第57章:若者の組織・・・『青年部』の本質と実態
茂が、あやとの「甘美なる世界」に溺れる一方、日々の実生活の中では、厳しい現実が彼を待っていた。
この「食糧事務所」では、満18歳から27歳までの若者の男性職員全員に、「青年部」という、いわば、「若者組合」といった団体に参加・加入することが義務づけられていた。
一方、女性の若い職員は、「婦人部」という集団に加入させられていた。
その両者の活動内容というは・・・主として、この職場内に設けられた、本格的な「労働組合」を支える一助としての、広報活動、農水省の推す政治家の選挙活動における「草の根運動」・・・そんなところだった。
また、この「青年部」という集まりは、茂が所属する食糧事務所のみならず、同じく国家公務員である、当時の「統計情報事務所職員」、これまた当時の「日光水研の職員」・・・こういった、いくつもの組織・機関の若い職員から構成されていた。
「青年部」の合同集会は、主に、「大谷石」で有名な大谷町の外れの「磐石荘」という古い旅館の大広間を使用して、開催されていた。
そこで、「農業再建」という名の下、見果てぬ夢の理想を掲げ、いわゆる「オルグ」という、一種の社会活動を展開していたのだ。
・・・と、ここまでの話、聞こえはいいものの、この集まりの本当の「目的」は、別にあった。
実は、この集まりというのか、集会のあとには、必ずといってよいくらい、この旅館に泊りがけでの「飲み会」が待っていたのだ。
「団結」「仲間作り」をモットーにした、この飲み会。
実は、ここにこそ、この集まり・・・つまり、「青年部」の本質、といったらよいのか、本当の目的が見え隠れしていたのである!
そしてその「本質」は・・・のちに茂を苦しめることになる・・・これでもかこれでもかと、彼をさいなむ情け容赦のない「生き地獄」への入り口となってゆくのであった。




