第42章:夜光虫のごとく、ネオンに引き寄せられ・・・
1993年6月某日。
この日、三度目の給料日を迎えた彼は・・・その「給料袋」を胸に、職場を出て、JR・U駅に向かって歩いていた。
当時、この職場では、俸給については、「振込み」ではなく、「直接手渡し」が基本であった。
この日も、武村から執拗で幼稚な嫌がらせを受けた彼は・・・疲れ切った心と体でもって、うつむきながら、とぼとぼと歩いていた。
駅近くの街明かりが煌々(こうこう)と輝く中、彼はふと、遠回りの道草をして帰ってみようと思った。
(・・・どうせ、いま電車に乗ったところで、立ちっぱなしの、苦痛な30分間が待っているだけだ。他人のニオイもムカムカするし。今夜だけは・・・遅く帰ろう。)
茂が、いつものコースから外れてほどなくすると・・・前方に、ピカピカと光る、縦長の派手なネオンが見えてきた。
(なんだ、あれは・・・?)
吸い寄せられるように、ネオンの看板に近づいた彼の目に、そのネオンで書かれた文字が見えてきた。
『美人はおりませんが、かわいい子ならたくさんおります』
(???? どういう意味だ、これは??)
その、一見矛盾するような、冗談とも取れるような文言に惹きつけられた茂は、さらに吸い寄せられるように、そのネオンに近づいた。
そのとき、ピンクのハッピ姿の中年男が、茂に声をかけてきたのである。




