第98章:ナレーターが語る、さかのぼったエピソード(1)
・・・この章からは、
しばらく、話をさかのぼることになる。
ここからの話は、茂にとって、生涯忘れられない出来事になってゆく。
いつも淡々とした口調で、前作から『ナレーター』を務めてきた、この私でさえも・・・その当時の彼の、つらく、絶望的な心情・悲しみを思うと、いまさらながら彼に同情し、「冷静沈着」を売りにしている私まで涙が出てくるほどである・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1995年9月下旬。
まだ茂が、U市本所の「用度係」にいたころのこと。
当時彼は、あやがいなくなった『パラダイス キャンパス』を忘れられず・・・離れられず、「あや」との想い出を求めて、別の女の子を、毎回変えて指名し、ひとり通い続けていた。
・・・どの子も、性格がよく、サービスもよかったのだが、茂には、そのどれもこれもが物足りなかった。
(やっぱり俺には、あやちゃんしか合わない。みんな優しくていい子だけれども・・・『何か』が違うんだよ・・・。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・そんなある日。
茂が店を出て、ためいきをつきながら信号待ちをしていたときのこと。
うしろから彼に話しかけてきた人物がいる。
店長兼社長の深沢氏だった。
「・・・杉山君。元気が無いね。いや・・・それも無理はないか。あれだけ仲良くしてた、あやちゃんがいなくなっちゃったんだからね。」
「深沢さん・・・。」
「どうしても、彼女に会いたいかい・・・?」
「ええ・・・もちろんですよ。」
「今すぐにでも・・・?」
「今すぐに、でもです。」
「そうか。 ・・・どうやら、君の『あやちゃん』を想う気持ちは、本物のようだね。彼女には、『杉山さんには、教えないで。』って言われていたんだが・・・私は、そんなつらそうな杉山君を、もう、これ以上見ていられないんだよ。君がずっと、あやちゃんを想ってたことぐらいわかってる。二人の間に、その後何があったのかは知らないが・・・よかったら、彼女に会ってみないか・・・?」
「えっ??」
「彼女ね・・・いま、駅東の繁華街に少し前にオープンした、『パラダイス キャンパス2号店』にいるよ。源氏名は・・・『レミー』だ。もう『あや』ではないから、注意するんだよ。あとは、付き合おうが結婚しようが、杉山君の好きにするがいい。 ・・・じゃ、いってらっしゃい。」
「・・・ありがとう、深沢さん。行ってきます!!」




