第40章:関本業務監理官
めぐみが部屋から去り、ひとり孤独に弁当をほおばる茂。
昼の12時40分を過ぎたころ・・・とつぜん、彼の足元が揺れ、ものすごい振動が彼を襲った。
そして、大きな「掛け声」が館内に響き渡り、さらに振動が増していった。
「エイ! エイ! エイ! やあ!!」
驚いた彼が廊下に出てみると、空手着を来た男たちが、大声で気合を入れ、すり足で前進しながら、「突き」の稽古をしているではないか!
ときおり、床に思い切り片足を叩きつけて。
「なっ・・・なんじゃ、こりゃぁあああ!?」
茂は、その昔放送していた「太陽にわめけ!」というドラマの出演者、「故・松本優作」よろしく、彼が「殉職シーン」で吐いたセリフを、ここぞとばかりにマネしてみせた。
すると、先頭で「突き」を繰り出していた、ハゲ頭の「カラテ師範」が、とつぜん叫んだ。
「やめえええ!! 解散!!!」
すると、彼の掛け声が廊下に響いた瞬間、空手着の集団は、蜘蛛の子を散らすように、いっせいにいなくなった。
「お・・・こんなところに、『優作』がいらあ。おめ、なかなかギャグセンスあんなあ・・・それに、けっこうイロオトコだっぺよ。」
「はぁ・・・。」
とつぜん自分に、気さくに話しかけてきたハゲおやじ様は、名前を「関本」といい、桑川が所属するU支所の業務管理官だった。
「なぁ・・・おめ、なかなかいい体格してんなぁ。なんか、スポーツでもやってんかい?」
「はぁ・・・実は私、おととしの秋から、『ボディビル』やってるんです。」
「ほぉ。『ぼでーびる』ねぇ。どおりでガッチリしてると思ったわ。・・・ところでおめ、カラテやんねえか・・・?」
「はい・・・?」
「ここの職員のわけえのはよ、みんな、ウチの『和同流』っちゅう流派のカラテやってんだわ。よかったら、俺たちの仲間になんねえか・・・?」
「お気持ちはありがたいのですが・・・私は、ボディビルのトレーニングで精一杯なんです。なかなか、筋肉痛も取れませんし・・・。」
「そおかぁ・・・残念だなぁ、それは。ま・・・気が変わったら、いつでもおいで。待ってっからよ。俺、関本ってんだ。」
そう言って関本氏は、汗まみれの濡れた手で、茂の肩を叩くと、タオルをぶんぶん振り回しながら、職員用のシャワールームに消えていった。
(関本さんの気持ちはありがたいんだけど・・・俺、マジで筋肉痛でまいんち、あちこちいてえから・・・すみません、関本さん。)




