第233章:帰郷への長い道のり(6)
大月駅始発の、前日と同じく、JR中央線の電車に揺られる茂。
列車のリズミカルな震動と、暖房の効いた車内が非常に心地よく・・・ふたたび彼は、深い眠りに落ちた。
次にめざめたとき、そこは上野駅の構内だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
駅の中の売店の横にある公衆電話で自宅に一報を入れる茂。
母が出てくれた。
よっぱら、心配かけてしまった。
受話器の向こうからは、もうひとり、聞きなれた女性の声もする。
・・・遠山里香だ。
手短かに、わびの言葉と事情を告げる茂に、母は、つらくあたることもわめいたりすることもなく・・・ただ、うんうんと聞き、最後にひと言。
「早く、うちに帰っておいで。里香さんも心配して待ってるよ。」
きっと、母が連絡したのだろう。
黙って病院実習をすっぽかしたうえ、勝手に「青木が原樹海」なんぞに死にに向かおうとしてしまった茂。
おなかを痛めて自分を産んでくれた母に、ここにきて、ようやく、申し訳ないという素直な気持ちが芽生えてきた。
そして、自分のことを心配して、自宅へ駆けつけてくれて里香に対しても、同様の気持ちが・・・。
帰宅した彼は・・・母に責められることもなく、ただ無言で抱きしめられるだけであった。
かたわらにいる里香も、母も茂も、三人が三人とも泣いていた。
茂が無事に帰ってきた・・・生きて、この家にもどってきてくれた・・・それだけで十分・・・そういった様子で、里香も彼を強く強く抱きしめるのであった。




