第231章:帰郷への長い道のり(4)
・・・しばし、まどろむ茂。
どのくらいの時間がたったのか、彼は夜の寒さと、駐車スペースに吹き込む冷たい「こがらし」とで目がさめた。
(美絵子ちゃんのいうとおりだよな。いいかげん、ここらで逆戻りすっか・・・。)
とりあえず、ここから一番近い駅であろうと思われる『鳥沢駅』に向けて、今度は西へ折り返すような形で歩き出した茂。
来たときと同じように、またカーブでの対向車どもの、連続する複数のヘッドライトが、いじわるく・・・容赦なく茂の目に突き刺さる。
光に照らされた彼を、うむをいわさず『さらしもの』にしてくる。
気がつくと彼は、かつて美絵子と手をつないで、歌いながら下校した小学校のときの想い出のヒットナンバー・・・『松本聖子』の調べを口ずさんでいた。
(ああ・・・なつかしいなぁ。あのときの美絵子ちゃんの手、やわらかくって、あたたかかったよなぁ・・・。ごめんよ、美絵子ちゃん。僕は、きみがずっとそばにいてくれてたのを、いままですっかり忘れていた。きみが、優しく、そっと見守ってくれてたのもね。・・・なんとかして、うちに帰るからね。でも、もう電車がさ・・・)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
鳥沢駅近くで、また背後から例のパトカーが接近してきて、ふたたびしつこく徐行・併走しおったが・・・彼が、持っていたタオルを、これみよがしにパトカーに向けて、「アピール」でもするように、大げさにブンブン振り回して見せると、何もせずに走り去っていった。
(・・・あいつら、この近所の変わり者のあんちゃんの『深夜のウォーキング』とでも勘違いしたのかな。ふふふ・・・。)
駅は、小さな「無人駅風」の駅舎と、さびれたような敷地、駐車場などが、照明の中にぼんやりと浮かんでいた。
ここには、横になれるような場所はなさそうだ。
(監視カメラでもあったら、またうるさいことになるからな・・・。)
そうも考えた彼は、また街道に戻り、出てすぐ左の民家の軒下のベンチに腰かけた。
そこに横になりたい気分だったが・・・やめにした。
このベンチは、寝るにはこれ以上ないくらい手ごろな場所だったが、なにせ国道20号線のすぐわきにあり、道路から丸見え。
・・・うっかり寝ていて、気づいた家の人に通報されたり、巡回のパトカーにでも見つかって職質されても面倒だ。
そこで彼は、そこから500mほど西にいったところにある駐車場の車と車の間にスペースを見つけ、持っているナース服、ジャンパーなどすべての衣類を毛布がわりにしたり、下に敷いたりし、さらにスポーツバッグを枕がわりにして、晩秋の寒さの中、深い眠りについたのであった・・・。




