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第89章:さらば根岸氏、森川検査部長・・・そして、『事前偵察』の兆候

 3月31日(水曜日)。


 この日、茂は、3度目の「欠勤」をする。


 『前日飲みすぎて、体調不良になった』という言い訳だった。


 この前夜、4月から霞ヶ関に栄転する根岸氏から、別れ際に意味深(いみしん)な「アドバイス」をもらっていた茂。


 今、その言葉の意味を噛みしめ、きたるべき「別れ」に臨むこととなる・・・。


 「・・・杉山君。世話になったね。君と過ごした時間は、本当におだやかで楽しかったよ。『磐石荘』での、あのドンチャン騒ぎ・・・アレはアレで、けっこう面白い思い出になったな。でも、杉山君。明日は、くれぐれも注意しろよ。特に、上田管理官にはね・・・。また、どこかで会いたいものだね。元気でな・・・。」


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 夕方。


 茂は、いの一番に『パラダイス キャンパス』の待合室に入り・・・あやとの別れに際して、あれこれ、かけるべき言葉を思い巡らせていた。


 ・・・日が落ちて、待ちに待った、入店時間。


 茂がいつものように、狭い石段を昇ろうとしたした、そのとき。


 ふと、駅方面の路上を見ると、暗がりからこちらをうかがう、一人の初老の男の姿が。


 (上田業務管理官・・・! なぜ、あの人が!?)


 上目遣いで、眼鏡をいじる上田氏。


 その視線は、まっすぐに茂をとらえている。


 2、3秒、目が合ったと思ったら、上田氏は無言できびすを返し、U駅の方角へゆっくりと去っていった。


 (・・・そうか。上田のヤツも、武村一派の一員だったよな。きっと、俺の偵察(ていさつ)にきやがったんだ。でも、今さら後戻りはできない。何が来ようと、どんな『魔物』が来ようと、あやちゃんとの大事な最後のひとときなんだ。邪魔はさせんぞ・・・!)

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