第84章:あやが発した『不吉なコトバ』
「・・・ねぇ、しげちゃん。話があるの。」
神妙な面持ちで、あやが告げる。
「あたしね・・・今月で、ここを辞めるの。月末の31日よ。この日はね・・・実は、あたしの誕生日でもあるの。」
「あやちゃん・・・。」
「突然の話で、本当にごめんね。でも、その間は、がんばってしげちゃんを元気にするから、無理しない間隔で会いに来て。」
「そっか・・・。わかった。つらいけど、仕方ないよね。あやちゃん本人が、そう決めたんだもんね。僕に、引き止める権利はないし・・・。」
そう茂が告げると、あやは一瞬悲しげな目で彼を見ると、にっこり微笑んで、茂の下半身に顔をうずめた。
めぐみに引き続き、ついに、このあやも自分の元を去っていってしまう・・・そんな悲しい現実を、また味わうことになった彼の目には、いつしか光るものが・・・。
「ところでしげちゃん。最近、ちょっと気になることがあって・・・。」
『サービス』を終えたあやが、突然、不穏な切り口で語り始めた。
「何かあったの・・・?」
「ええ。実はね、ここのところ・・・私が一度も会ったことがないお客様がね、いきなりあたしを指名することがあったのよ。それも、一人だけじゃなくって、何人も。」
「・・・何だって!?」
「ねっ、おかしいでしょ? あたしを指名できるのは、茂さんのように、過去に、一度『フリー』でついたことのあるお客様だけなの。 ・・・あたし、こういう客商売で食べてきた女だから、たった一度きりついた人でも、忘れずに、必ず、その人の顔を覚えているものなのよ。だから・・・いったい何なんだろう・・・って。」
このとき茂には、水面下で何が起きているのかを、おぼろげながらつかめていた。
それは、彼にとって、想像もしたくない、とても「おぞましく、残酷な光景」であった・・・。




