第39章:めぐみの『ご忠告』と、この職場の実態について
午前中のしんどい「業務」をひととおり終え、大まかな仕事の流れを理解した茂は・・・この検査課の部屋で、母が作ってくれた弁当を、ひとりさびしく食べることにした。
彼以外の人間は、みな、どこかへ昼食をとりに散っていった。
そんな彼に、同部屋で仕事をする、漆原めぐみが語りかける。
「・・・ねえ、杉山さん。あなた、みんながどこで食事するのか知ってる?」
「え・・・特に気にしてはいませんけど。」
「検査課のみんなはね、基本的に、一階の『検査室』で、昼ごはんとるのよ。行ってみたら・・・?」
「う~ん。・・・いや、自分はいいです。」
「どうして・・・? ここのみんなと打ち解けて、仲良くなるチャンスじゃない。きっと、みんなも待ってると思うよ。」
「いや、そうは思いませんね、僕は。本当にそうなら、部屋を出るときに、まっさきに僕を誘うはずでしょう・・・? まだ新人の僕を。」
「杉山さん・・・あなた、ちっとも分かっていないようね。」
「何がですか・・・?」
「ここの部屋のみんなはね・・・あなたの反応を見ているのよ。」
「何ですか、その『反応』って・・・?」
ここで漆原は、ひとつ大きなためいきをつくと、「仕方ないな」といった表情で、茂に説明し始めた。
「私は、杉山さんと同級生だけれど・・・少なくとも、ここではあなたより先輩だわ。だから、いまから私が言う忠告を、しっかり胸に刻み込んでおいてほしいの。」
めぐみは、そう長い前置きをすると、この職場の「実態」というものを、かいつまんでではあったが、彼に語って聞かせた。
公務員の職場というのは、他の民間の会社とはちがう、異常なほど厳格な「年功序列」という意識が根付き、奥深く浸透しているということ、狭い「村社会」・・・そして、「相互監視社会」であるということ、いわゆる「スパイ」があちこちに潜み、耳をそばだて・・・最悪、「二重スパイ」さえいるということ、令和のいまでいうところの「パワハラ」が日常的に横行しているということ。ときにはプライベート、つまり「私生活」にまで普通に干渉してくることもあるということ・・・ちょっとした、なにげない発言が、あとで思いも寄らない「悲劇」を生み出すこともあるということ・・・。
こういった、言ってみれば、「内部暴露」「裏情報」とも取れる重要な事柄を、懇切丁寧に、しかし手短に、ごく短時間で話してくれた、最初の「味方」に、茂は、驚きを隠せないながらも、素直に感謝の言葉を述べた。
(こりゃー、もしかしたら俺は・・・とんでもない世界に迷い込んできてしまったのかもしれない。しかも、あの憎い「桑川」も、うさんくさく、信用ならない「武村」もいやがることだし・・・。この先、俺はいったいどうなってしまうんだろう・・・?)




