第34章:検査部検査課
彼が案内されたのは・・・三階の「検査部検査課」。
階段を上がって、建物の東寄りに位置する、広い一室だった。
階段を上りきった部屋は「情報改善室」といい、この職場の全般的なデータ管理、コンピュータ処理を担当する部署になっていた。
その隣の部屋が、茂が配属された「検査課」の部屋。
これは、のちに茂が案内されて分かったことであるが・・・二階は「総務部」となっていて、フロアのほぼ全体を占める、大部屋となっていた。
そして、その「総務部大部屋」と通路をはさんで真向かいにあるのが、「電話交換室」である。
ここには、野河さんという電話交換手の女性職員がひとりいて、外部からの電話をまず彼女が受け・・・ワンクッション置いてから、それを各部署につなげる・・・このような仕組みになっていた。
野河さんは、もう40歳を過ぎていたが、とても上品で綺麗な女性だった。
声も、電話を受けた相手が思わず聞き入ってしまうような優しいトーンの美声で、そのうえ彼女は、とてもいい「香り」で満ちていた。
はじめて彼女と接した茂は、そのやわらかい物腰と、うっとりするような「匂い」に、思わず、めまいがしたほどだ。
茂が、はじめて自分の配属された三階の部屋に入ったとき、その部屋の「住人たち」が、みないっせいに彼を見・・・その視線の束を受けた彼は、のっけから「プレッシャー」を感じてしまった。
「ほおー」という感じで、好奇心旺盛な視線を送った者もいれば、「ふん、こいつか、話に聞いてた新人というのは・・・」という感じで、うさんくさい視線をくれた者もいる。
なんにせよ、部屋全体が、茂の存在に釘付けになった構図で・・・彼は、仕事を始める前から、もうそのまま帰宅したい気分になっていた。
(なんか・・・やだなぁ。みんな俺を、動物園のライオンかカバでも見てるような感じで視線を送ってやがる。なんか・・・見世物になった気分だよ・・・。)




