第3章:ちょっとさかのぼったお話(1)
・・・1986年3月28日、金曜日。
この日は、画期的な事件があった。
ことの始まりは、1986年3月12日(水)の夜だったといっていい。
・・・このときぼくは、中学三年生で、15歳であった。
1982年3月に美絵子ちゃんと別れ別れになってから、この1986年3月12日の夜まで、ぼくは美絵子ちゃんのことをときどき思い出すことはあっても、会いに行こうとしたり、そういった具体的な行動は起こせずにいた。
・・・というよりも、美絵子ちゃんそのものをすっかり忘れていた、といってよいだろう。
しかし、明日が矢中(= 矢板中学校)の卒業式というこの日の夜、何となく、明日の卒業式の帰り道に美絵子ちゃんに会えるような気がしていた。
次の日の卒業式当日・・・ぼくは、風邪気味になり、頭痛がしていた。
もちろん、美絵子ちゃんに会えるなどという、おかしな妄想はいつのまにか忘れて、気がつくと卒業式も終わり、ぼく自身も自宅に戻ってきていた。
・・・こうしていったんは美絵子ちゃんのことを忘れてしまったが、そのあと迎えた春休みの1986年3月28日(金)の、午前中の何時だったか、ぼくはベッドで、ふいに美絵子ちゃんのことを思い出し、また小学6年のとき以来、心の片隅で気になっていた、美絵子ちゃんの祖母の山口セツさんのことを思い出した。
美絵子ちゃんがどうしているか訊き、あわよくば美絵子ちゃんのアルバムをもらってこようと思ったのだ。
この時点では、あの家に、今どんな人が住んでいるのか知らなかった。
ただ、ぼくが小学4年から6年の間に知る限りでは、おばあさんが住んでいるということは、それとなくわかっていた。
美絵子ちゃんのアルバム・・・そして近況。
それらを思いついたとき、ぼくはもういてもたってもいられなくなり、ベッドから飛び起き、パジャマを脱ぎ、洋服に着替えると、ノート1冊と筆記用具と、写真を入れるビニールのケースを持って、その家に出かけた。
・・・自宅を出たのは、たぶん午後1時10分ごろ。
そして、その家に着いたのは、午後1時15分ごろだったろう。




