3話
「あ、お疲れ様!」
彼女はひと足早く喫茶店に来ていたようだ。
僕は軽く挨拶をし、2人で喫茶店に入る。
「ごめんね、昨日の今日で呼び出して」
「ううん!昨日は私が無理やり誘ったような感じだったから、君の方から誘ってくれるなんて、その…う、うれしい!」
彼女は黒くて長い髪の毛を指でいじりながらそう答える。
綺麗な髪の毛だな。
前髪は目の上に切りそろえてあり、彼女の茶色い大きな瞳が際立って見えた。
そうそう、歩美もこんな目をしていたっけ。
「ど、どうしたの?そんなにじっと見て…もしかして何かついてる!?」
彼女はあたふたと自分の顔を触る。
なんでもない、というと安心したように彼女は笑った。
「何か、事件の進展はあった?」
まずはここから。
僕の殺人観に対する質問は後だ。
「えっと…遺骨と服からは犯人を特定できるようなものはなかった」
それを聞き、僕は安堵する。
「あと…遺骨に大きな外傷が見られなかったことから、殺害方法は撲殺ではなかっただろうって」
「なるほどね…じゃあ骨に当たらなかった刺殺や、絞殺…毒っていうのもありえるよね」
「うん…可能性がひとつ減っただけで、死因を絞るまではいかなかったみたい」
進展なし、と
「でもね…お姉ちゃんのことについては少しわかったことがあるの」
「…聞かせて」
「うん、まず…お姉ちゃんがいなくなった日、その日の部活でお姉ちゃんは部員と顧問と大喧嘩をしたみたい」
「なるほどね」
「私の家から学校までは電車で駅2個分なんだけど…泣きはらしてたお姉ちゃんはそのままねちゃって乗り過ごしてしまったみたいで…ちょうどこの辺りの駅で降りたっていう目撃情報がでてる」
「…駅からの目撃情報は?」
「まだ何も…」
ここが田舎で本当によかった。
だけど…この辺りまできたことはバレてしまったようだ。
僕が彼女を殺した山は市内全体に広がっているため、近いからその付近に住んでいるものの犯行、という考え方がしにくいものとなっていた。
「とりあえず…警察からはこれで全部。あんまり進展はなかったかな…?」
「そんなもんだよ」
こちらとしてはその方がありがたい。
「あの、さ…私、もっと君のことを知りたいな…なんて」
「僕のこと?」
知ってどうするというのか?
もしかして僕のことを疑っている…?
だけど、僕も彼女について知りたいと思う部分はある。
彼女にもう一度聞こう…彼女のいう「悲しい」とはなんなのかを。




