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第58章:磐石荘

 この日。


 「磐石荘」での、とってつけたような集会が終わり、男性職員の若者たちが、宿泊する本館の部屋に散ってゆく。


 茂は、自分が所属する「検査課」の若者たちと同じ部屋で泊まることになった。


 彼の他に、部屋の面子(めんつ)は三人。


 品質管理係の「佐藤新太郎(さとうしんたろう)」、検査係の「仁井田博(にいたひろし)」、そして、同じく検査係で、少し年長の「根岸トオル」だった。


 この「佐藤」と「仁井田」の二人は、茂と同年代。


 二人とも、高校卒業と同時に、茂と同室の「漆原(うるしばら)めぐみ」とともに18歳で「食糧事務所」に入所し、茂にとっては、めぐみ同様、5年先輩の「同い年の同僚」にあたる職員だった。


 佐藤と根岸は、茂と同じ、T県出身。


 そして、仁井田は、F県白河市出身だった。


 例の桑川は、その隣の部屋だったが・・・そこに掲げられ、マジックで書かれた氏名の表札を見て、おもわず茂はプッと吹きだした。


 『粂川公広(くめかわきみひろ)』


 そう書いてある。


 「粂川・・・『くめかわ』・・・なんだこりゃ!?」


 おそらく、口頭(こうとう)で氏名を聞いた従業員が、間違って書いたためだろう。


 それにしても、「桑川(くわかわ)」を「粂川(くめかわ)」とは・・・。


 (・・・おんもしれえ。まったく、笑っちゃうよね。こりゃー、まゆちゃんと、あやちゃんへの、かっこうの『みやげ話』になるわな。くっくっくっ・・・。)

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