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第234章:その後の遠山里香と杉山茂・・・いや、高田良作の日々

 看護学校を辞めた茂は・・・まるで、緊張の糸が切れたかのように、しばらくの間、ぼんやりと過ごした。


 母も、そんな彼の心中を察していたのか、「早く仕事を探せ!」などという、せかす態度も見せず、彼が本当にやる気が出るまで、辛抱強く待ってくれた。


 やがて、茂の身を、かげながらいつも案じている遠山里香は、それとなく、ファミレスや吉野家、すき屋などの食事に誘ってくれ、茂が食べたいものを、食べたいだけご馳走してくれるようになっていた。


 また、彼が出かけるための車のガソリン代もないことを知っていた彼女は、たびたび彼を、ドライブに誘ってくれた。


 行き先は・・・以前紹介した、真岡市(もおかし)の『井頭公園(いがしらこうえん)』が多かったが・・・茂が二十代の頃、ひとりで波乗りに毎週出かけていた、茨城県大洗町の『サンビーチ海水浴場』(通称:大貫(おおぬき))にも、よく連れていってくれた。


 ・・・しかし、二人は、あの日のように、けっして『交わる』ということはなかった。


 里香が遠慮していたからだ。


 口には出さなかったが里香は、美絵子の『怒り』を恐れているようだった。


 もっと大げさな表現をさせていただけるならば、『祟(たた)り』を怖がっていたようだ。


 里香は、結局、妊娠はしなかった。


 (・・・それだけは、美絵子ちゃん、絶対に許さないんだわ、きっと。『行為まで』はなんとか許しても、あたしたちの『子供』だけは決して許可しないんだって・・・。)


 そんなふうに解釈していたのかもしれない。


 茂が、それとなくホテルに向かうべく、幾度となく水を向けてみたものの・・・彼女は、けっしてその誘いには、乗ってこようとはしなかった。


 それでも里香は幸福だった。


 あの、北海道で別れた田中理沙同様、彼女も、こうしてたまに・・・ごくたまにでも、茂のそばにいられるだけで、幸せそのものといった印象なのだった・・・。

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