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第97章:鈴本睦雄、参上

 茂は、2年間「用度係」にいたのち、県北の「大田原(おおたわら)支所」で4年間勤務し・・・結果から述べてしまえば、平成12年、つまり、2000年3月で退職した。


 その間彼は、穀物の「国営検査」などにたずさわりながら、農協職員や、米の集荷業者、農家の皆さんと深く関わり・・・最初の一年は、比較的平和な時期を送った。


 しかし・・・翌年の1997年に、以前、U市の本所で茂を苦しめていた、あのいまわしい「武村久夫」が異動してきて、またネチネチと茂を苦しめるようになっていた。


 そして・・・その武村の元部下で、茂の「用度係」の後任だった「鈴本睦雄(すずもとむつお)」も、武村と同様、本所から、この「大田原支所」に異動してきた。


 ・・・睦雄は、このとき30歳。


 茂より年長の先輩だった。


 その見た目は・・・おせじにも「ハンサム」とはいえなかった。


 大き目の頭のわりに、妙にやせた体型で、少し大きめのサイズの「ヴァレンチノ」のスーツを着こなし、年齢に似合わない薄毛の「ハゲた頭」。


 いつも、「ルイヴィトン」の小さなビジネスバッグを小脇にかかえ、こうした「ブランド品」にこだわる男・・・。


 口調は丁寧だが、油断ならない、相手をスカすような、隙(すき)の無い目つき、常(つね)にあたりをうかがうような目の配り。


 いっけんおだやかそうに見えるが、どこか茂には「心を許せない部分」があり、少し距離を置いて付き合うことにしていた。


 その「用度係」の引継ぎのときにも、「杉山君。いろいろ教えてくれよ。俺はいま、君だけが頼りなんだからね。」と、しつこく茂を当てにし、敬意を払う「そぶり」を見せてきた。


 だが、前述のように茂には、どうしてもこの男を、最後まで信用できず、同僚以上の「友人」になる気にはなれなかったのだ。


 ・・・そして、不幸なことに、彼のその予感は、外れていなかったのである。

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