第230章:帰郷への長い道のり(3)
『猿橋駅』を過ぎ、さらに暗く、狭い歩道をひた歩く茂。
『鳥沢駅』を過ぎ、さらに東へ進む彼の耳に、やさしく、そして、なつかしいあの声が響いてきた。
(・・・茂くん、そろそろ戻ろう。おうちへ・・・おうちへ、帰ろう。あたし、待ってるから・・・)
「んんっ、その声は・・・みっ・・・美絵子ちゃん!?」
ずっと歩きどおしで東進する疲労困憊の茂の耳に、あのいとしい、亡き恋人の声がやさしくふりそそいできたのだ。
そのとき、背後からパトカーが、赤色灯をチカチカさせながら接近してきて、茂の真横で徐行し、彼の歩行速度にあわぜて、ゆっくりと併走しはじめた。
助手席の窓を開け、ライトで茂の顔を、全身を照らす警官。
・・・きっと、不審者への「職務質問」でもする気なのだろう。
だが、茂が彼らにむかってペコリとおじぎをすると、ふたたび助手席の窓が閉まり、パトカーは声かけも何もすることなく、まっすぐに走り去っていった。
(ああ・・・疲れた。それに、眠い・・・。どこかで横になりたいよ。どこか、手ごろな「寝場所」は・・・)
しばらく歩き、とある上り坂の急カーブのバンクにさしかかったところに、何に使うのかは知らないが、小さな「管理小屋」のようなものがあり、そのわきに、車を一台分くらい停められる程度のコンクリートの狭いスペースがあった。
疲れきった茂は、そこにそのままごろんと横になり、しばしの仮眠に入るのであった・・・。




