第79章:めぐみの微妙な変化
漆原めぐみは、とても優しく、そして、あたたかい女性だった。
器量は人並みだったが・・・茂は、そもそも「面食い」ではなかったので、彼女の「心根の優しさ」「人柄の良さ」に惚れこんでいたのだ。
とはいうものの、彼には、いまひとつ、彼女に「のめり込めない」もどかしさがあった。
そして、めぐみ自身も、そんな茂の心中を察してか、自分からは、本格的な恋人の関係を積極的に求められずに、じっと耐えて待っている・・・そんな心理状態が続いていたのだ。
彼が、めぐみに、「のめり込めない理由」・・・言うまでも無くそれは、亡き美絵子そっくりの新しいパートナー、「あや」の存在だった。
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季節が進み、クリスマスが過ぎ・・・やがて、年が開け、1994年がスタートした。
その間、茂とめぐみの間でも、微妙な変化が生まれてきつつあった。
めぐみの「おなか」が、少しずつ、膨らんできていたのだ。
はじめ茂は、それが「何か」に気づかなかった。
きっと、冬にけっこう、チャーシューメンとか、コンビニの肉まんなんかを、二人で頻繁に食べていたので、「冬太り」しているのだろう・・・その程度の、軽い「観測」だった。
やがて、彼女の「膨らみ」は、日を追うごとに大きくなってゆき・・・もう、誰の目にも、その「原因」は明らかだった。
(漆原さん・・・妊娠している!)
鈍い茂も、ようやく、その事実に気がついた。
そうなると、二人も気まずくなり・・・お互い、給湯室でも、もちろん帰りも、どちらからというわけでもなく、自然に顔を合わせるのを避けるようになっていった。
そのうちに、茂の耳に、ひとつの「噂話」が入ってくるようになった。
食糧事務所の特有の現象でもある、「裏情報の速さ」が、このとき、幸か不幸か、茂に時を置かずに「真実」「確証」をもたらすという、皮肉な結果になった構図だった・・・。




