第223章:『黄泉の世界』へといざなわれて・・・(4)
『大月駅』を出た茂。
この駅は、構内を出ると正面がロータリーになっていて・・・その周辺は、寿司屋や麺屋などが軒を連ねる商店街となっていて、少し行くと、国道20号線・・・すなわち、昔の『甲州街道』にぶつかる。
四方を山々に囲まれた、静かで落ち着いた雰囲気の町並みだった。
いくつもの緑の山が町に近くせまり・・・茂の住む矢板市とは、また違った風情があった。
茂は、歩きながら、上野駅で買ってきたパンなどをかじり、しばし商店街周辺を、目的もなくぶらついてみた。
(・・・いまごろ、母さんはどうしているだろう。俺が病院実習に行ったと思い込んでるだろうからなぁ・・・。でも、もう後戻りは出来ない。この先、俺が向かうとしたら・・・)
このあと彼は、また大月駅に戻り、今度は『富士急行線』に乗り換えた。
この電車は、ここからさらに山梨県の奥に向かう、途中、田園地帯や山々を抜けて走る、一種の「特別急行」のようなものだった。
ごとごとと列車に揺られる茂。
天気は快晴。
・・・ピクニックや登山には、もってこいの好天だ。
(それにしても、いい天気だよなぁ・・・。本当に、雲ひとつない、快晴じゃないか。でも・・・俺の心は、あの看護学校に入ってから、ずっと、どんよりした『曇り』のまんまさ。晴れた日なんか、ただの一日だってなかったよ。いや、入る前からかな・・・。)
大月駅を出た『富士急行線』は、このあと、『上大月』『田野倉』『禾生』・・・とすすんでいき、やがて、『都留文科大学前』駅に着いた。
この駅でも、茂は下車しなかった。
そしてしばし、この駅名が書かれた縦看板を眺めながら、ぼんやりと過去の思い出に意識が向かった。
それは・・・かつての最愛の恋人、『峯岸美絵子』。
『田中理沙』・・・
そして、
『遠山里香』との、
甘くせつない想い出の数々だった。




