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第30章:これより、『たからものⅡ』の物語本文にはいります❤️

 ・・・1992年秋。

 

 茂が、最愛の恋人「美絵子の死」を知ってから丸一年。


 その間彼は、高校卒業後に在籍した学校を卒業するまでに、四人の女子学生から告白を受けた。


 ずっと、亡き美絵子だけを、ひとり孤独に純粋に想ってきた彼にとって、それは、思いがけない「当惑」であった。


 彼がいま属する県立の「農業大学校」には、本科である「農業科」「園芸科」「畜産科」・・・そして、女子学生のみの「生活科」という四学部があった。


 これら、四学部は、主に、農家出身の学生が卒業後に、地元の農協や農業団体に就職したり、自分の家の農業経営にたずさわる、いわゆる「就農(しゅうのう)」をするための、訓練・勉強を課していた。


 ほとんどの学生は、この「本科」の2年間で卒業し・・・少数の学生だけが、そのあとの「研究科」の学生として、学校に在籍し続け、さらなる高度な農業に関する学問を修めてゆくのだ。


 茂もまた、この「研究科」に居残り、自宅から車で、「農業大学校」に通う毎日だった。


 最初に彼に告白してきたのは・・・「生活科」に新一年生として入学してきた、ひとりの若い女子学生だった。


 名前を「柳原(やなぎはら)まゆみ」といい、短めのソバージュが似合う、小柄の、とてもおしゃれで明るい性格の可愛い子だったが、いまだ「美絵子」が忘れられなかった茂は、やんわりと、その告白を断った。


 ずっと彼らの動向を見守ってきた、あと三人の女子学生・・・彼女たちも、その様子を見届けたのち、順番に彼に告白してみたが、彼の「岩のような心」を動かすことはできなかった。


 やがて彼はその学校を卒業することになるのだが・・・卒業から三ヶ月前の12月に受けた公務員試験に合格し、春には念願の「国家公務員」として、新たなスタートを切ることが約束された。


 しかし、そんな彼は、喜びよりも、美絵子を失った悲しみ、そして喪失感がまた、日に日に重く心にのしかかり、彼を苦しめるようになっていた。


 ともあれ、彼は、長くしんどい・・・しかし、たくさんの貴重で新鮮な体験を重ねた4年間の「大学校生活」を終え、新たな環境への心構えを整え・・・同時に、この先に待つ自分の運命というものに、言い知れぬ不安を募らせる毎日を送るのだった。

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