第4章:ちょっとさかのぼったお話(2)
その家の前に着くと、自転車を停め、戸の前に立つ。
・・・緊張する。
なぜなら、小学5年のとき、学校帰りに美絵子ちゃんとふざけあいながら、この家の前まで来て、美絵子ちゃんが中に入る際、中を数秒、垣間見たことがあるだけだったからだ。
それ以来、はじめて中を見ることができるのだ。
たしか、そのとき美絵子ちゃんが中に入った際、玄関のまん前に、タンスがひとつ置いてあって、廊下がその左右に、ふたまたになっていると記憶していた。
おもいきって、戸を叩いた。
タンタンタンタン。
「・・・ごめん下さい、ごめん下さい。」
ガラス特有の、軽い叩きぐあいだった。
はじめは、中から返事はなかった。
やがて戸のすりガラスに、小柄な人影が映り、入り口の、その戸の鍵をガチャガチャとはずして、戸をガラガラと開けた。
中から出てきたのは、かなり年とった・・・八十は越しているだろう・・・おばあさんが出てきた。
頭にタオルのようなものをかぶっていた。
この人が、ぼくの記憶している、家の住人にちがいなかった。
ぼくははじめに、こう切りだした。
「・・・こんにちは。ぼくは、○○美絵子ちゃんの小学校時代の友だちなんですが、美絵子ちゃんが転校したと聞いて、いまどうしているか訊きたいと思いまして・・・。」
その人は、はじめ、疑いの表情を隠せなかったが、ぼくが静かな口調でこう切りだすと、うんうんと微笑しながら聞いていた。




