↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

232/246

第232章:帰郷への長い道のり(5)

 明け方・・・茂は、夢を見た。


 それは、あの日の夢。


 茂と美絵子が再会した、あの夏の日のこと・・・。


 美しく、そして伸びやかに成長した愛しい愛しい美絵子。


 お互いに成長した元気な姿で会い、実に7年ぶりに対話し、ずっとそれぞれの心の内に秘め、そっとためこんでいた、相手への熱き想いをせいいっぱい・・・力いっぱい交換し合ったふたり・・・。


 『最後の抱擁(ほうよう)』と、熱い口づけを交わすふたり。


 美絵子の笑顔、うれし涙・・・そして、優しく、あたたかく、どこまでも耳にここちよい、あのやわらかな声の響き。


 (ああ・・・茂くん・・・しげるくん・・・しげちゃん・・・しげちゃん・・・)


 美絵子の、茂への呼び名が、次第に変化してゆく。


 それに伴い、あの日・・・最後に会った、あのお盆の日の美絵子の服装までもが、少しずつ・・・本当に少しずつではあったが、誰か別の人のそれに変わってゆく。


 (え・・・? よっ・・・葉子ちゃん!?)


 気がつくと、それは、すこしうつむいて、涙ぐむ葉子・・中岡葉子の姿に。


 ・・・とても心配そうな表情だ。


 (しげちゃん、元気・・・? 会いたい。いますぐ会いたいの・・・あたし・・・)


 (葉子ちゃん・・・。でも、君は、僕の事なんかどうでもよくて・・・)


 (ううん。そうじゃない。そうじゃないの・・・あたしね・・・しげちゃん・・・)


 気がつくと茂は、朝霧のたちこめる中、鳥沢駅のさびれたホームのベンチに、持参してきたスポーツバッグをかたわらに腰かけ、始発電車が来るのを待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。