第5章:ちょっとさかのぼったお話(3)
「・・・美絵子の友だち?」
「はい。」
「・・・実はぼくは、美絵子ちゃんより三学年上で、当時、美絵子ちゃんが低学年で、ぼくが上級生の高学年でした。
それで今日は、美絵子ちゃんの昔のアルバムを見せていただきたいと思いまして。・・・あのぅ、アルバムはありますか?」
「えぇーー、アルバムはないけど、昔の美絵子の写真なら、1枚くらいはあったかもしれないねぇ・・・。」
「それじゃ、それを見せていただけますか?」
「ええ、いいですよ。」
そしてその人は、玄関のすぐ左横の部屋に入っていった。
その、玄関の左の部屋ではテレビがかかっていて、『水戸黄門』がやっているらしかった。
玄関の中に立っていたぼくは、そこで1人になったので、このときを利用して、家の内部をじっくりと観察してやろうと思った。
・・・先に述べたタンスは、今はもう置いていなかった。
玄関のコンクリート床の右下には、炊飯ジャーの空き箱が置いてあった。
その表には、『ごはんがくっつかない!』と、プリントされていた。
玄関の右が、どうやら台所で、正面からふたまたに分かれた廊下は、4年何ヶ月か前に、美絵子ちゃんがここに入るときに垣間見た、あのときのままの光景だった。
いずれの廊下も、その奥がどうなっているのかはっきりしなかったが、ぼくがそのとき見た限りでは、左の部屋が食堂で、右の部屋が、中庭に面している部屋だと思われた。
そうして家の中をキョロキョロしていると、やがてそのおばあさんが戻ってきた。
・・・手に1枚の写真を持っている。
「これ1枚しかなかったんだけどねぇ・・・。」
ぼくはそれを受け取ってパッと見たとき、とても驚いた。
「うわぁ・・・。」
まず、ぼくの網膜に飛び込んできたのは・・・目を大きく見開いた、4年ぶりに見る、美絵子ちゃんの顔だった。
両眼を大きくして、口を閉じて笑っている。
・・・なつかしかった。
たしかに、こんな感じだった。
あまりのなつかしさに圧倒され、10秒くらい、声が出なかった。




