪顔色よくなったわね♪」
「…よくなりました…か?」
「…もう大丈夫ね。」
ママが凛子の頭を撫でる。
「…はい。……あの、二人はどこから出てきたんですか?」
「ふたりとも天使だよ、凛子。…リリスがガブリエルで、ママがラファエルだ。」
シャムシエルが説明する。
「……え?………2人とも天使?!」
わたしの周りにいる人達って皆、天使だったんだ…
また非現実的な状況…
凛子が混乱する。
「…私もシャムが戻る事を許すわよ。」
ママがセバスチャンに言う。
「私もいいわよ♪……久々に天界に戻ったら、楽しい事……が待ってるかもよ?」
意味ありげにリリスがシャムシエルに言う。
「…………楽しい事?…なんの話………あっ……」
シャムシエルが何かを思い出して青ざめる。
「………思い出した?…まぁ、自業自得ね……」
リリスがニヤリと笑う。
「……?………自業自得?」
凛子が不思議そうな顔でシャムシエルを見る。
「……………。」
シャムシエルが焦りながらも黙る。
「…シャムシエルにもいろいろあるのよ♪…昔の事だから、心配しないでいいわよ♪」
リリスが凛子に微笑みながら言う。
凛子が不思議そうな顔でリリスを見る。
ママがウリエルの顔を覗きこむ。
「…どうして、凛子に意地悪するのウリエル?…シャムをとられて、寂しいの?」
ママががニヤニヤしながらウリエルに聞く。
「…お前までそんな事を言うのか?…別に寂しくもない!」
ウリエルがむすっとしながら答える。
「…ウリエルさんと仲がいいんですか?」
凛子がシャムシエルに聞く。
「…!!そんな訳ないだろ?…あいつは事ある毎に、俺に突っかかるんだよ!7大天使なんだから俺みたいな中級と関わる必要ないのに…まったく、迷惑だよ!」
ウリエルを指さしながらシャムシエルが凛子に話す。
「お前がサボるからだ!!…だいたい我々の使命をお前はよく理解していない!」
ウリエルがイラッとしながらシャムシエルに叫ぶ。
「あーー!うるせー!いつもの説教かよ!…もういいよ。」
シャムシエルが耳を塞いで呆れた顔で言う。
「…やっぱり、仲いいんですね。…まるで兄弟。しっかり者のお兄さんと出来の悪い弟……みたいな感じですね」
凛子がシャムシエルに言う。
「…やめてくれよ、あんな兄なんて冗談じゃない。」
シャムシエルがため息をもらす。
「私も冗談ではない!こんな不出来な弟はいらぬ!」
ウリエルがむっとしながら言う。
「凛子さんの言う通りですね。口うるさい兄とサボり癖のある弟です。」
セバスチャンが笑顔で凛子に言う。
「……それより、先程言っていた闇に落ちた人間達が白い玉になった話。…本当ですか?」
セバスチャンが真剣な顔で凛子に聞く。
「はい。わたしの手に触れた途端に白い玉になって上がっていきました。」
「…やはり、あなたは穢れなき魂の持ち主。人間でありながら我々、天使に近い存在…」
…しかも、魂の浄化まで行える。
これはもしかすると…
「あー!それだ、それ!ずっと思い出せなかったんだよ。」
シャムシエルがセバスチャンに言う。
「……忘れていたんですか?…しっかりして下さいよ、シャムシエル。」
セバスチャンがため息をつきながら言う。
…まったく気づいていなかったようですね。
半分堕ちていたので仕方ないかもしれませんが…
「そばにいて気づかなかったのか…呆れた奴だな。」
ウリエルが頭を抱える。
「………。」
シャムシエルがばつの悪そうな顔をする。
「…けがれなき魂……ですか?」
凛子が不思議そうな顔でセバスチャンに聞く。
…そういえば、闇の人達も言ってた。
「…穢れを知らない純白の魂を持つ人間は特別な力を持つ事があります。…あなたは特にその力が強い。魂の浄化は上位天使の中でも出来る者は限られています。」
「…魂のじょうか?………わたしが?」
凛子が理解、出来ずに混乱する。
「自分では自覚はないと思いますがあなたの存在自体がまわりの人達に影響を及ぼす。もちろん、いい方向にね。」
「……そう、なんですか…?」
魂のじょうか?
天使に近い?
……分からない……うーん…
凛子が理解出来ずに難しい顔をする。
「また詳しく説明しますね。凛子さん…少しの間、彼をお借りしてもいいですか?一旦、天界に連れて帰ります。」
セバスチャンが凛子に言う。
「いや、俺は帰らない…」
そう言うシャムシエルの背中をセバスチャンの方へ押しながら凛子が言う。
「…さっさと連れて帰ってください。」
「…!…ちょっと凛子、俺は帰らないって言って……」
「一旦、帰るだけです。天使にもいろいろ事情がありますので。…話をしたらすぐにお返ししますので、ご安心を。」
セバスチャンが笑顔で凛子に言う。
「いいですよ…このまま、ずっとてんかいにいても大丈夫です。」
凛子がシャムシエルの背中をぐいぐい押していく。
「だから!…俺は帰らない…」
セバスチャンがシャムシエルの肩に手を乗せる。
「……彼女の覚悟を無駄にするんですか?」
「…え?」
…背中を押す凛子の手が…震えてる?
「…さっさと連れて…帰ってください。」
凛子が下を向いたまま言う。
……凛子。
俺の為…か?
「……すぐにここに帰ってくるから……待っててくれ。」
シャムシエルが背中を向けたまま凛子に言う。
「…………わたしは…大丈夫です…から…」
「……いいから、待ってろ。…必ず、帰る。」
ウリエルが声をかける。
「……行くぞ。」
次の瞬間、凛子以外の天使達が姿を消した。
「……行っちゃった……。」
……必ず、帰る。
「………。」
…元の世界に戻ったら、もうここには来ない…よね。
仲のいい友達とか…恋人とか…たくさんいるだろうし。
わたしの為にわざわざ住みにくい人間の世界なんかに……来る理由ないもんね…
「……1人でも…大丈夫……」
凛子の頬を涙がつたう…
「…大丈夫……な訳ないのにね。…バカだな、わたし。」
その場にしゃがみこむ。
…でも、このまま彼を人間の世界に留めておくなんて出来ない。
もう、さつきさんはいないから…
彼が人間の世界に存在する理由なんて…ない。
インターホンが鳴り凛子が目を覚ます。
「………!!」
凛子がリビングのカーペットの上で目を覚ます。
……あれ?…誰か来た?
…いつの間にか寝てたみたい。
え?…夜の9時?!
液晶画面で来客を確認すると霧山が立っていた。
「……いないのか?」
凛子が慌てて玄関をあける。
「すいません!…寝てました。」
凛子の顔を見て霧山が驚く。
「どうしたその顔!!」
「…え??」
「瞼が腫れてるぞ……何があったんだ?」
……瞼が腫れてる?
鏡で自分の顔を確認する。
瞼、パンパンに腫れてる。
目の周りが荒れてるし…
………ひどい顔が余計に酷くなった……
鏡に写った自分を見てへこむ。
「部屋の電気も付けずに何してたんだ?…あれ、あいつは?」
リビングの電気を付けながら凛子に聞く。
「……元の世界に…帰りました。」
「…………帰った?!」
霧山が驚く。
「……わたしが、帰るように言いました。」
凛子が下を向きながら霧山に話す。
「…………。」
…あいつの為か?
それで1人で泣いてたのか…
霧山が大きなため息をつきながら頭を抱える。
「……どうして、そんな事を言ったんだ。」
「…元の世界に帰った方が……もやしさんにとっていいと思った…ので…」
「あいつが帰りたいって言ったのか?」
霧山が凛子に詰め寄る。
「………言ってない…です。」
「この大馬鹿者が!!」
凛子の額を指で弾く。
「…痛っ!」
「瞼、腫らすまで泣くくらいならどうして行かせたんだ?…あいつのそばにいたくないのか?」
「……泣いて…ないです!…わたしと一緒にいるより元の世界に…」
霧山がまた、凛子の額を指で弾く。
「…痛い!」
凛子が自分の額に手をあてる。
「…嘘つくな!…瞼がパンパンに腫れてるぞ。」
「…泣いて…ないです…」
凛子がそう言いながら涙を流す。
霧山が凛子を抱きしめる。
「まったく!…どうして我慢する?」
「…だって、わたしは先に死ぬから…あの人が…また1人に…なって……」
霧山が凛子を強く抱きしめる。
「…本当に、大馬鹿者だな。そんな事、あいつも分かってるに決まってるだろ?…それでも一緒にいると決めたはずだ。」
「……でも……」
「……いつも、人の事ばかり考える。…どうして自分の幸せを考えないんだ?」
「わたしは…大丈夫…です。」
霧山が寂しげな顔で凛子に言う。
「……大丈夫じゃないだろ?」
……この年頃の娘ならわがままばかりで周りを困らせそうなものなのに。凛子は我慢ばかりする。…見ている方が辛くなるくらいだ。
凛子がその場にしゃがみこむ。
「…ん?…どうした?」
「…ちょっと立ちくらみが……」
瞼が腫れてるだけじゃなくて顔が青白いな…
まさか…
「……飯は食べたか?」
「……………。」
凛子が黙る。
「朝ごはんは?」
「………少しだけ。」
凛子が小さな声で答える。
「…昼は?」
「……寝てました。」
霧山が少しイラッとする。
「………夜は?」
「………さっき、起きた…ところです。」
凛子が霧山から目をそらしながらさらに小さな声で答える。
「馬鹿か!!…これ以上痩せて、どうするんだ!人一倍、食べないとだめなのに!!」
霧山が凛子を怒る。
「…すいません。…いつの間にか寝てて…」
凛子が下を向いて謝る。
「…まったく、世話のやける!…何か買ってくるからここに座ってろ。」
大きなため息をついた後に凛子を抱えてリビングのソファーに座らせて近くのコンビニに向かう。
……凛子が自分の腕を見る。
たしかに、これ以上痩せたら……
でも、食欲ない…。
霧山が帰ってきてリビングのテーブルの上に食べ物を並べる。
「…ほら、好きなの食べろ。」
「…いただきます。」
凛子がカップスープを飲む。
霧山が唐揚げを箸でつまんで凛子の目の前に出す。
「肉を食べろ。ほら、口を開けて…」
「………揚げ物はちょっと。」
凛子が食べるのを躊躇う。
「そんな事、言ってるから太らないんだ!…ほら食べろ!」
半ば強引に唐揚げを凛子に食べさせる。
「……………。」
消化不良、起こしそう…
凛子が困った顔をする。
カップスープを半分ほど飲んでテーブルの上に置く。
「……ごちそうさまでした。」
「全然、食べてないぞ!」
霧山が少しイラッとしながら凛子に言う。
「そんなに食べれないですよ…それに、食欲ないです……すいません。」
…あいつがいないからか?
元の世界に帰ったって……何があったんだ?
「あいつは、何も言わずに行ったのか?」
「いえ、ここに戻ってくる…って言ってました。」
「……そうか。」
そうは言っていても帰った後で事情が変わるかもしれんしな。
とりあえず今日はこの家で待ってみるか。
…もし明日になっても戻らないようなら凛子をうちに連れていくか。…ひとりにしてはおけないしな。
「とりあえず……風呂に入ってくるか?」
「…そうします。」
凛子がバスルームに向かう。
つづく。




