第13話 天界の一番えらい人
次の日の朝。
時計の針は10持を過ぎていた。
「……?……朝?」
凛子がベッドの中で目を覚ます。
…なんだろ?温かい……
もうちょっと寝ようかな。
…ん?…………温かい?
凛子が目を開けるとシャムシエルが隣で眠っていた。
「………!!」
…どうして、一緒に寝てるの?!
凛子が慌ててベッドの中から出ようとする。
シャムシエルが凛子の腕を掴む。
「…どこ、行くんだ?」
シャムシエルが寝ぼけながら凛子に聞く。
「どこって…とりあえずベッドから出ようかと思って…」
凛子が焦りながら答える。
「…ダメ。」
凛子の体を引き寄せ抱きしめる。
「ちょっと、もやしさん…近いですよ。」
「…離さないって決めたから。」
シャムシエルが凛子を抱きしめたまま言う。
「……と、とりあえず…起きましょう…ね?」
凛子がシャムシエルから離れようとする。
シャムシエルが凛子の頬に触れる。
「…凛子、愛してる。」
シャムシエルが凛子の目をまっすぐ見てはっきりと言う。
「……!!!!!」
凛子が驚きながら耳まで真っ赤になる。
……この人、急に何を言い出すの?!
心臓が止まるかと思った。
「…?…凛子、耳まで真っ赤だよ?」
「……い、いきなり、そんな事言うからですよ…」
凛子が慌てながら答える。
「…?…思った事を口にしただけだが?」
シャムシエルが不思議そうな顔をして言う。
「凛子は俺の事、どう思ってる?」
「……ど、どうって…言われても……」
顔が熱くて頭の中、混乱してる…
わたし、もやしさんの事…どう思ってるんだろ?
「大丈夫?顔が赤いままだよ…」
シャムシエルが凛子の顔を覗きこむ。
……顔が近い!
もう…だめ……だ…
真っ赤な顔をした凛子が倒れ込む。
「え?!……大丈夫?」
シャムシエルが慌てる。
…俺の事、どう思ってる?
どう思ってるんだろ……
よく分からないけど…このドキドキする感じは…
シャムシエルが冷たいタオルを凛子の額にのせる。
…冷たくて、気持ちいい。
凛子が目をあける。
「…大丈夫か?」
「…はい、……!!」
顔、近っ!!…というか膝枕?!
リビングのソファーでシャムシエルの膝枕で横になっていたようだ。凛子が慌ててシャムシエルから離れる。
「どうしてそんなに慌ててるんだ?」
シャムシエルが不思議そうな顔をする。
「…どうしてって……もやしさんが近いから…」
凛子が少し照れながら答える
「………俺に触られるの、嫌か?」
シャムシエルが寂しそうな顔で聞く。
「…嫌…では…ないですけど……」
「…けど?…何?」
シャムシエルが凛子に近づきながら聞く。
「………けど………えっと…」
凛子が後ろに下がる。
シャムシエルが自分の額を凛子の額にひっつける。
「キスしてもいい?」
シャムシエルが笑顔で聞く。
「…!…ダメです!!」
凛子が慌てながら後ろに下がる。
…また顔が赤くなった。
面白いな。……表情が豊かになった。
シャムシエルが微笑みながら凛子の頭を撫でる。
「……?」
凛子が不思議そうな顔をする。
「……朝ごはんにしようか?」
シャムシエルがキッチンへ向かう。
遅めの朝食を食べ始める2人。
「…そういえば、また仮面つけてますね?」
闇の中で一回、外したけど…
また付けてる。
「もうつける理由ないけど…急に外すのもなぁ…」
シャムシエルが悩みながら話す。
凛子がシャムシエルの仮面をじっと見る。
…上手く、笑えないからって言ってたけど。
普通に笑えてると思うけどなぁ…
「…ん?…俺の顔に何かついてる?」
「…いいえ、……あっ!!」
そういえば、闇の中で光の玉になった人達は?
わたしはお風呂に出てきたけど…
「何だ?!」
凛子が急に大きな声を出したのでシャムシエルが驚く。
「光の玉になって上がっていった人達、あの後どうなったか知ってます?」
「……光の玉?…なんの話だ?」
シャムシエルが理解、出来ずに混乱する。
凛子が闇の中で光の玉になって上に上がって言った話を詳しく説明する。
「…………。」
シャムシエルが下を向いて黙る
……闇に落ちた人間が光の玉に?
魂の浄化?…いや、そんな上級天使にしか出来ない事、人間が出来るわけない。…どういう事だ?
「……あの、もやしさん…」
「…ん?」
シャムシエルが凛子の方を見る。
「…あの方、知り合いですか?」
リビングに長身で色白、金髪の険しい顔をした男が立っていた。
「……!!………げっ!…お前、何でここに!!」
シャムシエルが険しい顔の男を見て焦る。
「……まだ、人間と一緒にいるのか…呆れた奴だ。」
険しい顔の男がため息をつく。
「……やっぱり知り合いなんですね…」
凛子が険しい顔した男を見て挨拶する。
「初めまして、立花凛子って言います。」
険しい顔した男が凛子を一瞥するとシャムシエルに話しかける。
「…お前に用事がある訳ではない。あの方を探しに来たのだ…どこにいる?」
…こいつが人間界に来るなんてめずらしいな。
あの方?…ミカエルの事か?
リリスが言ってた話、本当だったのか?
「…あの方?…ミカエルの事か?…|人間界に来てるのか?」
「あの方の気配をこの場所の近くに感じる……わずかだが。…知らぬのならもういい。」
「…あの人も天使なんですか?」
凛子がシャムシエルに聞く。
「…天使だよ。…凛子、あいつに話しかけない方がいい…」
シャムシエルがそう言いかけると凛子が険しい顔の男の前に歩いていく。
「…!?…凛子、何して……」
「あなたはてんかいの1番えらい人ですか?もしそうならお願いがあるんです。」
険しい顔の男が凛子を睨みつける。
「…人間が気安く、話しかけるな。」
「立花凛子です。」
凛子が険しい顔の男を真っ直ぐに見て言う。
険しい顔の男がため息をつく。
「……ウリエルだ。私は最上位の天使ではない。…お前の頼み事はなんだ?…聞くだけ聞いてやる。」
ええ!?…あの人間、嫌いのウリエルが凛子と話した?!
シャムシエルが驚く。
「彼を、てんかいに帰らせてあげて下さい!」
凛子がウリエルに頭を下げる。
「…!!…凛子、何言ってるだ?!」
シャムシエルとウリエルが驚く。
「羽根が白く戻ったんです。禁止されてる事をしたけどこのまま人間の世界にいるなんて…天使って気高くて正しい事をする生き物なんですよね?……彼は人間を好きになったけど、悪い事はしてないです。…お願いします!」
凛子がウリエルに必死に訴える。
ウリエルがシャムシエルを見る。
「…羽根を見せてみろ、シャムシエル。」
シャムシエルが羽根を広げる。
ウリエルが目を見開く。
「…どういう事だ…なぜ黒くなっていない。」
…しかも以前より聖なる力が増している?
「元々、片翼しか黒くならなかった…。その黒い羽根も凛子が触れた途端に白く戻って天使の力も戻った。…どうしてかは分からない。」
ウリエルが凛子を見る。
…この娘、やはり。
「……いいだろう。…力が戻ったのなら神の加護を受けている証拠。」
「いいんですか?」
凛子が嬉しそうな顔でウリエルに聞く。
「もちろん、あの方の許しも必要だが。…あとひとつ条件がある。」
「条件って何ですか?」
「あの方の許しが出たらすぐに戻る事だ。」
「…え?…すぐに…ですか?」
凛子の顔から笑顔が消える。
「そうだ。……すぐにだ。」
すぐにという事は、もう、もやしさんと一緒にはいられない。でも…
「…分かりました。ありがとうございます。」
凛子がウリエルに頭を下げる。
「凛子!何言ってるだ?!…俺は帰りたいなんて一度も言ってないだろ?」
「よかったですね。これで帰れますよ。…後はえらい人にお話しないと…」
凛子が微笑みながらシャムシエルに話しかける。
「だから、帰りたいなんて一度も…」
「天使は天使と人間は人間と一緒にいる方がいいんですよ…わたしは大丈夫です。もう闇堕ちしませんから…」
「…そういう事じゃなくて…俺は君と一緒に…」
「わたしは人間です。あなたより先に死にます。…もうあなたを1人にしたくないんです。…だから、元の世界に…」
「…たしかに君は先に死ぬけど…それでも俺は…君と一緒に…」
シャムシエルが凛子を抱きしめる。
「大丈夫ですよ…1人でも生きていけます。だから安心して帰って下さい。」
凛子が寂しげな顔で言う。
ウリエルが2人をじっと見る。
「…意地悪ですね、ウリエル。…それとも可愛いシャムシエルをとられてヤキモチをやいたんですか?」
ウリエルの隣に現れたセバスチャンが話しかける。
「…!!…あんな奴、可愛くなどない!」
ウリエルが少し焦りながらムスッとする。
「…本当ですか?ずっとかまっていたじゃありませんか?」
セバスチャンがにっこりと笑いながらウリエルに言う。
「…そして、彼女の返事に驚いたのでしょう?…彼女はシャムシエルの先の事を心配しているんですよ。……若いのにしっかりした子です。」
「……すぐにと言えば、帰らせないと言い出すかと思ったのに…なんなのだ、あの娘は…」
「…あれが凛子ですよ。」
セバスチャンが凛子とシャムシエルのそばに行く。
「凛子さん、顔色よくなりましたね。」
「…あれ、セバスチャンさんいつ来たんですか?……おはようございます。」
凛子が驚きながらも笑顔で挨拶する。
「おはようございます。いい笑顔ですね。」
セバスチャンも笑顔で答える。
「……………。」
シャムシエルが唖然とする。
「どうしました、シャムシエル?」
セバスチャンがニヤニヤしながらシャムシエルに聞く。
「……え?……いつから…だ?…セバスチャンに化けているのか?」
シャムシエルが混乱する。
「いえ、私はセバスチャンに化けていませんよ。人間界で初めてお会いしてからずっと…です。」
「…?…なんの話してるんですか?」
凛子が意味が分からず2人に聞く。
「…嘘だろ?なんで…」
「ウリエルだけじゃなくてガブリエルやラファエルもあなたに構うので興味がわいたんですよ。なので人間のフリをして近づきました。」
「まったく、分からんかった…」
「私が人間界にいるとまずいですからね。完璧な人間に化けました。」
セバスチャンがニヤリと笑う。
「…????」
凛子が不思議そうな顔で2人を見る。
それに気づいたシャムシエルが凛子に話しかける。
「…凛子、セバスチャンが最上位の天使、ミカエルだ。」
「……え?!…セバスチャンさんも天使ですか?!」
凛子が驚く。
「はい。私も天使です。」
セバスチャンが微笑む。
つづく。




