第36章:桑川の嫉妬の原因と心境
茂は、桑川が自分に対し、理不尽ともいえる嫌がらせを重ねてきた理由について、なんとなくではあったが、思い当たる要因を理解していた。
・・・主な原因は、ふたつあった。
まずひとつは、茂の学業の成績。
彼には、高校時代に、担任との確執や、極度のスランプにより、あるとき勉強を完全に放り出し・・・そのために国立の四年制大学には入れず、仕方なく、入学のための偏差値が比較的低い、「農業大学校」に在籍することとなったという経緯があった。
とはいうものの、中学時代には、校内一位の成績を収めるほど優秀な生徒だった彼は、やせてもかれても、一応、自分なりの「勉強スタイル」というものを持っていた。
だから、本気で学習に励めば、大学校レベルの勉強だと、余裕というわけでもなかったのだが、他の高校出身の学生とは、はるかに差をつけられる自信が彼にはあったのだ。
事実、その「農業大学校」での彼の成績は、農業実習の実技においては劣っていたものの、座学での彼の成績は、常に主席・・・つまり、トップだったのである。
それがまず、原因のひとつ。
次に考えられる原因としては・・・先に述べた「柳原まゆみ」をはじめとした、女子学生たちの、茂への想い・・・それに伴う、一連の「告白の嵐」であった。
実は、生活科の新一年生の女学生の中で、まゆみを含む、四人もの女子が、まったく同時のタイミングで茂にほれ込み・・・たびたび真向かいの棟の三階の自分の教室の窓から、茂が学ぶ二階の教室を見おろしては、四人そろって、うっとりとした視線を投げかけていたのだった。
ときどき茂が窓際に近づこうものなら、「杉山さーーん!」などという黄色い声さえ、上の窓から降ってくる・・・そんな出来事もたびたびあった。
彼女たちが、茂のどこに惚れたのかは分からない。
そしてそれは、茂が彼女たちの告白を「袖にする」まで続いていたのである。
そういった経緯もあり、当然のごとく桑川のみならず、同じクラスメートの男子学生たちは、茂のことを快く思っていなかった。
さらに、あとから茂が小耳にはさんだ情報によれば、その桑川本人が、ひそかに、柳原まゆみを狙っていた・・・虎視眈々(こしたんたん)と狙っていた、とのことだった。
そして、自分が恋焦がれていた可愛いまゆみを、あっさり「袖にした」茂に対し、大いなる嫉妬心と憎しみに燃え、理不尽ともいえる「いじめ」「いやがらせ」をしていた・・・このことに茂は、いまさらのように気がついたのである。
(ヤツは、間違いなく俺をねたみ、憎んでいる。・・・せっかく国家公務員になれたというのに、一難去って、また一難って感じだな・・・。この先、あいつが、俺にどんな悪さを仕掛けてくるやら・・・先が思いやられるな。くわばらくわばら。)




