第232章:帰郷への長い道のり(5)
明け方・・・茂は、夢を見た。
それは、あの日の夢。
茂と美絵子が再会した、あの夏の日のこと・・・。
美しく、そして伸びやかに成長した愛しい愛しい美絵子。
お互いに成長した元気な姿で会い、実に7年ぶりに対話し、ずっとそれぞれの心の内に秘め、そっとためこんでいた、相手への熱き想いをせいいっぱい・・・力いっぱい交換し合ったふたり・・・。
『最後の抱擁』と、熱い口づけを交わすふたり。
美絵子の笑顔、うれし涙・・・そして、優しく、あたたかく、どこまでも耳にここちよい、あのやわらかな声の響き。
(ああ・・・茂くん・・・しげるくん・・・しげちゃん・・・しげちゃん・・・)
美絵子の、茂への呼び名が、次第に変化してゆく。
それに伴い、あの日・・・最後に会った、あのお盆の日の美絵子の服装までもが、少しずつ・・・本当に少しずつではあったが、誰か別の人のそれに変わってゆく。
(え・・・? よっ・・・葉子ちゃん!?)
気がつくと、それは、すこしうつむいて、涙ぐむ葉子・・中岡葉子の姿に。
・・・とても心配そうな表情だ。
(しげちゃん、元気・・・? 会いたい。いますぐ会いたいの・・・あたし・・・)
(葉子ちゃん・・・。でも、君は、僕の事なんかどうでもよくて・・・)
(ううん。そうじゃない。そうじゃないの・・・あたしね・・・しげちゃん・・・)
気がつくと茂は、朝霧のたちこめる中、鳥沢駅のさびれたホームのベンチに、持参してきたスポーツバッグをかたわらに腰かけ、始発電車が来るのを待っていた。




